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プロローグ

 偶然なのか運命なのか計算なのか誤算なのか知らないが世の中には『縁』と言うものがあるらしい。
 例えば、何かとよく居合わせる友達とか、自然と集まってくるアイテムとか、ラッキーナンバとか、ラッキーカラーとか……。探してみるとそれは妙に法則性がある。
 それらは良縁や腐れ縁と呼ばれ、好まれたり疎まれたりするけれど、俺は少なくとも『縁』とやらには恵まれていないらしかった。

「大丈夫ですか⁈ しっかり!」

 体を揺さぶられて肩を叩かれた。
 重たい瞼を上げて振り返るが意識が朦朧としていて誰なのか分からない。すると、コンクリートの上に倒れていたところを仰向けに転がされた。視界が一回転して脳が揺れて吐き気が襲う。
「いま警察と救急車を呼びましたからね! しっかりしてください!」
 誰かが脇腹の傷口をおさえた。手当てしてくれているらしい。ありがとうございます、と息も絶え絶えに応えたが言葉になっていたかは分からない。
 ぼやける視界の隅で大量の白い羽毛が見えた。
 とりあえず、天国に行けますようにと願った。

2023.07.05. HP公開 再掲載


CAST:伏見春芽、杉下紡希

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