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Meat Beat Manifesto & Merzbow『Extinct』

老舗インダストリアル・レーベルCold Springから日本が世界に誇る電子音楽家/ノイズミュージシャン秋田昌美ことMerzbowと、ブレイクビーツの魔術師Jack DangersことMeat Beat Manifestoによるコラボレーション作『Extinct』が4月末に発売された。

「¡FLAKKA!」「Burner」という長尺の2曲で構成されており、これらの曲は2023年11月から2024年1月に掛けて作られたものだという。「¡FLAKKA!」はJack Dangersのファンクネスが乱舞するブロークン・ビーツとMerzbowのグルービーなノイズが20分間ノンストップで絡み合いながら生き物のように変化していき、ある生命体の誕生から終末までが描かれているような壮大な曲に聴こえる。生物系ドキュメンタリーを見ているような考え深いものがあり、ブレイクビーツの無限の可能性が感じられる素晴らしい曲だ。

「Burner」は空間すべてをノイズで埋め尽くすような圧迫感のある曲でMerzbowのテイストが強い。前半は認識できるギリギリのレベルまで歪ませられ機械的にループするビートに表現力の高いノイズが被さって進行しており、ビートとノイズの役割が入違っているように聴こえる。後半から両者のインダストリアル色が強くなっていく展開も興奮させてくれるポイントだ。

Jack Dangersのコラージュ/インダストリアル・ファンクな側面が久々に表れていて昔からのファンは特に楽しめるだろう。Merzbowのようにノイズをコントロールし、アイディアが詰まった多くの引き出しを持っている人物はそう多くはおらず、改めてMerzbowの凄さが感じられた。

Meat Beat ManifestoとMerzbowの関係は古く、2002年に発表されたMerzbowのアルバム『Merzbeat』に「Merzbow's Amlux Remixed By Jack Dangers (2nd Version)」が収録され(『Ikebana: Merzbow's Amlux Rebuilt, Reused And Recycled』に収録されている「Available Memory」は同曲)、2003年に発表されたMeat Beat Manifesto『Storm The Studio』のリミックス盤『Storm The Studio R​.​M​.​X​.​S.』に「God O.D. - Parts 2 (Merzbow Mix)」が収録されていた。
両者ともに音のテクスチャーが似ている部分があり、リミックスにおいてもお互いの核となる部分が共鳴しあった良曲を生み出せている。

NEO SHIBUYA TVによるMythという企画にて渋谷の街頭ビジョンにMerzbowが登場するという事件も記憶に新しく、ここ数年はVaporwave界隈との邂逅、BLACK SMOKERからのMix CDリリース、KAVARIのFact MixにMerzbowの曲が使われ、RAでのインタビュー記事などを通じてダンスミュージック・シーンからもMerzbowが絶大なリスペクトをされているのが分かった。

『Extinct』はMerzbowがノイズミュージックにおいて非常に稀なアーティストであり、他とは違った視点でノイズミュージックを作り続けているのを証明したと思う。Merzbowの特殊性を引き出したJack Dangersの手腕とビジョンがあってこそ成立した企画であり、今作を発表したCold Springにも同等のリスペクトをおくりたい。『Extinct』はビートとノイズの関係性と可能性を追求し、ビートとノイズの存在を再定義した2020年代を代表する名盤となった。


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