Outer Wildsのはなし⑫「創造的人生の持ち時間」
注意:”Outer Wilds”未プレイの方へ
前回⑪の続きです。
一週間にわたる長いようで短い冒険もいよいよ終盤。
3度目の量子の月
前回「量子もつれの法則」を知らなかったばかりに逃げ帰った量子の月へリベンジに。湖底の洞窟で法則を学んだ時に、ここの祭壇で何をしなくてはいけないのかはなんとなく分かっていたけれど、何が起こるのかまでは分かっていなかった。まさか量子の月ごと別の惑星付近にワープするとは…なんともダイナミック。この22分間に天体観測してるHeartianがいなくてよかったね。chartがドンドコ叩いてるタイミングで良かった。
ワープを繰り返して少しずつ北極に向かい、ついに北極に祭壇の塔を出現させることに成功。そこでさらに「量子もつれの法則」を根気よく発動させて…ついに第6の場所、宇宙の眼へ!
初めて来たときは、宇宙の眼と量子の月の関係もよく分かってなかったし、ここから第6の場所である宇宙の眼の本体に行けるのかも分からず、ただただドキドキしていた。
そして遠くの方に見えてくる小さい人影…
初めて見たとき、絶対足が止まりますよね。まさか生きているnomaiがいるとは思いもしていなかった。この先、何が起こるのかまったく予想ができない未知との遭遇。私はあなた達を知っているけれど、きっとあなたは私を知らない…。
コミュニケーションがとれるのか?もしバトルになったらどうしよう。リトルスカウトをぶつけるくらいしか…。
4つ目と3つ目で見つめあったまま恐る恐る近づくと…「話しかける Solanum」 と出た。solanum!知ってる人!
話しかけてみると「あなたは誰?」という選択肢。ついさっき「話しかける Solanum」って名前が出てましたけど。主人公のHUDともまた違う、プレイヤーにしか見えない表示だったのか。…いや、たとえ名前が分かっていたとしてもあえて「あなたは誰?」って聞くこともあるな。一方的にこちらが名前を知っている状況って、相手にとってはちょっと気味が悪いってこともあるし。たしかに「あなたは誰?」で正解かも。そんなこと今はどうでもいい。
尋ねるとSolanumさんは、何やら杖を使ってグラフィカルな石を生成し、こちらとコミュニケーションをとり始めてくれた。即興で書いたにしては絵がうまい。そして文章がとても冷静。こっちのテンションどうしてくれんの。
Solanumさんと話していると、これまで一方的にnomaiに思いを馳せて旅をしてきた反動もあり、愛しさが混み上げてきた。
「この出会いは特別だって感じてる。私があなたのことを友達だと思っても、気を悪くしないでほしい。」
うっ…Solanumさん…そんなことを言われたら泣いてしまう。
ひよっこくんもさぁ…もうちょっと積極的にコミュニケーション取ろうぜ。ジェスチャーは通じないかもしれないけど、翻訳機作るぐらいなんだし、カタコトでもnomai文字を書いてみるとかさぁ。何ループか使って「こんにちは」、「ありがとう」くらいは書けるようにしてまた会いに行こうよ。
主人公が翻訳機でnomai文字を読めていることはSolanumさんには伝わっているようなので、多少は何か通じ合えたのだろうけど…。一緒にツーショット写真撮るくらいしかできないのはとても寂しい。
そういえば他のHeartianも基本的には目線をこちらに向けるくらいで、久しぶりにあったVenturesの先輩たちも握手はおろか、会釈もしないな…。寝っ転がったまま空見て笛吹いてるやつまでいる始末だし。
そんなこんなでなにか大きな情報を新たに得られたわけではないけれど、とても満たされた気持ちで量子の月を後にした。
灰の双子星
いよいよ最後の惑星探索。英語ではAsh Twin。
遺骨、なきがらでちょっとドキッとした。まぁnomaiさんはそんなつもりで名前は付けていないだろうけど…。以前の記事でも書いた通り、単純な灰色というより、「燃え尽きた灰」がサラサラ散っていっているイメージかな。遺骨という意味も、火葬して真っ赤に燃えたあとの残り物、という由来なのでしょうかね。
実際にはこんな終盤に初めて来たわけじゃなくて、もうちょっと早い段階でちょこちょこと来てはいたはず。
重力の鍛冶場はもう少し早い段階で場所の探索はできていて、太陽ステーションが割と最後の方まで、灰プロが本当のラストまで残ってたかな。太陽ステーションのサボテンの謎解きは初見で全く思いつかず別ルートがあるんだろうくらいにしか思って後回しにしていて、いよいよ他に道がないと思って考えた結果行くことができた。当然、ホットスポットチャレンジをして自分がAshになったループも何度かありました。
灰プロも、あの天井がぶっ壊れたワープが使用できるという発想がなかったので、いよいよ最後に他にやることが無くて考えていけた…という感じだったかな。
太陽ステーションに到達するころには、このゲームのゴールというか終着点が、宇宙の眼に到達することなのかな、と思うようになっていた。根拠としては「眼の座標」という情報の存在が大きい。具体的な情報が与えられたからには、きっとそれを使う展開があるはずなわけで。ゲームのなかでカギを拾ったら、それを使う扉はどこかに必ずある(例外あり)。
なので、太陽ステーションがもぬけの殻というか、このループに直接影響を与えていないことも、到達前から予想していたような気がする。
nomaiと科学と風立ちぬ
太陽ステーションでの衝撃は、やっぱり科学の進歩のために超新星を起こそうとしていたnomaiの倫理観の凄まじさ。
「太陽を爆発するよう、科学が求めている!」
科学の発展のためと言ってはいるが、もっと純粋な好奇心や探求心を何よりも大切にするnomaiの本能、信条みたいなものを感じる。
ここから長めの余談(かつ自分語り)になりますが…。私はスタジオジブリの「風立ちぬ」という映画が好きで、人生で初めて映画館に2回見に行った(その時の体験が大きくて満足しきったのか、それ以降は全く見てないけれど)。
風立ちぬには主人公の堀越二郎を含め、戦闘機を設計するエンジニア達が出てくる。風立ちぬのネタバレになってしまうけど、序盤も序盤、堀越二郎が少年時代に、夢の中でエンジニアの先輩に言われます。
映画は序盤、まだ何もお話としては始まっていないのに、この言葉を聞いて映画館でなぜかボロボロ涙がでてきた。いわゆる「人生には脂がのっている時期というものがあるんやで」という意味であり、「人がクリエイターとして、価値を創造できる期間には限りがある。たとえ代償に何かを捧げることになっても、その時間を無駄にせずに何かに打ち込みなさい」ということなんだけど、それを宮崎駿が私に言っているような感覚になり、当時の自分の状況に照らし合わせて、なんだか「効果はばつぐん」だったのかな。「お前の10年はもうとっくに始まってる」と言われている感覚もあったかな。とても眩しい言葉だった。
宇宙の眼の信号に導かれ、見知らぬ太陽系で遭難の危機に陥りながらも、化学の力で逞しく繫栄し、壮大なプロジェクトを立ち上げるも未遂のまま滅亡してしまったnomaiたちの科学に対する姿勢は、私の中で風立ちぬに出てくるエンジニアの姿と重なるところがありました。
共通しているのは科学やモノづくりに対する真摯な姿勢と純真さ(ピュアさ)かな…。
実際、仕事をしているとたまにそういう人がいて「自分はそっち側じゃないんだよなぁ…」と思うことはあります。エンジニアという職種に限ったことではないですが、「好きでやってる」というのはそれだけで尊いですね。
「我らの好奇心は君と共に旅をする。君は先人たちの足跡をたどって歩く。そして君がたどった道は後に続く者たちを導くのだ」
巨人の大海の量子試練の塔に残されたこのメッセージは、量子の月へ巡礼する若手nomaiを鼓舞する言葉だけど、nomaiの生き様も表しているようで、めちゃくちゃ好き。
ということで…残すはあの場所からのラストボヤージュ。次回最終回です。
ゾンビのみなさまのお腹の足しにしていただければ幸いです。
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