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三重県宮川 ダム下部の各支流アマゴ探訪

三重県随一の清流・宮川

 三重県宮川の解禁日。
 この川には、12年ぶりの訪問しました。2004年の豪雨災害から、復旧工事が進んでいます。2005年の釣行記録は参考までにこちらです。
 今回の釣行記では、当時と同じアングルの画像がいくつか登場しますが、ある程度回復したところ、そのままのところ、コンクリートに沈んだ場所が混在します。
 釣り開始前、正直少し迷いました。釣れる気が全くしないからです。水量は少なめで、ポイントとなる支流(昔と異なり、宮川は本流へのアマゴ放流をしていない)は水路の様相。
 しかし、寄付のつもりで、フィッシュ・パスで年券を購入しました。
 フィッシュパスは、川の状態を見てから游漁証を買えるメリットがありますので、川の近くで游漁証を買えない、ド田舎の渓流では物凄くありがたい。というか、日本全国の内水面漁協には、電子游漁証の導入を必須にすべきだと思います。

春日谷 

 小規模ながら、以前は素晴らしい渓相の谷でした。ナチュラルウォーターの取水場もあり、ワサビも自生していたような?

本流との出会い

 しかし、おそらく最も水量が多いであろう、本流との合流部でも、川なのか沢なのか微妙な感じ。少し車で奥に進みましたが、とても竿を出す気になれませんでした。
 別の日、かなり上流部へ入ってみましたが、ご覧の通りです。
 当時、「山が抜けた」と言われていましたが、10年ぐらいで多少は回復すると、楽観視していました。

岩と土砂で埋もれた谷(5mぐらい堆積している?)

 この岩石がなくなり、あの美しかった渓流が元に戻ることは、もうないのかもしれません。
 このような土石流、水害を防止するため、日本全国には砂防堰堤が多数設置または設置予定ですが、この規模の自然災害を、コンクリートの壁数枚で防げると思いますか?
 一度の水害で埋まって機能を失う上に、ほとんどの砂防堰堤(特に山奥の古い堤)では土砂撤去工事をしませんので、意味ありませんって。

大熊谷

 大熊谷にやってきました。比較的開けた流れでフライフィッシング向き。宮川ダム下流の流れでは、おそらく最も有望かつ有名なポイントです。

スリット式堰堤

 私の知る限り、三重県内でスリット式堰堤があるのは、この谷だけです。 
 砂防堰堤を全てスリット化すれば問題解決、とは言いませんが、土砂搬出工事を定期的に実施できるなら、こっちの方が理に適っています。
 大熊谷の下流部は一見、良さそうでしたが、上流へ行くと、途中で水がなくなっていました。 岩石の堆積は以前のままで、一部区間では水が伏流しています。
 魚が本流と行き来できなくなったのは、かなり痛いです。 大雨により、本流へ下る稚魚。本流から遡上してくる大型魚。いずれも、干されて死ぬ可能性があります。

水がない区間がかなりある

 本流の土石は、ある程度撤去された感じですが、各支流や谷の土石は、2004年当時とあまり変わっていない感じです。
 林道もあまり整備されていませんし、山や川に入る人が、もういないのでしょうか? 川に関しては、宮川は鮎釣りのメッカですので、漁協としても、本流(鮎)さえ良ければ、行政への働きかけなど、そこまで力を入れないのかもしれません。
 なお、ダム上流の谷へ入ろうとしましたが、大和谷は橋の工事のため、道が通行止めになっていました。夏ごろまで工事が続くようです。 

古ヶ谷(こがたに)

 古ヶ谷へ移動しました。
 この日初めて竿を出します。 なんとか一匹釣れましたが、う~む。

この谷も、しばらく進むと水がなくなっていました。
なお、宮川流域の漁法・暮らしを聞き取ったアーカイブ「宮川漁法ミュージアム」において、かつての古ヶ谷のことが少し語られています。
「古ヶ谷出会いの瀬も水が多くて越せなかった」とのことだが、令和の古ヶ谷は・・・・長靴でまたげます(泣)
 他の語り手の情報も興味深く、サバみたいなデカさの鮎がウジャウジャいたとか、天然ウナギが取り放題とか、今では考えられない状況だったようです。

怒れるじーちゃん

 古ヶ谷から脱出し、駐車スペースでカップラーメンを食っていると、80代ぐらいのじーちゃんが近づいてきました。
「全然あかんのちゃうか??!」
「全然あかんわ」
 通常であれば、意味不明な発言ですが、別に釣り道具を持っているわけでもない私を釣り人と見抜き、かつ、釣れてないことを見越しての発言です。読心術の使い手でしょうか。
「谷に放したみたいやが、釣りになる場所はないし、あっても人が入っとる。本流に放さな、せっかく来てくれた釣り人が愛想つかすわ。組合長にワシ、怒鳴ったたんや!」
 (漁協も色々大変だろうに、怒鳴るなよ・・・)
「県から補助もらって色々やらなあかんのに、組合長代わってからあかん。やっぱ、60代の若造では、県とよう交渉できんわ!」
 (60代って若造なんだ・・・)
「解禁日ぐらい、もっと釣れるようにせい言うたらな、『皆さん、この綺麗な空気を吸いに、綺麗な川を見るだけで満足される。魚が沢山釣れなくても、不満言う人はいません』とかいうんや」
「アホか! みんな魚たくさん釣りたいから来てるに、決まっとるやないかい!」
そこに関しては、激しく同意できる。

唐櫃谷(からとたに)

 じーちゃんに別れを告げ、唐櫃谷へ移動。
 本流合流点の水量は心許ないが、上流は小規模ながら岩がゴロゴロした渓相の川。
 この日はちょっとパス。後日、釣りに入ってみようと思います。

水が少ない。どの谷も同じだけど。

薗川

 次は薗川へ移動。公園やレストラン、宿泊施設がある奥伊勢フォレストピアがあり、宮川支流では最も観光に力を入れている場所です。
 わんぱく広場から上流には、子供専用区(町内在住の小中学生無料・大人の釣り禁止)が設けられています。
 全国的にももっと広まってほしい取り組みですね。

「町内在住の」が、少し消極的?

 ここで成魚放流魚が釣れるには釣れましたが、 中流部の渓相は、やはりイマイチでした。水があるだけマシかもしれませんが、こちらも上流は割と本格的な山岳渓流。
 夏になったら谷へ入ってみます。

熊出没注意

 今回の釣りでちょっと気になったのは「熊出没注意」の看板が、多数設置されていることです。

川沿いの至る所に設置されている。

 調べてみると、2020年に河原でバーベキュー中の方2名、登山中の1名が熊に襲われて怪我をする事故が、立て続けに発生した模様。
 宮川に熊がいるイメージはあまり無かったので、山の環境が変わってきているのかもしれない。

2003年撮影

 昔は絶滅寸前、守ろうとか言われてたのに、何があったのでしょうか。人に危害を加えてしまうと、人間・クマ双方とも不幸な結果を招きます。河原でバーベキューをしていて襲われたケースは、偶然出くわしたのではなく、明らかに熊から近づいてきていると思われます。人間の食べ物の味を覚えてしまったのでしょう。
 宮川流域で熊が増えたというより、別の所から移動してきたのかもしれません。

島谷川

 次は島谷川に移動しました。本流との合流点は、それほど悪くない感じです。
が、 すぐ大きな堰堤が現れ、その先も、工事現場のような風景が広がっていました。

 春日谷もそうですが、ここまで岩石が堆積しやすい地質なら、透過型砂防堰堤や、鋼製スリット堰堤の積極的な導入を考えてもいいかと思います。
 抑え込む対策はもはや限界で、受け流す方向の災害対策がよいのではないでしょうか。
 上流では、いまだ工事中の区間がたくさんあるものの、水量も多く、ある程度魚も釣れました。 成魚放流の魚が中心でしたが、放流できる区間が限られているのか、数箇所に固まっていました。 

再び大熊谷に訪れてみた

 2週間後、雨も降ったので状況が好転したかと思い、再訪しました。再び大熊谷です。

昔は多くの支流がこんな感じだった

 少し昔を思い出す、きれいな水が流れていました。しかし、川の水は全体的に少ないです。 
 スリット型堰堤の近くから入渓し、フライは#16のパラシュートで釣り上がり。堰堤付近は、水が溜まっているので釣りになりそうです。
 と思っていたら、あっけなくヒットしました。

完全無欠の成魚放流魚

 スリット式堰堤のプールで粘る。いかにも 魚がいそう、と言うかライズしています。
 しかし、私はリバーピークのライン(30mある)を半分に切って使っているため、最大射程距離は15mです。
 フルライン巻いてて5番ロッドなら届いたかも。

20m先のポイントに届かない。なぜならラインが15mしかないからだ

 スリット堰堤、近くで見るとよく考えられています。ある程度の大きさの岩石は通り抜け、 被害をもたらす大きな岩や、川の流れをせき止めて被害を拡大させる木を、効率的にせき止めます。
 
 水が伏流し、岩だけになった谷を上流へ進みます。車で進めない区間まで来ると、ようやく少し水が見えるようになります。 

各ポイントから魚は出るが、小さい。
天然ないし野生と思われるあめご。尾びれが分厚く、鰭条の数がやたら多いような?

 どこまでも釣れそうな流れが続いていましたが、日没も近づき、脱渓の時間を考えて釣り終了。
 4月中頃になり、温かくなれば期待できると思われます。

 荒れた谷も多い一方、林道の整備も停滞気味?
 強制通行止めになって、結構時間が経っているように思われます。特に困る人がいないなら、金かけて撤去しないでしょうし、山や川に入る人が少なくなっているのかもしれません。

 少なくとも、今後宮川で釣りをする際は、こういった熊よけ鈴を装備しておく必要がありそうです。

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