心つづれおり〜33 イヴ・サンローラン〜

2019年初演。世界的デザイナーのイヴ・サンローランをミュージカル化した作品。とても挑戦的な作品だったと思います。主演のイヴを東山義久さん、海宝直人さんで、またイヴのパートナー役ピエールを上原理生さん、大山真志さんで演じられました。

Wピエールの出演が、公演期間の前半と後半で分かれたため、海宝イヴで公演の前半と千秋楽を含む後半で観劇しました。

作品の印象は、ファッションショーと芝居をミックスした幻想的な舞台、そして楽曲が難しくて俳優たちは大変だったろうと思わせるものでした。掴めそうで捉えられない感覚を覚えたものの、海宝さんが今まで演じてきたキャラクターとは明らかに異なるイヴの世界観は、独特で心惹かれました。海宝イヴは、舞台上に佇んでいるだけで、イヴ・サンローランのパーソナリティを醸し出していました。多分、実際もこうした雰囲気の方だったのかもと思わせるものがありました。例えば、目線や指先の表現。とても繊細で神経質でこだわりの強さを感じ、ピエールが心奪われるのも分かる守るべき存在という雰囲気でした。

海宝イヴとWピエールでは、それぞれの関係性に違いを感じたのも興味深かったです。上原ピエールでは、ビジネス上のパートナーとしての信頼関係を、大山ピエールでは、愛されるイヴと愛するピエールという一途な関係を感じました。

また、観客と舞台の世界を繋ぐ存在として、皆本麻帆さん演じるルルがチャーミングでした。他、実在のデザイナーたちを演じた皆さんもカッコよくて舞台が華やかでした。(安寿ミラさんのココ・シャネルは凛々しい!)

上演期間が短い作品を前半後半に分けて観たからか、作品の繊細な変化を感じることができ、舞台の面白さを味わえました。東山イヴを観られなかったのが心残りではありましたが、東京公演千秋楽のカーテンコールで、挨拶のためだけにイヴの扮装で東山さんが登場してくれたのは、本当に嬉しいサプライズでした!東山さんと海宝さんが、この難しい役を創り上げ、互いに讃え合う姿は美しかったです。

日本発信の新作ミュージカル。今後は、感染症対策を考慮する点からも、日本国内で完成させるオリジナル作品が必要になるでしょう。どんなミュージカル作品が誕生していくのか、観客として楽しみですし、新しい試みを応援したいという気持ちです。



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