心つづれおり〜10 ダンス・オブ・ヴァンパイア〜

ダンス・オブ・ヴァンパイア(以下TdV)は、日本初演がいつ来るかと待ち望んでいたドイツ語圏ミュージカルの作品で、2006年初演、2009年、2015年と観劇しました。

まず、ウィーン初代クロロック伯爵役スティーブ・バートンさんの話をさせてください。スティーブさんは、オペラ座の怪人オリジナルキャストとしてラウルを演じ、英語圏のみならずドイツ語を習得してドイツ語圏の舞台で活躍していました。しかし、私がTdVのCDで知った頃には、悲しいことにスティーブさんは既に故人となっていました。CDでは、ヴァンパイアとして生きる悲哀やチャーミングな伯爵のキャラクターがスティーブさんの歌声と台詞から伝わります。TdVのウィーン初演版CDは、ぜひ多くの方に聴いてほしい作品のひとつです。

では、日本初演に話を戻します。開幕2日目と3日目を観劇しての率直な感想は、盛り上がりきれなかった、というものでした。客席降りの多い演出なので、どの席で観るかによって印象も変わると思います。(私は1階席と2階席で観劇)キャストは魅力的でしたが、どう楽しんだらよいのか戸惑ってしまい、消化不良に終わりました。

ところが、観劇後、日ごと作品がパワーアップしていく様子が公式HPから伝わってきました。同じ作品が変化していく・・・どんなふうに?!気になって気になって、千秋楽を迎える最終週ギリギリで、日帰り突発遠征を決行。行ってみると、確かな変化を感じました。劇場全体が観客を楽しませる!という勢いに満ち、客席側も迷いなく楽しめる雰囲気へと変化していました。物語が変化したわけではないのに違う作品に見える、こうした瞬間を味わうと観劇はやめられない、としみじみ思いながら帰路に就きました。

現在のTdVは、帝劇ではお祭りのような作品になったと思います。TdVの上演時は、帝国劇場を帝国劇城と呼んで、劇場をクロロック伯爵のお城に見立てる演出も楽しみのひとつです。客席参加型ミュージカルの楽しさが、TdVには詰まっています。



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