地球の緯度と頭蓋骨
地球の緯度と頭蓋骨の形状との間にある相関性について考えている。佐野博士は太陽の入射角と頭蓋骨の形状に関係性があり、太陽の入射方向とは直角の方向へ人間の頭蓋骨が延びていく性質があるのではないかとの仮説を立てている。
つまり緯度が高ければ高いほど、太陽は真横から差し込むので、人は顔を横にそむけるため、頭蓋骨が前後に長くなり、鼻が高くなるという白人(コーカソイド)のような形状を生む。そして赤道直下では真上から太陽が射すので頭が平べったくなり鼻が低いという黒人(ネグロイド)のような特徴となる。我々黄色人種(モンゴロイド)は斜めから太陽が射す地域に住んでいるので、額が広く鼻が低いという特徴を持つという。
説としてはあり得るが、詳しく検証せねばならないと思っていたのだが、最近のオックスフォード大学の研究では高緯度に住むひとほど、頭蓋骨と目が大きいということが明らかにされているようだ。
頭のサイズと人間の知能との相関性があるのかどうかが興味深いところだが、人工的に頭蓋骨を変形させるという方法については、ペルーのインカ帝国をはじめ様々な場所で古くより試みられている。なぜこのようなことが起こったのかについては、象徴的な意味以上に機能的な意味があるのかどうか。以下、いくつかの記事を参考までに掲載して、その後継続的にこの問題については追いかけてみたい。
■高緯度に住む人ほど、頭蓋骨と目が大きい(英研究)
オックスフォード大学の研究チームは、高緯度に住む人ほど、目と頭蓋骨の大きさが大きい傾向があるという調査結果を、英国王立協会「Biology Letters journal」に発表したそうだ。
高緯度地域とは赤道から離れた地点。赤道から離れるにつれ太陽光線を斜めに受けることになる為、光が広い面積に広がり、熱量は分散されて少なくなる。長い冬や曇った日が多い高緯度地域では、たくさんの光を取り入れられるように、目や頭の大きさが変化していったのではないかと予測されている。
研究者は全世界にわたって12の集団の55個の頭蓋骨から、眼窩と脳の容量を計測、緯度に対してプロットした。彼らは、高緯度の暗く長い冬という光量の小さな季節という環境に何世代にもわたってさられさることで、眼球が大きくなることを示唆する大きな眼窩という特徴を得たそうだ。同様、目のまわりの脂肪も寒さに対応すべく厚くなっているという。
夜行性のフクロウの目玉が大きいのと同じ理由で、人類の目も環境に対応すべく大きくなってきたということなのだが、頭蓋骨や脳が大きくなったからといって、高緯度地域に住む人の頭が良くなったということでは必ずしもないということだ。
当然これは傾向であって絶対的なものではないのだが、なかなかに興味深い話で、江戸時代とか日本も昔は目が小さい人が多かったようだが、最近は昔に比べ目が大きい人が多くなったように思うんだけれど、もしかしたらこれも、何か変化の表れなのかな?だとしたら何に対応しているんだろう?
■人工頭蓋変形
2013年、フランス東部アルザス地方の古代の墓から、素人目にはとても奇妙に見えるもの、違和感のあるものが見つかった。西暦400年頃に亡くなったと思われる貴族の頭蓋が出土したのだが、その頭蓋の形状がとても変形していたのだ。
額は平たいのに、後頭部がまるでコーンのように円錐形に盛り上がっている。専門知識のない者が見たら、宇宙人グレイというエイリアンの頭蓋だと思っても無理はないだろう。
だがこれは、頭蓋にわざと力を加えて自然な頭の形を変形させる、人工頭蓋変形の一例なのである。これは珍しいことでもなんでもなく、かつては広い地域で行われていたのだ。
人工頭蓋変形は、1900年代始めごろまで行われていた。フランス西部ドゥセーヴルでは、トゥルーズ型変形頭蓋として知られている。頭にバンドー(女性の頭に巻くリボンなど)を巻くことはフランスの小作農の間ではごく普通のことで、不慮の衝撃から守るために、赤ん坊の頭に当て布をしてきつく縛ったのだ。同じころ、ロシアやコーカサス地方、スカンディナビアでも、こうした人工頭蓋変形は行われていた。
人間の頭蓋の形を変形させることは、特殊なことではなかったようだ。時と場所を越えて一般的に行われていたことで、その意味合いはひとつに絞れない。なぜ、どのようにこのようなことが行われたのかを理解すれば、頭の形を変えることを選んだ社会のことをもっと明らかにすることでできるだろう。
もともと、他の集団と区別するためだったり、個人の社会的地位を示すために頭蓋に圧力をかけて変形させる行為が行われた。ヨーロッパでは、フン族、サルマティア人、アヴァール族、アラン族などのように、中央アジアのコーカサス地方から移住してきた部族の間では一般的だった。特にこの地域では、もっとも初期のころに人工頭蓋変形を施されたとされる人の遺骸が発見されている。
頭をきつく固定されている子供たちはかわいそうな気もするが、その後の研究で、専門家たちは頭蓋変形は認識機能にダメージを与えることはないし、頭蓋容量にも特に違いがないと信じるようになった。2007年の論文によると、意図的に頭蓋変形が行われている社会に、マイナスの影響がある証拠は見当たらないようだ、見解をだしている。
イラクとトルコの国境近くのクルジスタンで、1960年に新石器時代の墓が発見された。このシャニダー洞窟は1万年以上前のもので、出てきた35体の遺体の中に意図的な頭蓋変形の初期の例が見られる。フン族やアラン族は、中央アジアから出てきたが、西方に攻め込んで(あるいは傭兵として)ローマ帝国へやってきたとき、頭蓋変形の技術も持ち込み、それが西や中央ヨーロッパの人々に受け入れられた。
ギリシャの詩人で紀元前750~650年の間に生きていたヘシオドスの初期の文献にも、わたしたちの祖先が人工頭蓋変形を行っていたことが書かれている。自身の神話集『TheCatalogues of Women』の中で、ヘシオドスはアフリカやインドの部族が巨大な頭のことを言っていたことにふれている。
西洋医学の父ヒポクラテスは、紀元前400年頃に書いた自著『On Airs, Waters, and Places』 の中で、巨大頭蓋症についてふれているだけでなく、その技術も正しく習得していた。頭蓋が変形した人たちを神話化するのではなく、その方法や理由をわたしたちにおしえてくれる。"長い頭をもっている人ほど高貴だと考えられていた。赤ん坊は生まれてすぐは頭蓋がまだ固まっておらず柔らかい。まずは素手で赤子の頭の形を整え、布を巻いたりさまざまな工夫を凝らして、頭が長くなるように固定した"
この驚くべき施術を発見したのは、ヨーロッパの人間だけではない。中国の仏僧で旅人でもある玄奘三蔵法師は、17年に渡るインドへの旅が『西遊記』を書くきっかけになったが、中国西部の新疆ウイグル自治区カシュガルの人たちのことも記述している。"そこではごく一般的な両親から生まれた赤ん坊たちが、木の板で頭蓋をはさんで平たくされている"と。
フランスで発見されたこの写真は、人工頭蓋変形を施している人たちは移民で、その社会での地位が高い支配者階級だと広く言われていることと合致する。こうしたことは何千年も前には一般的だった奇妙な風習といってしまえばそれまでなのだが、真実とはほど遠い。
アメリカをとってもみても、さまざまな部族の間で、子供たちは両親によって頭を固定されて変形させられている。マヤやインカでも、現在アメリカいるチョクトー族やチヌーク族と同じように、子供の頭蓋に手を加えていた。その理由は同じはずだ。子供たちをその社会構造に合うように育て、まわりに階級を知らしめるためなのだ。マヤの人たちにとっては、宗教的に重要な意味合いもあった。
スペインの南米征服についての年代記作家で、マヤ人の末裔であるゴンザロ・フェルナンデス・デ・オビエドは、わたしたちの先祖が、頭蓋があのように長いと高貴に見えると神に言われたから、頭蓋変形を行ったのだと説明している。
マヤの頭蓋変形にはふたつのスタイルがあり、その人の地位を示していたという。高い地位の者は、斜め上に頭の先端が高く伸びる円錐形の頭にする。一般大衆は側頭部はフラットで丸い頭蓋がそのまま高くなるようにする。これらの頭の形はジャガーの頭蓋骨を真似て武勇を表しているとか、コーン型の頭は豊穣のシンボルだと言われているが、歴史家や考古学者の間では議論が分かれている。
人工頭蓋変形の記録は、オーストラリアやカリブ海の島々にも残っている。これは古代の話ではなく、世界の辺境の地ではいまだに行われている。
ポリネシアでもまだこの風習は続いているし、コンゴのマンベトゥ族の人々の間でもある。バヌアツでは、頭の形は有名な国民的英雄や宗教と密接に関係している。バヌアツのマレクラ島出身のある人は、霊的な信仰がベースになって発生したと語る。長い頭をした人はハンサム、美人で、知恵があると思われているという。
ほかのどんな肉体改造もそうだが、美しいかどうかは見る人の目によって違う。アルザスで発見されたこの古代の貴族の女性は、亡くなってから千年以上たっても孤独ではないようだ。彼女と同じ頭の形や習慣を大切にする人たちがまだ現存しているのだから。
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