蜂の子が、部屋でうずくまっていた。

窓から入ってきて、出れなくなってしまったんだろう。
そっと包んで、ベランダの植木の上に置いた。

風にさらされて、寒そうに見えたので、段ボール箱の中に植木を置いた。
小さく動いてはいるものの、やはり寒そうに見えるので、葉の下に隠れるように咲いている花に蜂の子を乗せた。

さっきよりも動くようになった。
柔らかい花弁の上で、触角をたくさん動かして蜜を吸っているように見えた。

元気が出てきたように見えて、嬉しくなった。

じっと見守っていた。

愛は、死んでいなかった。

翌朝、真っ先に蜂の子を見に行くと、見当たらなかった。
植木を注意深く確認した。
向日葵の茎に、白くて柔らかいふさふさした生毛が生えていた。
ここで休めて気持ち良かっただろうと嬉しくなった。

朝陽と共に、勢いよく飛んで行った蜂の子が、奇跡を見せてくれた。