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2年前の答辞

2年前の3月、社会人大学院の修了式を迎えました。
そこにいたるまでの紆余曲折は省略しますが、最後の最後、私は総代として、答辞を読ませてもらうことになりました。

答辞の文章を考えるだけでもじゃっかんプレッシャーだったのですが、事務の方から送られてきた折り畳みの式辞用紙は、家のプリンターではたちうちできなそうだったので、書道をやっていた姉にうちに来てもらって、前日に書いてもらうというバタバタした状況で当日を迎えました。

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内容はともかくとして、せめて当日かまないように、と何度も読む練習をしたにもかかわらず、当日は声が上ずってしまいました。いつもはスナックのチーママみたいなダミ声のくせに、あとから録画を見せてもらったら小動物みたいな小さな声になっていたのが残念でしたが、今のこの卒業の季節、ふりかえりの意味も含め、記念に載せておこうと思います。

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答辞

本日は学長をはじめ、諸先生方のご臨席を賜り、このように盛大な学位授与式を催していただき、修了生一同、心より感謝申し上げます。また、学長からは温かい御告示と激励のお言葉を戴き、重ねて御礼申し上げます。

今、日本は、世界が経験したことのない超高齢化社会に突入しています。それにともない、労働人口の不足、社会保障制度の問題、さらに原子力発電の今後、東日本大震災からの復興など、目の前の問題だけでも、枚挙に暇がありません。一方で、とどまるところを知らないテクノロジーの進化、特に人工知能の発達により、私達の仕事や生活そのものは未知の領域へ、大きく変わろうとしています。そのような大変化の時代にあって、私達はあえて大学院へ進学し、今ここに修了生として立っています。

この二年間を振り返ってみますと、活発に交わされている議論に圧倒された最初の講義から始まり、先生方のご指導、学友との切磋琢磨を通して、これからの時代を生きていくために必要な、三つの力を手に入れたと考えています。

まず、論理的に考える力です。これまで自分が論理的に考えていると思っていた状態は、まだまだ論理性に欠けた独りよがりなものでした。哲学の父、ソクラテスの言葉に「無知の知」というものがあります。私達はこれまで少なからず社会人としての経験を積んできました。しかし、知っていると思っていたことは壮大な知恵のほんの一部でしかなく、自分がいかにわかっていないかということを、本学の学びを通して思い知りました。まさに先生方の情熱的な御指導の賜物と存じ、深く感謝申し上げます。この論理的思考力は、私達が活動する社会の現場において強力な武器となり、さらに自分自身の人生を切り開いていくための基盤になると信じています。

二つ目の力は、多様性を受け入れる力です。本学は、社会人大学院という性格上、社会の様々な組織で働いている人間が、多様な経験や考え方、価値観を持って集まっています。その仲間たちとの授業での討議、そして修士論文や問題解決のゼミでの取り組みを通して、「違うからこそ、そこに学びが生まれる」ということを、身をもって体験しました。他者を受け入れるということは、自分の枠が広がること、自分の世界が拡張することを意味しています。違いを受け入れることによって、人と協働することが可能になり、一人ではなしえないことを実現することができるのです。私達はそれぞれが今後、自分のフィールドでリーダーシップを発揮していくべき存在です。その際に、多様性を受け入れる姿勢は必ず必要なものであり、大きな力になるということが本学で心に刻み込まれました。

三つ目の力は、人間性を磨く力です。論理的思考力も、多様性を受け入れる力も、それらの土台となるものが人間性です。本学の建学の精神にもありますように、私達のこの二年間は、「広く世界に目を向け、ほかの意見を尊重し、自分をいつわらない誠実な人格の形成」に取り組んできた時間でもあります。人間性こそ、私達が生涯を通して磨き続けなければならないものです。ここにいる修了生一人ひとりが、知性のみならず、人格を磨き抜くことができたのか、今一度、自分自身に問いかけなければならないと思います。

今日のこの日は、私達にとってゴールではなく、スタートです。すでに私達は、自ら問題を見据え、真因を掘り下げ、新しい価値を生み出すためのストーリーを描き、人を巻き込んでいく、そのための知恵を学びました。今後さらに、勇気と情熱を決して失わず、本学で培った力をそれぞれの持場で精一杯発揮していく所存です。そのことが同時に、私達を導いてくださった大切な方々への恩返しになると考えております。

最後に、今日まで私達をご指導下さいました学長をはじめとする諸先生方、職員の皆様方、共に多くの時間を共有し切磋琢磨した学友、先輩、後輩の皆さん、そしていつも私達を温かく見守り支えて下さったご家族の皆様に、修了生一同心より御礼を申し上げます。皆様のご健康と今後一層のご活躍、そして、大学のさらなる発展を祈念し、答辞とさせていただきます。


                      2018年3月24日
                       修了生総代 大前みどり

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今月卒業を迎える(た)皆さま。
今、世界的なウイルス騒動で先の見えない状況のなか、卒業式が中止になり、残念な思いを抱えていらっしゃる方も多いかと思います。
けれど、それで学びが消えるわけではありません。今のこの時代にしか得られなかったであろう貴重な体験や学びを持って、ぜひこれからの未来にのびのびと羽ばたいてください。
ご卒業おめでとうございます!!

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