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さらば地元住民:欧州の中心市街地を占領する観光客

Bye-bye locals: Tourists are taking over Europe's city centres

AFP
news@thelocal.es
5 July 2017
13:54 CEST+02:00
By Daniel Bosque and Michaela Cancela-Kieffer / AFP

 子供が遊び、近所の住民たちが笑い、伝統的なバーがある...。マニュエル・モレーロが散歩して回った、絵のようなバルセロナゴシック地区の過去の思い出を一気に振り返った。しかし今は「そのすべてが消え去ってしまった」
 住民たちが見捨てた思い出に満ちた建物は、古風なホテルや観光客の賃貸物件に変わり、狭く曲がりくねった路地には自転車やセグウェイに乗った観光客の群れがガイドツアーで押し寄せる。こうした問題は欧州の人気スポットに広く蔓延している。
 モレーロ自身は、彼が北西部のガリシアからこのスペインの海辺の街へ訪れた1962年以来ずっと住み続けてきた地区を捨て、街から出ていく側へと加わった。
彼が25年間賃借していた部屋は、投資家に売却されたことで彼は追い出された。月々に支払う€500($ 560)の家賃という手頃な物件を、この地区では見つけることができなかったのだ。
「彼らは€1,000、€1200、€1500を求めた」と分厚いガラスのメガネにふさふさした口ひげの76歳はそう語った。
「ここは私の村だった。私はここにすべてがあったのだ。友人たち、私の店、私はここで結婚して、私の子供たちはここで生まれた。そして私はここで死ぬだろうと思っていた。」
「私自身が取り替えられたようだ。」と目に涙を込み上げながら彼は付け加えた。

空っぽになっていく
市役所によると、観光客に愛されているゴシック地区における固定住民は、2006年の27,470人から2015年の終わりには15624人へと低下している。
今や、63%の人々は「流動的な」住民、つまり観光客や短期滞在者である。同時に、不動産ウェブサイトのイデアリスタによると、ゴシック地区があるシタットベリャの賃貸価格は、わずか2年で1㎡につき€14.4から€19に移っている。
 賃貸価格の上昇、騒音や通りにおける押し合いの混雑、そして古くから続く日常の店舗が消えたことは、経済的な理由、あるいは膨大に積み重なるフラストレーションのため人々が出ていかざるを得なくなったことにすべて関係している。
airbnbやその他のホームレンタルプラットホームの登場は唯一の問題を深刻化させたと地元住民は言う。
 「私たちはジェントリフィケーション(富裕化)の話をしているのではなく、元々住んでいた住民がもっと裕福な別の住民へと入れ替わっていっているという話をしている。」とシウタット・ベッリャの議員の一人ガラ・ピンは言う。
「私たちは空っぽになってしまった歴史的な地区の話をしているのだ。」様々な都市の現象を分析したエッセイ「最初に私たちはマンハッタンを選んだ」の共著者である社会学者のダニエル・ソランドにとって、こうした傾向は「労働者階級を外へと追い出し、お金を稼ぐための機械として都心を捉える」へと向かっているという。

パリ、アムステルダム、ロンドン
こうした問題は遠くの都市にまで影響を及ぼす。
パリでは、ノートルダム大聖堂が位置する第4区において関心を持っている住民が都心部の「見えない砂漠化」というシンポジウムを3月に開催した。
今年の早々に、フランスの首都にある市役所は、20,000戸の住宅がこの5年間で失われれ、その一部は観光賃貸のためであると述べている。これは「物価の上昇」と「人口の減少」の両方を進めると、パリ市役所の住宅担当のイアン・ブロサットはAFPに語った。
 一方、アムステルダムではING銀行が、住宅の所有者は季節的な賃貸も含めて、月に€350以上を稼ぐことができ、それが価格を押し上げていることを明らかにしたと、その研究報告を作成したセンヌ・ヤンセンはAFPに語った。
 この状況に対してトライし、改善するために、パリ、ロンドンそしてアムステルダムは賃貸期間を規制し、短期滞在に使うすべての家屋や住宅をコントロールするために登録させる方法を取りたがっている。
 ベルリンでは、昨年から家の一部屋のみを賃貸することを許可し、もし家屋全体であれば、セカンドハウスとして利用するという方針を取っている。

"影響は少なすぎる"
 以前は住宅立ち退き運動の活動家で、現バルセロナ市長のアダ・コラウは、バルセロナにおいて、より厳しい方法を選択した。
 観光客用の認可を持っていない宿のマーケティングをしたことに対して、ホームレンタルプラットフォームであるAirbnbとホームアウェイに、市役所は600,000ユーロの罰金を課した。
 しかしAirbnbスペインは住宅問題はそれ以前からあると述べている。
例えば、シウタット・ベッリャでは、「Airbnbによる広告の宿よりも3倍以上の空の宿(貸し出されていない)があると、スペインの報道官のアンドリュー・カステジャーノは述べる。
 そしてベルリンやロス・アンジェルス、ロンドン、そしてバルセロナのような都市における調査では、「純粋にプロフェッショナルな使用(年間120日以上の賃貸)のためのオンラインによる宿泊施設の数は、こうした状況に影響を持つには少なすぎる」ことを明らかにしていると、Airbnbは付け加えた。

"ツーリズムファーストフード"

宿泊価格の季節レンタルの影響に関する確かなデータは少なく、またごくまれであるが、AFP疑問に対してすべての専門家は、既に飽和した地区においては状況は悪化していると述べている。
バルセロナは特に、年間3000万人の訪問客が見込める都市の収益性に魅きつけられた投資家による価格上昇の厳しい攻撃にさらされている。
 不動産会社MKプレミアムのセージ・リーバは、彼のクライアントの半分は外国人であり、彼らはセカンドホームや良い投資を探していると話す。
そして価格上昇にもかかわらず、頑なに家を手放さない人々は、人々の群れと騒音、そして便利な店がなくなっていくという平和から程遠いせい買うを送らねばならない。

「もし価格によって出ていかない場合には、毎日のプレッシャーが待っている。」と27歳のバルセロナ地元活動家のマルティ・クソは述べる。この地区で育った彼は、友人の中では今でもそこに住むたった一人だ。
人文地理学の専門家のソコロ・ペレスには、「住民のいない都市は、死んだ地区である」と結論付けている。「都市はエンターテインメントと消費の単なる"クラスター"へと変わり、ツーリズムファーストフードになってしまう。」

ダニエル・ボスケ+ミカエラ・キャンセラ・キーファー/AFP
日本語訳 花村周寛


 


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