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とある友人Kが郊外に家を建てた。遠方ということで祝いの品を届けることもできなかったが、この度タイミングが合ったためお邪魔することとなった。

所用あり前日はホテル泊していた齋藤を、友人Kは流行りのSUV車で迎えに来てくれた。行きの車内ではあーでもないこーでもないと近況を報告しあい、1時間程度走ると家についた。

特別大きいとか洋風だとか特徴はないが、新築なだけにきれいな外壁、広くはないが青々とした芝を敷いた庭が目についた。しばらく眺めてから玄関に足を踏み入れた。

戸建てを新築した流れで大型犬をお迎えし、夫婦二人と犬一匹で生活していると事前情報を得ていた。 

動物好きの齋藤としてはたまらなく嬉しい。犬である上に大型ときている。噛まれようと嫌がられようと、とにかく撫でくりまわそうと自分の中では決定していた。

吹き抜けの明るいリビングに入ると、大きなソファーに一人の老婆が、鎮座していた。

おれは、混乱しながらも取り敢えず、自分の中の決定事項を果たすため、老婆に手を伸ばした。

背後から響く「それは犬じゃない!」という怒声。

聴くと、故あって嫁の祖母が現在同居しているとのこと。紛らわしいことこの上ないと怒りを覚えながら、しかし、この一連のオーソドックスなボケとツッコミのやりとり、久しぶりに学生時代を思い出し、所謂エモい気持ちになってしまった。

エモい気持ちを抱きしめながら、酒などを呑み、話し込んでいると、お祝いの品を渡すことを完全に失念して帰ってきてしまった。今度こそしっかり渡さなくては。また老婆を撫でに郊外へ行こう。

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