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厨房の取材

先日の某番組で、ある店舗の取材をしていました。
最近ではカメラが厨房まで入って撮影することが当たり前になっていて、店側も要領を心得ている場合が多い様子です。

そんな最近の流れの中でも、まれに「これは秘伝なので、ここからは撮影禁止」あるいは「カメラの進入お断り」などという店屋があったりして、またかと思ってしまうのです。
メディアにレシピを公開したぐらいでその店の味が再現できるぐらいなら、そんなものは秘伝とは言わないのではないですか。
カメラで厨房内の作業を撮られるぐらいでそのテクニックを盗まれるというなら、はじめからそんな程度の技量だということでしょう。

堂々とレシピを公開する老舗の味は、そのとおりに素材や調味料を配合したぐらいではとても素人レベルで再現できるものではないはずです。
大きなストライクゾーンには入るかもしれませんが、それはその店の味ではないでしょう。
似たような味やそれらしき料理には仕上がるかもしれませんが、あくまでも似て非なるものです。

先日のお店も関西ローカル番組での北摂地域の水餃子の専門店でありましたが、先代から受け継いできたいわゆる一子相伝的な水餃子の製造過程を紹介していました。
今回がメディアの初めての取材ということでありましたが、ミンチ肉に様々な材料を混ぜ合わせ餃子の餡を練ってゆく様をカメラは追っていました。

こういう言ってみれば手の内をあからさまにすることができるのは、逆にこれで同じものが作れるなら作ってみろ(できないだろう)、という強い自信の表れでもあります。
それでこそほんものでありましょう。
プロであることの証左です。

レシピだけでは、料理は再現できません。
素材を規定分量に配合しても、それは単なる材料の集合体であって料理ではない。
調理がそこから始まり、その過程で施される様々な処理が味を決めてゆくのです。
火の入れ方やその時間、火を止めるタイミング、その他数値化できない要素が無数にあります。
先の餃子の餡にしても、練り込むといってもどこまで練るのか、どの時点で止めるのか。
そのタイミングは、それこそその瞬間の見極め以外にないのです。

これらの複雑な要素を、常に一定のレベルに保ち提供するのがプロであり、そこが素人との差であります。
料理は奥深い。
プロの技は、だから見ていて心地よいのですね。

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