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#7 (Podcast クリップ)植物が「聴ける」ガーデンのある、小さな島のファーム:カナダ・ソルト・スプリング・アイランド

こんにちは。
東京では、桜が咲いて雪が降ったというニュースを耳にしました。
この時期の気候は、不安定ですね。

今回は、ポッドキャスト(podcast)からのクリップに解説を交えながら、コンパクトにまとめてお届けします。


1.  今回のポッドキャスト、"Slow Flowers with Debra Prinzing" より

Podcast の名前は、「スロー・フラワーズ・ウィズ・デボラ・プリンヅィング (Slow Flowers with Debra Prinzing)」。
 発信者は、アメリカ、ワシントン州シアトルをベースに活動している、「スロー・フラワー」の提唱者であり、著者、エディター、講師である デボラ・プリンズィングさん(以下、デボラさん)。

デボラさんのポッドキャストの内容は、「アメリカ国内で花を育てる人と、その花を使ってデザインをする人について
目的は、「スロー(slow)」というだけあり、
「ローカル(地元)で、農薬や肥料の使用は安全なレベルで、育てられた季節の花、をビジネスにする人」のための「国内のフラワー・ファーム(農園・農場)の救済」と「フラワービジネスのサポート」。
「消費者にも知識を与えて賢い選択をしてもらいたい」。

毎週1回、フラワー・ファーマー、フローリスト、などフラワー・ビジネスの仕事に携わる人にインタビューをした内容をアップしてくれます。
アップされた数は、444回、ダウンロードされた数は、すでに58万6000回以上を超えています。

今回は2020年3月11日にアップされたばかりの内容です。

2. アルケミー・ファームは、どんな所?


カナダ、ブリティッシュコロンビア州の小さな島、ソルト・スプリング・アイランド(Salt Spring Island)にある、アルケミー・ファーム(Alchemy Farm)のオーナー、イングリッド・コイヴカンガス (Ingrid Koivukangas)さんとのインタビュー。

バケーションの人が訪れる小さな島でのフラワー・ビジネスは、どんなものか、一緒に聴いてみることにしましょう(お聴きになる場合、3月22日以降は、エピソード444を探してくださいね)

ソルト・スプリング・アイランド(以下、島)の大きさは、183㎢、人口は1万2000人ですが、ヨーロッパ、アメリカ全土から、バケーション、観光、ウエディング、など休日を過ごすために訪れる人で、夏は人口が2倍になります。

位置的にもカナダのバンクーバー、アメリカのシアトルからもフェリーや、ホバークラフトで20〜30分くらいと思ったよりも便利の良いところにあり、自然に囲まれた静かなカントリーライフが楽しめることで人気です。


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そんな島に魅せられた一人、イングリッドさんは、環境アーティスト(Environmental Artist)という肩書きを持ち、11年前から週末を島で過ごしていたのですが、5年前にバンクーバーから完全に「移住」して、約4ヘクタールの土地を購入。アルケミー・ファームと名付けました。
ご主人のロビンさんともこの島で出会いました。ロビンさんは、元イギリスのホメオパシー処方家で今は木工クラフター。

環境の仕事をしていたとはいえ、植物を育てた経験はあまりなかったので、最初はミツバチやポリネーター(植物の受粉を助ける虫たち, pollinators)のために花を育てていました。
その後、育てた花を配達したり、ウエディング(前回のビジネス記事参照)の花を手がけたりするように。

交通事故で脳しんとうを起こし、それからは、体にストレスや負担のかからない仕事、ということで、農薬や化学肥料を使わずに、花や野菜、果物を育て、ジャムなどと共に、店頭での販売を始めました。
「ウエディング用の花は、バケツ単位で売っていますよ。都会からわざわざ持ってきた卸売市場の花でウエディングのアレンジをしてるのを目にすると、見たくないわ〜、と思います(笑)」。

店頭販売の他に始めたのが、
「ガーデン・ツアー」と「フラワー・ワークショップ」。
今はこちらがメインになっています。

3. アルケミー・ファームで育っている花たち

イングリッドさんが目指すのは、サステイナブルな(sustainable, 日本では『継続可能』と訳されています=人間と自然が相互に関わり、無理なくうまく共存できる上に、循環、もしくは長く継続していけるような)環境を整えた農場とヒーリングのためのオアシス。

「ショー・ガーデン(show garden)」と呼ばれているガーデンで育てている植物はおよそ200種類。
1月には、ヘレボラス(ランタンローズ, Helleborus)
2月から春にかけてはビニールハウスのラナンキュラス、アネモネ、と順番に春の花
5月下旬/6月から10、11月までは、バラのシーズン(現在85種類栽培中)
夏から10月 までは、ダリア 「雨が少ない年は11月まで咲きます」

その他、りんご、梨、プラム、、ブラックベリーなどが育つ果樹園もあり、ジャムにして販売されます。

4. 花の音を聴く?「フラワー・ミュージック・ガーデン・ツアー」

デボラさんもこの「花の音」の部分に興味津々で、「どんな器具?」「どうやって聴くの?」「どんな音?」など、たくさんの質問が出てきました。

イングリッドさんの説明です。
「主人が、クリスマスプレゼントにくれた、『ミュージック・オブ・プランツ』っていうイタリア製の器具なんです。先端にクリップみたいに挟むものがついていて、片方を根っこ、片方を葉っぱにつなぐんです。すると、根から葉に向かって行く植物のエネルギー(バイオエナジー, bioenergy)を器械が記録して、音(メロディー)に変換してくれるんです。最初は私にもよく聴こえなかったんですけどね(笑)」。

今までに75のミュージック・クリップを録音。
そのうち現在、ガーデンで聴けるのは、35。
1種類の植物につき3分間。全部聴くと90分以上になりますね。
あらかじめ録音したものが、QRコードに載せて、植物の横に置いてあり、
それをスマートフォンから聴くというシステム。
ツアーの時間は2時間ですが、時間はあっという間に経ってしまいそうです。

「最初は、私がその都度ツアーをしていましたが、交通事故の後遺症があって、体力的につらい時もあるので、ミュージーアムのようにセルフ・ツアーにして、ちょっとしたガイダンスをつけました」。

さて、どんな音がするのでしょう。
こちらがデモンストレーション・ビデオ。
ニゲラ、金魚草、キャットミント(Nepeta kubonica)、カレンデュラの音です。

ガーデン・ツアーのお値段は、25ドル(2600円くらい)。
デボラさんも、ちょっと高いな、と思ったのか、しばし沈黙(笑)。

イングリッドさんがファームをオープンするのは、7月から9月の間、週に1、2回。訪れた人は2019年は100人程度。単純計算でも2500ドル(26万円くらい)。

「それくらいの料金設定にしないと、維持・管理、人件費などが賄えないんです。フラワー・ファームだけだと他に何件かあるし、花を島の外で売ることは大変ですしね」と、イングリッドさん。



5. 「フラワー・ワークショップ」と「オンライン・クラス」

イングリッドさんが力を入れたいことは、
「体験」と「教育」

「この島を訪れる人たちは、リラックスするためにやってくることが多い、とはいえ、ダウンタウン(町の中心)をブラブラして、ファーマーズ・マーケット(週2回)をのぞいて、それからチーズ・ファームに行くでしょ。さて、それから何しようかな、ってことになるんですよ。特に何がある、っていう場所じゃないですから。そうすると、滞在先のB&Bや、Air B&B, コテージのオーナー、商工会議所(小さな町では、観光案内所、宿泊先斡旋も兼ねることが多いです)が、私のファームを薦めてくれるんです。アーティストも多く住んでてワークショップもやってるんですけどね、うちもワークショプを色々やってます。」

ワークショップは、マンツーマンからグループまで、お好みによりカスタマイズ。
花嫁さんのためのウエディング・ブーケ作り、から、ファミリー・リユニオン(夏休みなどに、親、兄弟が何組か集まってコテージなどを借りて過ごす)での小さなアレンジメントやクラフト作りなど。
普通は天使のメッセージカードである、オラクルカードを花達からのメッセージカードに替えて、メッセージを受け取るワークショップ、のようにイングリッドさんの得意な分野を生かしたものもあります。

普段自然から離れている人々は、自然と触れ合うことによって癒されていくようです。

「花を音として経験して、全く違うアングルから植物のことを知ってもらう、というのも教育の一つです。
環境アーティストとして、人と自然をつなぐのが、元々私の仕事でした。みんなに知ってもらいたいことがたくさんあるんです。
例えば、都市で売られている花は、卸売業者を通してはるばる遠いところから運ばれてくること。高いクオリティを維持するために多量の農薬が使われること。
他にも、ミツバチやポリネーターが人間にどれだけ大切な存在か、その役割やミツバチたちが、今危機に面していること、そのためにも除草剤を使わないこと、などです」。

今、イングリッドさんは、「ミツバチのためにフラワー・ガーデンを作ろう」、というテーマで、「ビー・ガーデン・スクール (Bee Garden School)」をオンライン・クラスで始めています。8回のコースで、ミツバチとポリネーターにはどんな種類があるか、どんなところに生息して、どんな花が好きか、庭のデザインをどうするか、どのように選んだ花を自分が住んでいる所で育てるか、を教えています。

こちら(↓)が、アルケミー・ファームのウェブサイトです。

6. まとめ

訪れる人が限られている小さな島でのフラワー・ファームはカット・フラワーを売るだけでは、経営は大変。
イングリッドさんのように、農場を解放して、ツアーをしたり、バーン(納屋, barn)でワークショップを開いたりするのも一つのアイデアですね。

イングリッドさんが、島に移る決意をしたのは、日本で(!)環境アーティストとしての講義を終えて帰ってから、突然、だそうです。
「私が島を選んだというより、島が私を選んだという感じです」とのお言葉のように、自然と調和し、ひらめきや直感を大切にしている方のようですね。
花の音は子供にも人気らしいです。大人も子供も楽しめるというのが、またいいですね。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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