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塩は最高の調味料

ある方のブログに、塩の振り方が足りないことを「弱気な味付け」と書かれていて、その表現が気に入ったので今後は私も使わせてもらおうと思っています。
人間の味覚には五種類あって、甘味・苦味・酸味・塩味と旨味の五種と言われてます。
それで、このそれぞれの味は舌の上で感じる範囲が異なるのもよく知られることです。
さらにこの五種の味覚の中でも特に美味しさに関わるのが旨味。
そして、この旨味を引き出すのに重要な役割を果たすものが塩です。

すこし以前に健康ブームと相まって、味付けというものが極めて薄くなされることが流行りました。
異常なまでに塩を控え、油の使用を制限しなんでもかんでもヘルシーを売りにまったく味のない、ようするに美味しくない料理が流行ったのです。
その料理が、メディアによって「大変軽い」「非常にヘルシー」「さっぱりしている」などと持て囃され、みんながそれに迎合して流されていた時代がありました。
つい最近までのことです。 いまでもその流れから抜けきれてない店にときおり遭遇するのですが…

和食は健康的といいますが、それと塩の使い方はまったく関係がありません。
上品な味付けと言われる京料理においても、例えば魚を焼くときにどれほどの塩を打つか。
鯖などの魚を酢漬けにして〆る際に、前もってどんなにしっかりと塩を振っているか、ということです。
この、魚などの身から生成される各アミノ酸。グルタミン酸をはじめとして、イノシン酸などの旨味を引き出すのに塩はなくてはならない重要な調味料なのです。
塩の使い方が中途半端だと、頼りない味しか出ません。

関西では、味付けの濃いことを「からい」と表現します。
これは、塩辛いの「辛い」でもなく、また hotの「辛い」でもありません。
関西弁独特の表現でありますが、「この料理、えらいからいなぁ」と言うのは、味付けが強すぎることを言っているのです。
要するに濃い味ということで、店屋であればそこの味付けが下手だという意味合いも含んでいます。

したがって、「からい」というのは、「不味い」に等しいのですから、店屋としては「からい」といわれたくありません。
そのために、この味の決め手ともいうべき塩の振り方を控えてしまうことがあるのでしょう。
過ぎたるは及ばざるが如しで、塩の過ぎた料理はどうしようもありませんが、足らない場合は卓上の調味料で足すことが出来るからです。
しかし、これではプロではありません。
しかるべき塩梅で料理を仕上げてこそプロの店屋ではないのでしょうか。

塩梅とはよく言ったもので、塩の適量さ加減を表現する言葉ですが、実際の料理においてのこの適量がまた言うは易く行なうは難しいのです。
料理人が多くいる料理店の厨房では、最後の塩をシェフあるいはそれに相当する人間にしか振らせなかったり、あるいは大きなお玉で大雑把に調味しているように見える中国料理の厨房でさえ、ティースプーンで計量して味をコントロールしているのを見たことがあります。
しかし、そこまでしてもやはりその瞬間の火の扱い方や、その日の気候やさまざまな要素が複雑に絡み合って味は変化するのです。
ちょうどいい塩梅のしっかりした味付け、強気の味付けを期待したいものですね。
レストランは非日常なのですから。 日頃の惣菜ではありません。

たかが塩、されど塩であります。かように、塩梅は難しい。

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