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#14 (blog クリップ) フラワー・デザインに使える、美味しいエディブル・プランツ(その1)

今回と次回は、アメリカ、ワシントン州にあるフローレット・フラワー・ファーム(floret flower farm)のオーナー、エリン・ベンザケイン(Erin Benzakein) さんのブログからお届けします。

1. エディブル・プランツとは?


エディブルというのは、edible = 食用、食用可能な、という意味です。
エディブル・プランツとは、野菜はもちろん、ハーブ、一部の花、などの植物をさします。

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2. 従来のエディブル・プランツとエリンさんの新しいコンセプト

今まで、エディブルという言葉を、ガーデニング、フラワーデザインの側からでは、以下のように使っていました。

ガーデン・デザインの側からは、庭のデザインの中に野菜やハーブを組み入れて、食べても美味しいけれど、見ても美しい植物、というコンセプトでエディブル・プランツを使われていました。

フラワーデザインの側からですと、フルーツを竹串に突き刺したものを花材、と見立てて、アレンジしたものをエディブルアレンジメント、と呼ぶことが多かったようです。

フラワー・ファーマー&デザイナーのエリンさんは、「食べても美味しいけど、飾っても美しい」。
フラワーデザインのためにエディブル・プランツ(食用の植物)を育てましょう、ということです。

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(従来のエディブル・ガーデンのイメージ。コールラービーとヴィオラの組み合わせ)

3. エリンさんのエディブル・プランツの使い方は、食べても美味しいけど、飾っても美しい。



エリンさんは、過去にエディブル・プランツを使って、フラワーデザインをした思い出を語っています。
「・有名なシェフのウェディングで、ブーケに人参を入れたり、食べることが大好きな新郎のブートニアにチリ・ペッパーとミニチュアのナスを使ったり、
テーブルにたくさん並んだセンターピースのアレンジメントにチェリートマトの房を添えたり、
ゲストブック(来客の記帳用アルバム)を置いてあるテーブルの周りにラズベリーを枝ごと添えたり、良い香りのするハーブをフラワーデザインに織り込んだり。。。」

「フラワーアレンジメントの中に、どんな花が使われているかを知らない人は、アレンジメントにそんなに関心がないけれど、誰もが知っている食べ物が入って入れば、アレンジメントに親しみを持ってくれるし、誰とでもすぐに会話が始まります」

4. エリンさんのネットショップで売っている、おすすめのエディブル・プランツ

エリンさんがウェブサイトで販売している種子の中から、エディブル・プランツのご紹介。
フラワーデザインの目から見た、お気に入りを見ることにしましょう。
長くなりますので、2回に分けました。
今回は、実なるの野菜とハーブ類、
次回は、エディブル・フラワーとパンプキン
をお届けします。

以下の植物紹介の写真は、すべてエリンさんのウェブサイトのものを使用しています。(All photo credits of the plant varieties below belong to floretflowers.com)

(はじめに 注意点)
(注1)ウェブサイトでの、育て方は、冬は比較的温暖で、夏は涼しめのエリンさんの農場を基準にしていますので、混乱を避けるのと、長くなるためとで、今回は省略しています。
紹介されている多くの植物は、「暑さを好むので、早く植え過ぎないよう、地面が温まるのを待ってから直播き(そうでない場合もあります)、もしくは4週間から8週間前に、室内で種子を蒔いて、苗を植え付けるように」と書かれています。
日本でも使えそうなポイントについては、書き足してあります。

(注2)今回と次回、2回にわたるブログクリップに出てくるエディブル・プランツは、カットフラワー・ファーマーの側から見た使い方です。
収穫時期は、フラワーデザインに使うため、ということを念頭において、読んでください。食べる場合には、農薬の使用に注意してください。

(注3)エアルームという言葉について。エアルーム(Heirloom)は、古くから受け継がれて育てられている固定種(F1ではない)で、その種子を自家採種したものを使っているため、種子の入手先により、若干の差異が出てきます。

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(エリンさんのサイトより。トマトの入ったアレンジメント)

5. 実のなる野菜


(1)エンドウ豆 (Peas)


さやごとでも、豆でも、サラダ、ライス、炒め物、スープに使えるエンドウ豆。
エンドウ豆は、涼しい気候が好きなので、できるだけ早く種子を蒔いて。
しっかりとした支柱を立てること。

フラワーデザイン用の使い方
色が鮮やかな「さや」を枝ごと使います。
ツルがあるので、気をつけて取り扱うこと。
切り花としての寿命は、5〜7日。

おすすめの品種

1. 'Blue Podded Blauwschokkers (ブルー・ポディッド・ブローショッカーズ)'
エアルームのこの品種。さやが緑色ではなく、深い濃い紫色なのが特徴。
食べる場合は、早めに収穫すること。

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2. 'Golden Sweet (ゴールデン・スイート)'
明るい、薄黄緑色のさや。収穫量が多くて、絹さやのようにサラダや炒め物などにも向く品種。

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(2) トマト (Tomatoes)

(アメリカでは)何か1つだけ野菜を育てるなら、トマト、という人も多いはず。
サラダ、トマトソース、そのまま食べても。

フラワーデザイン用の使い方
トマトの房をブーケにそっとしのばせるのは、昔からエリンさんが大好きなアレンジの仕方。
使いやすいのは、小粒のチェリートマトタイプ。
大きなアレンジメントにするなら、中粒くらいがちょうどいい。

収穫
実が、きちんと形になってから収穫。
完全に熟してしまうと、実が落ちるので、完熟になる前に。
葉は、しおれるので、取り除いておく。
実は、4〜5日鑑賞できる。

おすすめの品種

1. 'Currant Red (カーラント・レッド)'
長い枝に甘い実をたくさんつける。収穫期間が長い。

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2. 'Chocolate Cherry (チョコレート・チェリー)'
グリーンの縦縞が入っていて、色が少しずつチョコレート・ブラウンに変わって行く、中粒の種類。

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3. 'Indigo Rose (インディゴ・ローズ)'
食べるのには、あまり向きませんが、アレンジメントとしては抜群。
20〜25cmの長い枝にツヤツヤの黒い実をつけます。実のお尻の部分は、緑色。

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(3) トマティーヨ・食用ホオズキ (Tomatillo)



サルサや苦味のあるグリーンソース、などのメキシカン料理に。そのままでも火を通しても美味しい。
たくさんの実がなる、暑さが大好きな植物。
食用にする場合は、薄い殻(ガクの部分)が割れ始める頃に収穫。

フラワーデザイン用の使い方
実がなったらいつでも使えます。
アレンジとしての寿命は、7日くらい。

おすすめの品種
'Verde (ヴェルデ)'
育てやすくて、実がたくさんつきます。
花が終わってからランタンのような実をつけます。

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6. ハーブ類

ご存知のハーブ類の中で料理に使われるもの。
フラワーデザインに、ハーブの葉と花がテクスチャー(質感)と香りを加えてくれます。

(1) バジル (Basil)

バジル(米語読みは ベイゾー)は、育て方も簡単で、香りも高く、お料理には、ペストソース(バジリコソース)でおなじみ。
品種によって、香り、味もいろいろで、ベーキングやロースト、グリル料理にも使われています。
寒さが苦手な植物なので、十分に暖かくなってから育てること。

収穫
お料理では、茎と葉が柔らかいうちに使いますが、アレンジには、茎が少し硬くなるか、花がつき始める頃に収穫。
1日の中で一番気温が低い時間帯に摘んで、2〜3時間じゅうぶんに水を吸わせておくこと。
アレンジメントには7〜10日持ち、そのまま根っこが生えることもあるくらい。

おすすめの品種

1. 'Aromatto (アロマット)'
すらっとした濃い紫色の茎。つやがあって、プラム色の筋が入った葉。
葉には、リコリス(甘草の一種)とミントの混ざったスパイシーな香り。
アメジスト色の花。
これさえあれば、今までの夏から秋にかけてのブーケとは一味違ったものになります。

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2. 'Cinnamon (シナモン)'
忘れられない、記憶に深く残る香りで、長い間、エリンさんのお気に入り。
チョコレート色の茎、緑の葉、濃い紫色の花。

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(2) ディル (Dill)

ピクルスやビン詰めを作るときの、風味として欠かせない材料。
ディルの葉っぱと、採れたての野菜を酢でマリネして、冷蔵庫で冷やし、ディルの花を飾れば、夏のサイド・ディッシュの出来上がり。

収穫
アレンジに使う時は、花がじゅうぶんに開いて、明るい黄緑色になった頃に収穫。
茎の近くについている、シダみたいな葉っぱは少し取り除いておく。
アレンジの寿命は、10日くらい。

おすすめの品種

'Bouqet (ブケー)'
早く花が咲くタイプ。薄い黄緑色の花をたくさんつけてくれ、夏のブーケ作りにとっても重宝。香りも良くて育てやすい。

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(3) オレガノ (Oregano)

夏に一番使われるオレガノは、ギリシャの、グリーク・オレガノと呼ばれる宿根草。
葉っぱを乾燥させて、ピザ、トマトソース、地中海料理などに。
乾燥させるには、花が咲く直前に摘んで、紙袋に入れ、逆さまにして暖かく、乾燥したところに吊します。
フレッシュな場合は、そのまま、サラダ、パスタ、ライス料理、スープ、ソースに。

フラワーデザイン用の使い方
緑の茎に香りのある白い花、そして緑色のフワフワした種子は、花としても実としても、アレンジメントにもう一味加えてくれます。
ファーマーズ・マーケット用のブーケを作るなら必需品。

おすすめの品種
グリーク・オレガノ(Origanum vulgare : オレーゴナム・ヴルガーリ(r))
改良品種ではない、オレガノとして普通に出回る宿根草。
早く種子を蒔けば、1年目から花が咲きます(たくさんいらないなら苗で求めても)。
ポリネーターたちもこの香りのする花が大好き。

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(4) オーリチ (Orach)

日本では、オーリチ(米語読みでは、オーレ(r)ッチ)、もしくは「ヤマホウレンソウ」と呼ばれるアカザの仲間。
若い葉は、食用に。しばしばホウレンソウが引き合いに出されることがあります。
エリンさんは、友人の野菜畑で知ってからずっとファン。

フラワーデザイン用の使い方
種子ができるまで育てて、真夏に、大きいアレンジメントに使えます。

収穫
シーズン初めに収穫した枝は、一番長持ちします。
摘み取ったらすぐに、熱湯に切り口を7〜10秒浸すのが長持ちさせるコツ。
種子がついている枝の場合は、何もせず、そのまま使います。
アレンジメントの寿命は2週間くらい。

おすすめの品種

1. 'Caramel Apple Mix (キャラメル・アップル・ミックス)'
青リンゴ色、チョコレート色みたいな紅色、の混合。

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2. 'Ruby Gold (ルビー・ゴールド)'
この種子は、「ワイルド・ガーデン・シード」のフランク・モートンさんから分けてもらったもの。
茎の色は、人目をひく光り輝く黄緑色。
花首は、クランベリー色のストライプ入り。
種子は、くすんだローズ色と、日に褪せた苔色が混ざっています。

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(5) シソ (Perilla)

日本の皆さんに説明は必要ないでしょうが、アメリカでは、バジルに似た香りで、アジアの料理に使われる、となっています。主に青じそのことを言っていると思います。

フラワーデザイン用の使い方
真夏から秋にかけて、香りがする葉ものとして選ぶと素晴らしいです。

収穫
葉がしっかり展開して、茎が木質化してから、もしくは、花が見え始める頃までに収穫。
保存剤を加えると、1〜2週間もつ。

おすすめの品種
'Purple Frills (パープル・フリルス)'
いわゆる赤シソですが、エリンさんは、「チョコレートみたいな濃いえび茶色。葉っぱの縁はギザギザで、質感は、ちりめん風でカールしてとても独特」と言っています。

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7. まとめ

いかがですか。
お腹がすいてきましたか?
それともアレンジメントのアイデアが浮かんできましたか?

エディブル・プランツとは、食用に使える植物。野菜は、その一部になります。
他に、ハーブや花なども。
エディブル・プランツの収穫時期を変えたり、品種を色や形などを違う目で見ることで、フラワーデザインの素材としても使えるわけです。

というわけで、エディブル・プランツをフラワーデザインに生かそう、というエリンさんのブログから、使えそうなアイデアと豊富な植物のセレクションをご紹介しました。

前半の今回は、実と葉の野菜とハーブ類をお届けしました。
おなじみのトマト以外に、サヤエンドウ、見た目の美しいハーブの品種など、花束やアレンジメントに使えそうなアイデアがいっぱいです。

次回、後半は、エディブル・フラワーとパンプキンについてお届けします。

最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。

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