心つづれおり〜20 貴婦人の訪問〜

2016年12月3日、マチソワでの観劇。初演が観られなかったので、何としても観たかった作品でした。マチソワするにはヘビーでしたが、物語の辛さがキャストの熱量で昇華されて、観劇後は不思議な心の軽さを感じました。また、キャストの皆さんがベテラン揃い。ミュージカル作品として最高に濃密な時間を体感しました。

物語は、ある町で起きた悲劇と言えばよいでしょうか・・・人間の深層心理をえぐる、「あなただったらどうしますか?」と問われている感覚の作品。アルフレッド役・山口祐一郎さんを取り巻く4人の友人たちが、キーパーソンに感じられました。その4人とは、市長役・今井清隆さん、校長役・石川禅さん、警察署長役・今拓哉さん、牧師役・中山昇さん。役柄の通り、彼らは町で要職に就く身。一方、アルフレッドは雑貨屋の主人。この彼らの立場と、物語が役に背負わせる運命の対比が恐ろしくもあり引き込まれました。特に、彼らがそれぞれの思惑を語る四重唱は圧巻で、歌声の音圧に身体が押さえつけられるような、物凄い迫力を感じました。

さらに、クレア役の涼風真世さん。本当にハマリ役。裏切られた者の情念、あらゆる感情が涼風クレアの全身から表現されていました。そのクレアを受け止める山口アルフも、醸し出す柔らかな雰囲気がやるせなさとマッチしていました。

物語と音楽が絡み合い、ヘビーなのにまた観たくなる魔性のミュージカル。とてもクセになる作品でした。

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