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花少々と星三つ

 第一印象は、きれいな人だな、だったと思う。それはたぶん、単なる外見の話だけじゃなくて内からにじみ出る彼女の強さやひたむきさも込みでの話だ。

 ミスサークルコンテストに出場している前田瑞紀ちゃんのことだ。今日は彼女の話をしたいと思う。

 彼女をはじめて見たのは、その実ミスサーが始まる以前のことだった。狭いスタジオを繰り返し横断しながら踊る動画や、自分の名前が書かれた紙を上下逆に持って大輪の笑顔を咲かせているお誕生日の写真を見て、私は彼女を一気に好きになった。明るくて、いつも全力な彼女の姿が些細な日常の投稿からたしかに感じられた。

 瑞紀ちゃんがミスサーにエントリーして、彼女を本格的に応援する日々が始まってから、この感情はより強固なものになっていった。アナウンサーになる夢を叶えるためにまっすぐ努力する彼女はとても眩しかった。真面目に配信の企画を考えたり、最後に必ずニュースの原稿を読み上げたり、活舌の練習をしたり。リスナーから寄せられるアドバイスにときおり顔を険しくしながらも、すぐに笑顔に戻って真摯に受けとめる姿からは、彼女の脆さと強さ、それに真面目さが見え隠れした。

 彼女が明るいだけじゃないというのは応援をする中で早い段階から気づいていた。傷ついたり、不安を抱えたり、自己嫌悪したり、抱えきれない負の感情を彼女も持っていて、ときどきはそれにさいなまれながら苦しんでいる。それでも、涙よりは笑顔を見せようとする、そして人を泣かせるよりは笑わせようとする彼女の根底は、とても優しくて強いものだった。

 眩しかった。私と彼女はそんなに歳が離れていない。だから私にないものをたくさん持っている彼女がうらやましかったし、憧れたし、絶対に夢を叶えてほしいと思った。

 ファンのことをよく覚えていて、いつも丁寧なコメントをくれる。ストイックなダイエッターで筋トレ配信だってする。苦手だったスペイン語に真剣に取り組んでリベンジする。味のある絵を描くことを逆手にとって配信上の企画に変えてしまう。フラフープを回しながら歌うという珍妙なことを器用にやってのける。好きなところはたくさんあるけれど、一番眩しいと思うのはやっぱり、彼女の夢に対するひたむきさだ。

 最初のほうの配信で、「夢を追う人ってきらきらしてる」といった趣旨のコメントに彼女が他人事のように「ね! 私も夢を追ってる人ってすごく素敵だと思います。オーディション番組とか大好き」と返していたのを覚えている。きらきらしているのはあなただよと言いたかった。夢を追って、努力して、行動を起こして、傷つきながらがむしゃらに進んでいる瑞紀ちゃんはとてもきらきらしている。

 一度アナウンサーになるのをあきらめた、と彼女は言った。一度あきらめた夢をもう一度胸の真ん中に据えるのは難しい、と私は思う。夢を見ている間私たちは特別だ。だけれど夢をあきらめて現実を見た途端、私たちは普通の人間に戻ってしまう。努力することを忘れ、行動を起こすことを忘れ、無機質な日常に染まってしまう。それをもう一度、私はやれる、やらなくちゃと自らに言い聞かせるのは、自分に魔法をかけるのとおんなじくらい難しいことだ。私はそう思う。

 だからそれをやってのけた瑞紀ちゃんの情熱は、いっとうきらきら輝いている。

 花少々と星三つ、月に輝く粉雪小雪。それだけあれば夢は作れると言った人がいた。彼女の夢は今のところフラフープと絵しりとり、メイド姿のHOT LIMITからできていて、それはいかにも不可思議で混沌としている。だけれど彼女がそうして編み上げた夢は、やっぱり私には花や星と同じくらいうつくしく思えるのだ。


 瑞紀ちゃん、セミファイナルお疲れさまでした。あまりお力になれずごめんなさい。必ずファイナルへ行けると信じています。


 

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