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UKハードコアとジャングル

今年2月29日にOblivion UndergroundからリリースされたThe DJ Producerの復帰作『Metaphysical EP』はUKハードコア・ファンの期待に完璧に応えてくれた素晴らしい作品であり、The DJ Producerが真の意味でUKハードコアのパイオニアであることを証明してくれた。
昨年、The DJ Producerは脳卒中となってしまい一時期は危険な状態にあったというが、治療期間を経て少しづつ現場でのDJプレイを復帰され、遂に『Metaphysical EP』のリリースにまで至った。

『Metaphysical EP』には様々なダンスミュージックの要素が細かく散らばりながら強く結びついたUKハードコアの本質が溢れている。UKハードコアを形成するコアなパートには、ブレイクビーツ・ハードコアとそこから派生したジャングルの要素も大きなパートとしてあり『Metaphysical EP』の中でも、低域への配慮やエフェクト処理などにジャングルとの繋がりを見出せる部分があった。

昨年11月にThe Teknoistはジャングル・レーベルOUR FUCKING JUNGLEを再始動させ、Smylaとのスプリット・シングルを発表。スカルステップ~ブレイクコア~ハード・ドラムンベースをジャングルとミックスさせた狂暴な曲を披露しており、彼等周辺で展開されていたジャングルコアを思い起こさせる内容であった。
OUR FUCKING JUNGLEからはThe DJ Producerのジャングル・トラックもリリースされており、UKハードコアとジャングルの繋がりを具現化させている。

同じく昨年、Hellfishのブレイクビーツ・ハードコア/ジャングル・プロジェクトSecret SquirrelはKniteforceから12"レコード『Wickford Badboy』をリリースし、同レーベルからリリースされたDMSの『The Remixes EP』にRay Keith、Altern 8と共に参加していた。
Secret Squirrelは90年代中頃からブレイクビーツ・ハードコア~ジャングル~ハッピーハードコアのレコードをリリースしており、2010年代後半から突如活動を再開。『Nut Mode Overdrive』といったジャングル・ヘッズも納得させる素晴らしいレコードをリリースしている。

OUR FUCKING JUNGLEはブレイクコアやドラムンベース寄りのアグレッシブなジャングルにフォーカスを当てており、Secret Squirreはブレイクビーツ・ハードコアに根差したジャングルをクリエイトしている。どちらもハイスピードでハードなジャングル・トラックなので、UKハードコアとジャングル双方のセットに織り込んでも機能するだろう。

ここからはUKハードコア/ハードコア・テクノ・ファンにオススメなジャングルを紹介したい。

過去にThe DJ ProducerとのユニットThe Coalitionとしても活動していたX-E-Dosのシングル/EPをリリースしているGhetto Dub RecordingsはUKハードコア・シーンとの繋がりが強く、UKハードコアと同じ音楽背景を持った作品を展開している。ドラムンベースとジャングルのハイブリッド・トラックも多数リリースしており、イギリスのアンダーグラウンドなレイヴ・シーンで必要とされているものが凝縮された良作を多数発表している。

つい先日、15周年を迎えたJungle Syndicate Recordingsは初期からブレイクコア~UKハードコアとジャングルの融合を目指したパーティーとリリースを行っている。15周年記念パーティーにはSully、Tim Reaper、Dwarde、Equinoxといったジャングル勢にFish & Rice(Hellfish & Akira)、The Teknoist、Dataklysmなどが出演していた。
2017年にMURDER CHANNELのテイクオーバーをJungle Syndicateのサブフロアでやらせて貰ったのだが、ジャングルとハードコア~ブレイクコアが非常に理想的な形で混ざり合っていて刺激を受けた。Jungle Syndicate RecordingsのカタログはUKハードコアやハードコア・ドラムンベースのファンやDJにも愛されるはずである。

ハードコア・ジャングル~ラガ・ジャングルをアップデートさせ続けているAlgorithmicはThe Teknoistのレーベルからリリースしているだけあって、UKハードコアとの相性が良い。ラガコア的な側面も感じられるが、UKジャングルのマナーに重きを置いたジャングル・トラックを披露しており、FFFと同じ方向性を追求しているようだ。

他にも、ダークコア界の重鎮Celsiusによるジャングル・トラックを収録した『Fire On Wax』シリーズやDev/Nullによるブレイクコア~フリージャズの背景も随所で感じさせるレフトフィールドなジャングルもハードコア・ファンには受け入れられると思う。

逆のパターンでジャングル・ファンに聴いて欲しいハードコア・トラックも少し紹介しておきたい。

2002年にDeathchantからリリースされたHellfish & The DJ Producerの「Theme From Fuck Daddy」はジャングルのフィーリングを感じさせるハイブリッドなトラックであり、Aphex Twinがヘヴィープレイしたことで彼等の存在を広範囲に知らしめた重要な曲である。2012年にリリースされた『Theme From Fuck Daddy(The Remixes)』に収録されているHellfishのセルフ・リミックスは原曲よりもジャングル要素が増していて、ジャングル~ハードコアを繋ぐような曲になっている。

2013年にThe DJ Producerがリリースした「Ease Up Selector」は、ハードコア・ドラムンベース~クロスブリード寄りの構成になっているが、ダビーなエフェクトからはジャングルの要素が強く表れている。

UKハードコア周辺を掘り下げて行けば更にジャングルとハードコアのハイブリッドや、どちらのジャンルにも好まれるユニークな曲を見つけ出すことができるはずだ。興味が沸いた方は是非探してみて欲しい。
























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