生命表象学における景観について
極小のスケールである原子から極大のスケールである宇宙まで全ての物事は連続的に関係付いている。ランドスケープというのはその連続するスケールの中から、日常的に目にする中間スケールの範囲を取り出した眺めのことであり、それを通常我々は「景観」と呼んでいる。
しかし主にこの150年間に飛躍的に進歩した現代のテクノロジーはその眺めのスケールを変えることを可能にし、視覚的な範囲を大幅に拡張した。その結果あらゆるものは「観」られる対象である「景」へと変わったと言える。景観の「観」を指すスケープという言葉で極小から極大までの景観を整理してみる。
1.「ナノスケープ」:原子のスピンや分子結合といった極近景の眺め。
2.「ミクロスケープ」:遺伝子や細胞、結晶構造といった超近景の眺め。
3.「ヒューマンスケープ」:道具や家具のような人間の身体スケールで把握できるモノや近景の眺め。
4.「シティスケープ」:街や建物など都市部において人間活動を包み込む中景の眺め。
5.「ランドスケープ」:土地の地形や植生や川や生態系まで含めた地域スケールでの遠景の眺め。
6.「エアスケープ」:飛行機などの上空から眺めたより広範囲の俯瞰景の眺め。
7.「プラネットスケープ」月や地球といった衛星や惑星スケールの超遠景の眺め。
8.「コスモスケープ」太陽系や銀河系といった宇宙スケールから見る極遠景眺め。
以上のような8段階のスケールとして極近景から極遠景までの景観として区分けできると考えられる。これらは便宜上分けられているが、視点場の取り方によって連続した眺めであり、まなざしを近づけていくにつれて極近景に近づき、まなざしを引いていくにつれて極遠景に近づいている。見られる対象物である「景」とは、見る鑑賞者のまなざしである「観」のスケールの取り方によって大きく変化する。これが生命表象学が考える包括的に捉えた「景観(Scenery)」という概念であると定義する。
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