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見たことない、大きな鳥がいた。

家事をしたり、車のタイヤ交換をしたり等、なんとなく自分に課していた予定を消化した後、ダイエットと心身のリフレッシュを兼ねてランニングに出かけた。

住宅街を抜けて堤防から河川敷に降り、川を横目に走っていると、空から綺麗な夕陽が差してきた。足を止めてしばらく景色を眺めていると、ふと思った。

「もしかしたら性の快楽に溺れた年頃のがきんちょカップルが橋の下で青姦でもしてるかもしれない。」そう思うと居ても立ってもいられなくなり、齋藤は走りだした。息を切らして付近の橋梁へ、竪壁には目もくれず生えたての細い草木を掻き分け、橋脚の裏側を勢いよく覗き込んだ。

見たことない、大きな鳥がいた。

見たことない大きな鳥は、夕陽を一身に受けて金色に輝きながら、真っ直ぐな眼差しで齋藤を見ていた。齋藤と見たことない大きな鳥は6メートルほどの距離をもって対峙し、見つめ合っていた。

しかし、齋藤はいたたまれなくなり、自ら意思を持って目を逸らした。それを合図としたのか、見たことない大きな鳥は大きな体からさらに翼を大きく広げ、勝ち誇るかのように悠々と羽ばたき、南西の方角へ飛んでいった。

齋藤は、飛んで小さくなっていく見たことない大きな鳥を今度は目を逸らすことなく、見えなくなるまで見つめ続けた。

そうだ、家に帰ったらシャワーを浴びて、ワインを呑みながら映画でも観よう。この際だから「ビルマの竪琴」なんて良いかもしれない。

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