博士一年を振り返る

本当は被験者実験が落ち着いてから書こうと思ってたけど実験が終わったらすぐ論文執筆に取り掛かりたいので一度振り返ろうと思う。

今振り返ってみてもこの一年は纏まった休みを取ることなく日々忙しく過ごしてたなと思う。論文を書いたらゆっくり休みたい。


2019年4月〜7月:4月は修士2年の時に出した国際学会の結果が気になってあまり気が休まらなかった。また、奨学金の申請だったり博士論文の流れや実験計画を考えたり等バタバタしたスタートを切っていた。博士課程の授業を一年で取り切るため授業を詰め込んでいたので、7月まであまり研究に没頭していた記憶がない。記憶が無いだけでちゃんとやっていたと信じている。国際学会の結果は5月くらいに来てIEEE主催の学会に口頭で発表できることになった。凄く嬉しかった。

また、7月から2ヶ月間ドイツに留学に行くことを計画していたが先生がそのこと自体を忘れていて5月まで留学が確定せず、非常にバタバタしていた。物事が進んでいないなと思ったら失礼だと思わずガンガン主張する方が良い(先生方は忙しくてすぐに対応できず忘れてしまうことも多いので)


2019年7月〜9月:出国直前までバタバタしていた。出発二日前になって「滞在先に布団が無い」ことが分かったので荷物を詰め直した。トランジットの飛行機の出発が4時間遅れた上に機内の冷房が強く一切寝れなかったのでフラフラのままドイツに着いたことだけ覚えている。現地の学生さんが空港まで迎えにきてくれて本当に助かった。携帯のSIMカードのアクティベートも手伝ってもらった。ドイツ国内SIMのアクティベートは少しめんどくさいと聞いていたので助かった。最初の週末、土日にスーパーが閉まることを知らず買い出しに間に合わなかったのでミュンヘン中央駅の自動販売機でペプシを大量に買って少しずつ飲みながら耐えた。何故か行った年だけたまたま猛暑だったせいで夜は中々眠れずペプシの空きペットボトルに水を入れて冷凍庫に入れて凍らせた物を首の後ろと脇と太腿の間に挟んで寝ていた。

ドイツに到着して一週間後国際学会に参加した。留学先がミュンヘン、学会の開催場所がベルリンだったので電車で移動できるのがありがたかった。無賃乗車はしてない。初めての国際学会&口頭発表で緊張したが思ったより喋れたので良かった。発表後はベルリンの壁を見に行き、夜は食事会で日本から来ていた企業の方々とご飯を食べた。とても楽しかったのでまた国際学会に行きたい。

留学先はロボット系のラボだった。元々機械系だったのもあってロボット関係の研究室に行けたのは嬉しかった。研究室の学生とも打ち解けることが出来たのが救いだった。幸い今でもよく連絡を取っている。毎週火曜の朝に教授が研究室のメンバーと共にウェイクボーディングに連れて行ってくれた。最初は中々ボードの上に立てなかったが、何回も挑戦し最終的には無事立ち上がることが出来た(40mくらい行ったところで落ちたのでスタート地点まで泳いで戻るのが大変だった)

先方の先生はMATLABを用いたCADの開発に携わっていたので私もそれを使うことになった。帰国直前には新機能のデバックを任されるくらいになったので結構頑張ったと思う。私の書いたコードをサンプルとして採用して頂いたこともあった。3Dプリンタが自由に使える環境だったこともあり、2ヶ月という短期間だったが手に装着する外骨格のロボットのプロトタイプを完成させることが出来た。この2ヶ月頑張って研究成果を出したことで非常に良いことがあったので後に記述する。

平日の9:00-17:00は研究室にいたが、休日は色々なところに出かけた。日本にいた時はあんなに引きこっていたのに、言葉の通じない海外で一人で旅をするまで成長するとは行く前は考えられなかった。一度陸路でベルギーに行ったが、初めて自分の意思で国境を越えられたことに感動したことは今もよく覚えている。

また、前述した研究室のメンバー以外にも非常に心強い繋がりが出来た。ミュンヘンではふわふわのくまさんで有名なイラストレーターの原田みどり先生にお会いすることが出来た。日本で続けている研究にあまり自信が持てないことを伝えると、様々な視点からアドバイスを頂いた。お陰様で将来への希望を取り戻すことができたので感謝してもしきれない。

また、これまた原田みどり先生のご紹介でドイツで働く日本人の研究者を訪ねてMax Planck研究所に訪問した。お忙しいところ一日かけて研究所を紹介してくださったり私自身の進路についてご相談させて頂いたことは本当に感謝している。その説は本当にありがとうございました。

充実した2ヶ月を過ごし、自分への自信を少しだけ取り戻すことが出来た良い留学だった。想像以上に楽しかったので、最終日の研究室で恥ずかしいくらいボロボロ泣いてしまった。あまりにも泣くので研究室の友人が「俺は日本に行ったことあるけど良い国だよ!だから大丈夫!」という謎の励ましを受けるくらいだった。もう一度、次は長期で留学することを決意し日本に帰国した。

2019年10月〜12月:何故か私が留学していた時期に同じくヨーロッパに留学していた東工大の同期・後輩がいたので思い出を語り合う会を結成した。お酒を飲みながら当時の思い出を振り返るのは楽しい。また飲もう。

戻ってきてすぐ研究があまり進まない時期に直面してしまい、精神的に辛い時期に陥った。ざっくり言うと私はVRを用いた運動ゲームについての研究を行なっているが、Oculus touchでは想定している動きが上手くいかないことが分かったのでLeapmotionを使うことになった。修士2年の時はモーションキャプチャカメラとしてOptitrackを使い、博士に入ってからVRの手を投影するためにOculus touchに変更し、それでも問題が発生したため次はLeapmotionと結果として色々な機器を使うことになってしまった。内心「また新しい装置使うの…スクリプト書き直さないと…」と思っていてかなり参ってた。年内ははっきりと区切りをつけられずに翌年に持ち越されることになった。

2020年1月〜現在:良いことがあった。年明けにたまたまイギリスの大学から短期滞在していた先生がLeapmotionを使っていることを聞き、システムの設計について根掘り葉掘り質問をした。Leapmotionが配布しているUnityのSDKが非常に充実していたので、何故か一週間で今までより良い実験システムが完成した。去年はなんだったんだ…。この前の三連休朝から晩までパソコンに向かい、データの取得も出来るようにした。大変だった。

また、留学予定先に連絡をした。ドイツで会ったMax Planck研究所の方に紹介して頂いた方だった。その方から更に私のテーマに適した研究者の方に繋いで頂くことが出来た。しかし、その研究室から「ドイツにいる研究者からの推薦書を出してほしい」と言われた。私は真先に2ヶ月滞在していた研究室の先生が思い浮かんだ。もし、しっかり研究をしていなかったら、この時点で終わっていたかもしれない。あの時頑張ったことがこうして繋がるとは思っていなかった。事情を説明した後すぐに推薦書を送って頂いた。まだ正式なAcceptについては交渉中だが、積極的にメールをしていこうと思う。

今年に入って一つ決めたことがある。それは博士卒業後は企業に就職しようということである。というのも、修士から続けていたVRシステムの開発について、今まではリハビリテーション応用のみを考えていたが、私が(心の中で)テーマとしている「VR等を用いたゲームによる運動能力や運動意欲の向上」は障害の有無や年齢を問わないこと、手軽に運動を継続するために室内で出来るゲームを利用することが段々普及してきていることから、今は多くのユーザーを抱えているゲーム業界に興味を持っている。とりあえずは実験が最優先だが、少し作業が落ち着いたら通年採用のインターンシップに行くことを予定している(既に数社連絡はしている)

振り返ってみて、本当に人の繋がりに助けられた一年だったと思う。上記以外でも研究が中々上手くいかず精神的に落ち込んでいた時にゲーセンに誘ってくれたサークルの後輩、定期的に集まってご飯を食べに行く博士課程の同期達。辛い時に話を聞いてくれる知り合いも多く、自分は何も相手に返せていないことに申し訳なさを感じるくらい人に恵まれていることを実感した。

この一年、自分に自信を持って研究ができたかと言われるとそうでは無い部分も多く、博士課程の学生として良いのか分からない部分もある。しかし、振り返ってみると総合的に見ればまあまあ頑張って来たんじゃないかなとも思う。今後も周囲の人々に感謝を忘れず精進したいと思う。行きたい企業に行けるように頑張りたいと思う。

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