希望
結婚が決まるまでは、お互いのことしか見ておらず、どんな交友関係があるのかも知らなかった。
結婚が決まってから、結婚式の段取りを進めるにつれて、現実的な手続きに追われるようになり、そこで初めて、彼を実際に取り巻いている人生を目の当たりにした。
私よりも仲が良い女友達がいた。
私のことを紹介しているみたいだが、彼らの盛り上がる様子を前に、だんだんと自分は、ひとりぼっちに思えてきた。
私を仲間に入れようとしている優しい気遣いが、余計に私を哀しくさせた。
私も同じように笑ったり、同じように楽しそうにしたり、頑張って自分を取り繕った。
来客の男性が、私達に嬉々とした様子で、話しかけてきた。
彼らが話している中、私は休もうと、会場の外を出たら、待合室の椅子に座っている母を見つけた。
母は、足元に沢山の手荷物を置いていた。
お米や、料理酒の瓶まであった。
飛行機の長時間の旅だけでも骨が折れるのに、そこから休む暇もなく、ここまで全く見知らぬ土地を、こんなに重たい荷物を抱えて、たった一人で歩いてきた。
小綺麗な小さい会場に入ってもらって、母は生き生きとして、希望に充ちた声で「嬉しい」と言った。