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飲食店のカウンターは如何にあるべきか

先日、フレンチレストランなのですが白木のカウンターでお箸で食べるお店があるというので、興味を惹かれて行ってきました。結果は、素晴らしいお店でした。ホスピタリティ溢れるオーナーシェフの心意気が充分に伝わってきました。

カウンター形式のお店は、バーなどはもちろんですが日本ではお寿司をはじめとして、割烹や小料理屋などでごく当たり前の形式として広まっています。日本人は、特に意識しなくとも調理人とこのカウンターを通して、いってみれば対峙する食事の姿を自然と身につけてます。また、板前さんと呼ばれる和の調理人の方は、これを普通のこととして丁稚のころから仕込まれます。したがって、カウンターの向こうにはお客さんがいるということ、つまり調理人も接客の一部をどころか重要な部分を担っているのだということを痛いほど理解してます。

これに対して洋食の調理文化には、カウンターを介して接客をしながら調理をするという形がありませんでした。最近になり、著名なフレンチのシェフたちがこの日本のカウンターの接客に興味を抱き、自分の店にもこの形式を取り入れたりし始めたようです。(ジョエル・ロブションなどが有名です)

大手チェーンではなく、個人の方が新規にお店を作るときこの時代の流れを察知してトレンドな洋食のお店にしようと、カウンターを店内に設置し調理の一部、あるいはすべてを見せるというお店が増えてきました。ところが、形としてのカウンターが設営できても、それに伴う接客の技術や精神が付随していない場合が多いようです。

偏見からものを言うわけではないですが、とくに高級フレンチの出身者にはまったくと言っていいほど客前に出たことがない方がいらっしゃいます。閉鎖的な厨房で、見習いのころからずっと調理一筋でやってきたという方。料理の腕前は充分となり、以前のオーナーやシェフからひとり立ちを認められ、自らも自信をつけて念願のお店を持つ。ここまではいいのですが、これからがまだ経験のない接客が始まるのです。

トレンドを模してカウンターを作ったはいいが、その店のステージとも言うべきカウンターでいかなる接客をするべきなのか。これは、その後のお店の発展にも関わる大きな問題です。人間もって生まれた気質があって、自然と接客ができる調理人の方もいます。しかし、性分というものはなかなか変えられないようです。まして、前職で料理長にまで上り詰め、みんなが自分に頭を下げる立場であった場合に難しいようですね。今度は、自分が頭を下げねばならないのです。カウンターの向こうには、お客さんがいるのです。今までとは違います。配下のコックや、ホールのウェイターばかりではないのです。

長くなりました。結論は、カウンターはいかにあるべきか。大手チェーンの型どおり、マニュアル通りの接客は論外です。(ダメだというわけではありません。チェーン店のその完成されたマニュアルは素晴らしいと思います) 個人のお店で、すべてが自分の裁量で動かせるカウンターで悲惨な接客を展開している店屋があります。ほんとに、もったいないと思います。むやみなおべんちゃらなどを要求しているわけではありません。お客を心からもてなそうという心意気。それがすべてだと思うのです。

先日のお店は、入店するなり店主であるシェフから満面の笑みを投げかけられました。この時点で、もうこの後の展開が予感できるというものです。もてなしの精神が、その笑顔と「いらっしゃいませ」の一言から充分にというほど伝わってきたからです。どこかの、笑顔ひとつすら出せない店主に見せてやりたいものでした。(いっそのことカウンターを取り除いたら、と思うほどの店屋、結構ありますよ… )

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画像は本分とは関係ありません、イメージです

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