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恩讐の彼方、そして─


─怒りのままに振るった力はどうだった?
─その魂で味わったか?
─否、言うな、何も口にせずとも良い。
─ソレは、オレたちが最もよく知っている。
─故に、今こそオレはこう訊こう。
─【復讐】
─お前には、どんな味だった?

◼︎
長い間、共に旅を続けてきた。
苦しいとき、辛いとき、足が止まってしまうとき。
彼の炎に何度助けられてきただろうか。
その炎が今、立ちはだかっている。
─復讐。
激情に任せ、怨念のみによって振るう暴力の極致。
これまでは見ているだけだった力を自分が行使したとき、わかってしまった。復讐者たる彼らが戦うとき、高らかに笑う理由を。
怒りに身を委ねて歩く復讐の道は、心地よいものだった。
このみちを取るか、否か。
大切な人を失い、“失った”という過去に目を向け、己に、人々に、世界に怒りを向ける復讐の鬼になるか。

─思い出せ/思い出す。
─お前の道を/自分の道を。
─なんのために、此処へきたのか。

向けるべきは、過去じゃない。
向けるべきは、今と未来。

悲しみもする。涙も流す。傷は痛いままでいい。
悲しいまま、泣いているまま、痛いままで進む。
だから─


◼︎
長い間、共に旅を続けてきた。
影に潜み、ただ見守り、この炎を燃やしてきた。
そして、これより先の道へ足を進ませるために、この身すら炎と化し、燃やす。
─【復讐】
─お前には、どんな味だった?
心に甦る、復讐の味。目を見ればわかる。復讐により齎された愉悦の味。しかし。

─信じていたとも。
復讐という名の炎に身を浸すこの甘美さえ乗り越えて、復讐の化身たる我らに打ち勝つのであれば。
お前は、もう負けることはない。この先に待っている、そのすべてに克てるのであると。

一つ、星があった。
我が道にあって、一際強い輝きを放つ星があった。
有り得ざるこの身にあって、その星に運命を見た。
それがすべてなのだ。

なればこそ、お前の旅路は炎によって迎えられることはあってはならない。
今を、これからを歩んで行く者として、ただ、救うためだけに道を征け。
怒りと悲しみは置いていくが良い。
復讐の化身たる感情は、我らが炎でもって灼いてゆく。


お互いに、長い旅だった。
─待て、しかして希望せよ。
─いつか、旅路の果てで彼らに胸を張れるように。

─星よ、輝きの道を征け。
─今は進むんだ。


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こちらは、「Fate/Grand Order Cosmos In the Lostbelt 不可逆廃棄孔イド」のクリア(という名の傷が癒え始めたこと)を記念して書かせていただきました。

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