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地球の共鳴

クロアチア生まれの科学者ニコラ・テスラは、その研究の壮大さからマッドサイエンティスト扱いされることが多い。しかしいつの時代も大きすぎる発見は人々をにわかには信じがたい気持ちにさせるものだ。
 ニコラ・テスラが考えていたのは、世界中に電力のエネルギーを行き渡らせる方法である。しかもそれは「無線」で行われるというものだ。物理的な電線を一切使わずに電力と情報を送信するシステムを彼は「世界システム」と名付けた。それは19世紀が終わろうとする1899年のことであった。アメリカのコロラドスプリングスに研究所を建設した彼がまず始めたのは、地球全体が電気を帯びた物体であることを解明することであった。
 テスラがエジソンの元で働いていた頃にあった有名な論争がある。それが直流-交流論争だ。直流に固執するエジソンに対して、モーターを駆動する回転磁界を生み出すために、交流を用いること主し、2人は一年ほどで袂を分かつことになる。
 その後テスラは交流から高周波の研究へと移った。送電線ではなく、電波によって情報とエネルギーを供給することで、距離を超えてエネルギーを分配できるからである。高周波と高電圧を発生させる共振変圧器「テスラコイル」を開発し無線電信の研究に没頭したのもそのためだ。高周波振動による電気的共鳴を利用して巨大な電圧を発生させる。その拡大送信機を使って地球上にエネルギーを行き渡らせる送電システムが構築できる。彼はそう信じていた。そしてついにテスラは地球の定常波を発見した。コロラドスプリングで頻発する雷放電を観測して、周波数の等しい波が干渉し合い波動がまったく動かない周波数帯と発見したのだ。
 しかしテスラが発見した地球定常波もそれを活かした世界送電システムも結局様々な要因で世に出ることはなかった。その後1952年にドイツの物理学者であるヴィンフリート・オットー・シューマンによって地球定常波が発見されたことになる。今ではシューマン共鳴(Schumann resonance)と呼ばれている。この原理は地球の地表と電離層との間で極極超長波 (ELF) が反射をして、その波長がちょうど地球一周の距離の整数分の一に一致していると説明される。その周波数は7.83 Hz(一次)、 14.1 Hz(二次)、 20.3 Hz(三次)というように、低周波から高周波へと上がって行く。共鳴は常に起こっているので、いつでも観測することができる。共鳴のエネルギー源は雷の放電や太陽風による電離層の震動だといわれている。
 テスラはこの定常波に共鳴させて電気エネルギーを乗せれば、エネルギーを減衰させることなく地球全体に送ることができるのではないかと考えていた。

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