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ハッピーエンドを信じている

 目を覚ますと相も変わらず腹筋が筋肉痛で痛かった。これで六日目である。いい加減これが本当に筋肉痛なのかどうか怪しくなってきたが、普段の運動不足がたたりすぎていると言われるともうそうだね。とうなずくしかない。

 Twitterを開くのに期待はしなかった。この二カ月半公式のアカウントは動いていない。もっと言えばRT以外のツイートがあったのは六月の前半が最後で、実に四カ月近く音沙汰がなかったことになる。

 そんなわけで何も期待はしていなかったし、だから前日も早々に布団に入った。なにせ腹筋が痛かったし。ところがTwitterを開けば、たくさんのファンのお祝いツイートがタイムラインを埋め尽くしていて私はびっくりして真顔になった。こういうとき、にやけるものかと思ったらそうじゃないらしい。嬉しいと真顔になるもんなんだね。

 真顔のままタイムラインをさかのぼれば公式のツイートが顔を出す。それはメンバーの手描きのメッセージカードで、相変わらずメンバーの写真とか動画とか、そういうもんじゃなかったけど、私たちにとっては実に四カ月ぶりの公式アカウントからの供給なのであった。

 そんなわけで、私が応援しているK-popグループTOZが今日デビュー一周年を迎えた。


 この一年でいろんなことがあったと思う。それは他のグループに比べればずいぶんすくない「いろんなこと」なのだろうけれど、私たちにとっては十分すぎるくらい大切な「いろんなこと」だった。

 豊洲でのデビューショーケース。二週間前に発表になっててんやわんやでチケットを取った。暗転した舞台に四人が緊張した足取りで姿を現したときのことは今も網膜に焼き付いている。一曲踊り終わったあとスタッフさんに誘導されながら舞台袖に捌けていったぴよぴよのひよこちゃんたちのことも。アントニーは緊張したように背筋をしゃんと伸ばしていて、その隣にふにゃふにゃのハルトとぽわぽわのタクトがいて、一番緊張していなさそうに見えたユウトも始まる前にちょっと泣いていたのだとメンバーが言っていた。生まれたてのアイドル四人はふわふわの赤ちゃんみたいだったけど、踊りだすと会場中を熱狂させるスターだった。

 2023年9月27日、デビュー。ミニアルバムFLAREのリリース。TOZ初めてのMV、Magic Hour。あざやかで、だけどどこかノスタルジックでもある映像にTOZのやんちゃでさわやかな魅力が掛け合わさって最高のMVだった。ちなみに私はCHIPSという曲に憑りつかれてこのころCHIPSの話しかしなくなった。どの曲も最高にいいけれど、CHIPSのキャッチーさは群を抜いていると今でも思っている。この曲のパフォーマンス動画がYouTubeに上がっていないのは遺憾でならない。

 初めてのペンサ会。ヨントン。日本デビューなのにアルバムは韓国で発売だしペンサ会も韓国で開催だし、日本デビューってもしかして「日本(で)デビュー(ショーケースをする)」の略だったのかも……という疑念が生まれ始めたタイミング。それでも猛者たちが次々に渡韓を決め、TOZにたくさんの愛を届けてくれるのを私は日本から見ていた。私は病気があって推しと対面イベでお話しできるのはまだまだ先のことになりそうだから、重いカメラや撮影用小道具を抱えて渡韓したファンたちの雄姿に感謝してもしきれない。

 TOPAZ、というファンネームをもらった。宝石はきみたちのほうなのに、私たちがTOPAZなんてくすぐったくて、だけどTOZにTOPAZと呼ばれると胸の奥があったかくなった。

 一か月後のファンミーティング。二度目の公演でメンバーたちもすこしはこなれて来るかと思えばそんなことはなく、謎ゲームコーナー「六何の原則」でユウトをのぞく三人がふにゃふにゃになり、エンディングメントではそのユウトももれなくふにゃふにゃになり、TOZのTってとろけちゃうのTだったのかも……とTOPAZの口角がオリ劇の天井を突き破る公演となった。しかし生歌も、カル群舞も、ショケのときからさらに進化していて、その成長の速さに驚きを禁じ得なかったり。あとCHIPSのダンスがここで初披露になってあまりの良さに私はすべての記憶を失った。

 有志が企画してくれたイヤモニのプレゼントのクラファンにも参加した。雀の涙みたいな金額だったけど。TOZに目に見える形で愛を届けたかったのが半分、企画してくれたTOPAZにすこしでも協力したかったのが半分。出来上がったイヤモニのデザインは素敵で、それが彼らの耳に飾られているところを想像して胸が沸き立った。

 そのころはしばらく供給のない時期が続いたけど、冬をTOPAZみんなで協力しながら越した。2024年の春には韓国デビューが決まって突然のお祭り。日々更新されるコンセプトフォトにみんな目をバキバキにしながら沸いて、私はCHIPSの韓国語版がリリースされることを信じながら毎日過ごした。結果CHIPSの韓国語版は曲目になかったけれど、その代わりミニアルバムの五曲すべてが新曲だった。

 そしてやってきた5月2日。タイトル曲NU SHOUESを引っ提げて、TOZ初めての音楽番組、初めてのエムカ出演。私はやっぱり韓国には行けなかったけれど、YouTubeに上がったエムカの動画にはTOPAZの掛け声がしっかり入っていてどれだけ心強かったか。私も日本からできることをしたくて、投票して、DACKADでポイントを集めて、ミュスしまくって、初めてスミンもした。投票のリマインドをしてくれたTOPAZ、スミンについて詳しく教えてくれたTOPAZにもBIG感謝が止まらない。みんなで戦った一か月だった。

 なかなか増えない再生回数にやきもきすることもあったけれど、日々の音楽番組やチッケムを見ているとそんな不安は吹き飛んだ。私の推しハルトはいつもファンサを欠かさなくて、やりすぎて振付に遅れそうになっているところがばっちりチッケムに映っていたりして。でも踊り出したらやっぱり完璧でキレキレで、もうそういうのを見るだけで投票もミュスもスミンも頑張れちゃうのだ。それからほかのグループとのTikTok。ヨジャを踊るハルトはやっぱりいっとう楽しそうでそれが嬉しかったり、ボイプラ同期のTIOTとのコラボに騒いだり。

 私は別の用事があって、川崎でのファンコンサートには行けなかった。けれどTLに流れてきたレポでTOPAZからのサプライズ動画があったことや、その直後に披露されたUNIVERSEがすさまじかったことを知った。UNIVERSEの歌詞はとても象徴的だ。暗い夜を宇宙になぞらえ、夜の中からも果てしなく輝かしい銀河が広がることを歌っている。今、彼らは多分まだ夜の中にいるんだろうな、と思った。彼らが本当に目指したい銀河、辿り着きたい昼はもうすこし遠いところにあって、みんなそれを目指して走っている。そんな気がした。

 6月1日にはTOZ初めての合同イベントがなんと幕張メッセのイベントホールで開催された。残念ながら満員の客席、とはいかなかったけれど、今までにない広い会場で、たくさんの人の前でパフォーマンスするTOZはきらきら輝いて遠くの星のようだった。目指した銀河にきっと彼らはすこしずつ近づいているのだと思った。だけどONE PACTのヒョンたちと並ぶと途端に全員弟スイッチが入って、あのぽやぽやなひよこちゃんたちになるのだ。かわいい。世界で一番かわいい子たち。

 それから供給はまた途絶えて、今に至る。

 いろんなことがあったよね。ほかのグループに比べると供給はすくなかっただろう。会える機会もすくなかったのかもしれない。だけれど私にとってはどれをとっても大切な思い出で、そのひとつひとつが明日を信じる原動力だ。

 TOZの未来がどうなるのかは残念ながら誰にもわからない。だけれど私には待つことと、信じることしかできないから、今日もただ信じてみる。私たちの未来がハッピーエンドだと。Happily ever afterで彼らが約束してくれたように。


 私事だが、私も明日またひとつ歳を重ねる。9月27日という日は、私にとって一年の終わりで始まりだ。この一年、変わりたかったようには私は変われなかった。一方で変わったこともある。生身の推しに対して、以前のような熱量で向き合えなくなったのはそのひとつだ。

 だけれども、それでも相変わらず私にとってTOZは大切で、特別で、大好きな存在だ。たぶんそれはこの先、よっぽどのことがないと変わらないと思う。ずっとTOZを応援していたい。

 TOZ、デビュー一周年おめでとう! きみたちの輝かしい未来を信じています。そしていつかCHIPSのパフォーマンス動画が公式で公開されることも。

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