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2017年5月の記事一覧
09 愛しのラバル(後編)
18世紀から19世紀にかけての欧州の都市というのはどこもひどい状況にあった。今でこそパリやロンドンは清潔で華やかなイメージがある。しかしほんの200年ほど前は、ひどい場所であった。今の都市の姿はこの100年ぐらいの間に整えられた結果なのだ。
中世の頃は多くの人々は農業をするため農村に住んでいた。しかし農業革命と農地の囲い込みによって、農村でそれほど人手が必要なくなる。その一方で人口は増えていき
08 愛しのラバル(中編)
僕のピソ(アパートの部屋のこと)はロイグ通りというラバル地区のど真ん中に位置する狭い通りに面している。ラバル地区はバルセロナの顔とも言える目抜き通りのラ・ランブラス通りの南側の旧市街地だ。ランブラスの北側には大勢の観光客が行き交うゴシック地区がある。
しかしこの地区を歩いているとここがスペインのバルセロナであることを忘れて、中近東のどこかの街を歩いているかのような錯覚を覚える。少し南にいくと中
07 愛しのラバル(前編)
ラバル地区に潜り込んで一月が過ぎようとする。
僕自身は居住地に関しては特に好みはない。特に今のように旅人としての流浪の生活であればどこでも結構楽しめるものだ。清潔でよくデザインされたホテルの上層階から街を眺めるのも、もちろん嫌いではない。しかし人はそうした高い目線や遠い目線でばかり捉えていると、どうも抽象的な思考に偏ってしまう。
上から眺めるきらびやかな街とは違って、地面に這いつくばるような