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#5 (blog クリップ) ポピー入門:ガーデン、切り花向け、タネから育てる4つのタイプ

こんにちは。
日が長くなるにつれて、花がどんどん開き始めていますね。
お花を見に出かけたくなります。

今回は、ポピーについてです。
ポピー(Poppy)といっても、実は、見た目は似ているのに色々な種類のものがあるんです。
どれが切り花に向くの? 育てやすいのはどれ?案外わかってないものですよね。
種類と用途、育て方が理解できたら、もっと身近に楽しめる素晴らしい植物になるでしょう。

今回は、アメリカワシントン州で切り花の栽培、販売、本の執筆など、幅広く活躍している、フローレット・フラワー・ファーム(Floret Flower Farm)のオーナー、エリン・ベンザケイン (Erin Benzakein)さんのブログの中から、ポピーについてのお話を、コンパクトにまとめてお届けします。

(話を始める前に)

* エリンさんの農場は、アメリカの耐寒性ゾーン8a です。冬には雪が降るし、夏はゾーン8にしては比較的涼しい気候です。育て方は、エリンさんの地域を基準にしています。
日本の気候は、ゾーン7−8に入るところがほとんどですが、夏の蒸し暑さへの配慮が必要です。(アメリカの耐寒性ゾーンについての内容はこちらをご覧ください)

* 以下の2種類のポピーは、この内容に含まれません。
1. 日本で栽培が禁止されているケシ (オピウム・ポピー[Opium poppy: Papaver somniferum]として、アメリカでは明確に区別されています) 
2. オリエンタルポピー(Papever orientle)は宿根草です。

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(↑ 宿根草のオリエンタル・ポピーは、ガーデンのアクセントに使われます。@Fort Tryon Park, NY)

1. アイスランド・ポピー (Iceland Poppies; Papaver nudicale)

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(credit:フローレットファームのカタログの写真。値段は種子1袋分。)

この品種が最も切り花に向く種類です。
花の豪華さ、色合いの豊富さ、切り花としての寿命の長さの観点からもベストです。

難点は、初心者には、育てるのに難しい部分があるかも、ということ。
理由は、種子が細かいので、発芽から定植までの間の栽培に経験が必要ということと、暑さと害虫に弱いこと。

栽培
切り花栽培の場合は、定植の8週間前に、セルトレイ(288カウント)に蒔いて、20℃で管理。ポイントは、あまり長くトレイで育てないこと。遅くとも10週目までには定植(23cm間隔)すること。

収穫のタイミング
蕾のガクが割れて、ほんの少し花の色が見えてきた頃。

水揚げの方法
7〜8秒間、熱湯に切り口を入れるか、トーチで切り口を焼く。
切り花延命剤を使えば、1週間くらい持つ。

2. ブレッドシード・ポピー (Breadseed Poppies; Papaver spp.)

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(フローレットファームのカタログより)

マフィンやベーグル、ケーキなどに使うポピーシードが採れるポピーです。多くの雑多な種類がここに一つにまとめられています。

一番育てやすいのが、このポピーで、ガーデンで育てるにはベストです。
花びらが散った後のポッド(蒴果さくか:seed pod)が愛らしく、そのままフレッシュとして使うなり、ドライにするなり、こちらの用途の方がアレンジメントとしては価値がありそうです。
こぼれ種で毎年育つので、ガーデンにはピッタリ。

たくさんの種子ができるので、小さな封筒に入れて、お友達にプレゼントしても素敵です。

難点は、ナメクジが好むので注意が必要。
切り花にするには、2〜3日と寿命が短いこと。

栽培
移植を嫌うので直播きで。春先に蒔く場合は夏の暑さが来る前に花が終わるよう逆算して、できるだけ早く。

収穫のタイミング
どうしても切り花に使いたい場合は、半分開いた状態で収穫し、切り口を熱湯に7〜10秒つける。

種子を採集するには、シードポッド(蒴果:種子が入っている部分)の色が、緑からやや茶色になった頃、もしくは、シードポッドの蓋見たいなところ少し開きかけた頃。
茶色い紙袋に茎ごといれ、逆さまにして吊るして2、3週間乾かす。
熟してきたら、種子は、自然に袋の中に落ちる。

3. シャーリー・ポピー (Shirley Poppies; Papaver rhoeas)

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(フローレットファームのカタログより)

日本では、ヒナゲシ、虞美人草、シャーレーポピー、という名前でおなじみです。
下の写真のように群植されていることが多いです。

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(↑ シャーリー・ポピー@長居植物園:大阪市)

エリンさんがシャーリー・ポピーで好きなところは、薄い包み紙(ティッシューペーパー)のような美しい花びら、華麗さ。
でも、切り花となると持つのはせいぜい3、4日。
長く飾らなくてもよい、ウエディングのセンターピースやブーケには向いているかもしれません。
アメリカ人女性には、とっても人気です。

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(↑ 昨年、2月に我が家で種子から育ててみた、フローレット・ファームの’アメイジング・グレイ (Amazing Grey)’。種子を蒔くのが遅かったです。日本では秋まきでしたね)

シャーリー・ポピーは、ポピーシード用のポピー(ブレッドシード・ポピー)に次いで育てやすい種類です。
花が終わると、小さなシードポッド(蒴果)ができるので、ドライにしてクラフトに使ったり、ブートニアとしても。
ミツバチが一番好きなポピーの種類で、いつも花の周りにいっぱい飛んでいます。

難点は、霧のように細かい花粉が飛ぶので、アレルギーの人は要注意。
こぼれ種子でどんどん増えて行くので、困る方は、種子が飛び散る前に摘み取ってください。

栽培
移植を嫌うので、直播がオススメ。温室で育てる場合は、根っこを傷めないように気をつけて。

水揚げの方法
熱湯に切り口を7〜10秒つける。それでも寿命が短いのは覚悟の上で。


4. カリフォルニア・ポピー (California Poppies; Eschscholzia californica)

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見た目はポピーのようですが、ポピーではありません。日本では「花菱草(ハナビシソウ)」という名前で親しまれています。

原産地は、アメリカ南部、西部。乾燥に強くて育てやすく(特に南部の暖かいところ)、夏の間、長く楽しめます。
ボーダー花壇のフロントエリアやコンテイナーガーデンに混ぜたり。
切り花にする場合、一つの花はせいぜい3、4日で終わりますが、横にいくつか蕾があって、次々に花が咲くので、1週間くらい楽しめるでしょう。

収穫のタイミング
蕾が色づいた頃。

以上、4種類のポピーについてでした。


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(パッとみただけではわからない。これは、シャーリー・ポピー。’マザー・オブ・パール (Mother of Pearl)'。種子から育ててみました。色が薄いです。)

読者からのコメント

エリンさんのブログ下のコメント欄には、質問や体験談が寄せられていて、その多くは「私のゾーンでは、どうすればいいの」といったものです。暑いところ、寒いところ、地域によってかなり差があるので、当然の質問でしょう。

いくつか役に立ちそうなコメントをご紹介します。

* ナメクジ対策として、「植物の周りに砂を撒くとザラザラした表面が嫌いなナメクジは寄ってきません。砂はその後、土に混ぜるだけ」。おそらく若干粒の大きいシャープなエッジの砂(砂利?)だと思います。

* テキサスに住む方(おそらくゾーン8)は、「秋に細かい砂を種子に混ぜて(いい考えですね)、直播きする。どうしても撒きすぎてしまうのですが、間引いた方がいいの?」(場合によって、ですね)。

 「ブーケ用のポピーを直播きする時、一直線に溝を掘って種子を蒔くと作業が楽」、というアドバイスもありました。

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まとめ

「ポピー」と一言でくくれない種類の豊富さ。
最近は品種の名前で呼ぶことが多いので、その品種がどのポピーのタイプかを知ることが大切な手がかりとなりそうです。
切り花には、アイスランド・ポピー、ガーデンにはブレッドシード・ポピーとシャーリー・ポピー(ヒナゲシ)が良さそうです。
でも、アイスランド・ポピーは暑さに弱いので秋から育てる方がよいでしょう。という部分が初心者にはハードルが一つ高い、ということでしょうか。

ポピーの美しさ、再発見ですね。


最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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