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世界一幸せなベレー帽のこと

 世界一大切なものは家族と友人だが、第二位に帽子がランクインする。

 物欲が基本的に薄い私が自分からお金を出してもほしいと思うのはネイルと帽子と推しのCDだけで、頭がアホになっていたときはなんか気が付けば1ヶ月に6個くらい帽子を買っていた。私用で出かけるときは必ず帽子を被る。むしろ帽子を中心にファッションを組み立てる。

 持っている帽子の数は、数えるのが面倒なので数えないけれど多分20個くらい。一番好きなのはキャスケットだ。しかし持っているキャスケットの数は4個だけ。

 私が一番たくさん持っている帽子はベレー帽で、これは7個ある。ベージュのフェルトアーミー、黒のフェルトバスク、黒のフェイクレザー。それからブルーグレーのサーモ、ピンクのサーモ、オリーブのキャンパスエスカルゴ、麦わら。どれもお気に入りで、大切に被っている。私は、私に被ってもらえるベレー帽のことを幸せなやつだな〜と思っていたりする。

 さて、そんなふうにベレー帽を後生大事にコレクションしている私だが、私に被ってもらうよりもはるかに幸せなベレー帽というのが存在する。もうそれは、比較にもならないというか比較という概念そのものが吹き飛んでしまうというか、とにかくそのベレー帽を前にすると私は私のベレー帽のことが可哀想になってくるくらいである。

 それこそが、TOZのタクトに被ってもらえるベレー帽である。

 タクトと言えばトヨナガタクト♪トヨナガタクト♪で一世を風靡したあのタクトだが、ちょうど半年前にボーイズグループTOZとしてデビューして現在アイドルとして活動中である(TOZハーフアニバーサリーおめでとうございます!)。

 見よ。このタクトとベレー帽を。ミトラを被った司教より神々しく、冠を戴く皇帝より輝く。似合うという言葉では片付けられない。ベレー帽を被って生まれてきたに違いないのである。まさに三位一体。タクト、ベレー帽、あとひとつは……ひとつは……何?

 まあいい。ともかくタクトとベレー帽はビールと餃子のようにベストマッチ……いやこの例えはかわいくないのでやっぱナシ。テイク2。タクトとベレー帽はハローキティとリボンのようにベストマッチ、相思相愛の関係なのである。


 まずはこれをみてほしい。

 カジュアルなデニムの衣装にベレー帽がプラスされることで顔のやわらかさや可愛らしさが引き出されている例だが、注目したいのがこのベレーの色だ。

 ピンクのベレーはとにかく雰囲気が甘くなる。そのためファッションに取り入れるのはむずかしい。甘さに顔が負けるからだ。しかし素材や形によっては甘くなりすぎずに着こなせるし、前髪を上げて帽子の中に入れれば男性でもスタイリッシュに被ることができる。

 そこでタクトを見てみよう。

 甘くなるならとことん甘くしてやるわとばかりのスタイリングだ。やわらかい印象のウール。まるいフォルムのバスクベレー。前髪は下ろしている。プリティ×ラブリー×キューティの三重奏。メープルシロップをたっぷりかけたバニラアイス添えパンケーキよりも甘いスタイリングだと言える。

 しかし、それが似合うのである。ベレー帽の甘さに顔が負けていない。タクトが被ることで、ピンクのウールバスクベレーが本来の魅力を十全に発揮しているのだ。ほかの人が被るとこうはいかない。

 つまり、タクトに被ってもらえるベレー帽は世界一幸せなのだ。


 ピンクだけではない。タクトはさまざまなベレー帽を被りこなす。

 クラシカルなグレンチェックのベレーを被ればあどけない魅力で見るものをめろめろにする。

 黒のアーミーベレーを被ればころんとしたシルエットが天才的な顔と相まってなんともかわいらしい。サイズ調整用のひもをリボンのように垂らしているのもまた一層キュートである。

 ネイビーのベレーはクールさが売りだが、これは素材がファーでフェミニンな印象もある。そのやわらかさがタクトと非常にマッチしており、ぬいぐるみとみまごう愛らしさである。

 このように、タクトは非常にベレーが似合うのである。


 タクトは2007年生まれ。これからめきめき成長し、身長も伸び、顔つきも変わるだろう。そうしてきっと誰もが認めるサンナムジャ(男の中の男)になる。

 しかし、そうなってもベレー帽は被っていてほしい。

 これは私のために言っているのでも、全国の10億人のファンのために言っているのでもない。ベレー帽のために言っているのだ。タクトにかぶってもらえるベレー帽は世界一幸せなのである。どのベレー帽も生まれ落ちた瞬間から誰に被ってもらえるだろうかとわくわくしながら出荷される。願わくばあのタクトに被ってもらえないだろうか。そう思っているはずだ。それなのにタクトがベレーを被らなくなったらどうだ。全ベレー帽が悲嘆にくれるのである。これは言わばアスリートからオリンピックを奪うようなものなのである。

 私はベレー帽を愛し、庇護する一人として、タクトにはこれからもベレー帽をかぶり続けてほしいと思う。180越えの巨漢になろうと、ウルトラマンくらいデッカくなろうと、パシフィックオーシャンひとっとびできる体躯の持ち主になろうと、やはりベレーは被っていてほしいのだ。

 これは何もタクトにかわいいコンセプトだけで戦えと言っているわけではない。ベレー帽はかわいいだけではないのである。そもそも軍帽として採用されているくらいなのだから、ベレー帽=かわいいという価値観はものごとの側面しか見ていないと言わざるを得ない。

 ベレー帽はスタイリングによってかわいくもかっこよくも、カジュアルにもきれいめにも、ストリートにもトラッドにもその他何にでもなる。万能アイテムなのだ。タクトはきっとこれから、あらゆるコンセプトでベレーを被りこなしてくれることだろう。

 そしてベレー帽が世界一似合うアイドルとして再び大バズりし、TOZの新曲はビルボードで一位を取るに違いない。

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