破壊

※ もう何がネタバレになるかわからないので、あらゆるネタバレを含むと思って読んでください

THE IDOLM@STER SHINY COLORS 6thLIVE TOUR Come and Unite!お疲れ様でした。4日ともなんとか現地で参加しました。大阪はDAY2がゲーム先行、DAY1が気合の一般で、毎度のことながらアソビストアプレミアムの利権ってシャニラジくらいでは……と思うくらいのチケット運でありつつ、横浜公演DAY2ではそこそこいい席が来て、リフレジェントプルマージュの綺麗な造形が見られたので満足しました。でも音は座席的にレベル5の上の方だった横浜DAY1の方が良かったな。これは運営側がどうこうではなく建築物の特性の問題だと思うし、音響における"空間"がいかに難しいかを実感しました。とはいえKアリーナ、デフォで音がいいんだなと思えるレベルで結構驚き。

さて、今回のこの6thライブ。告知開始は5.5thライブのアンコール前。シャニマスではあまり観測したことがないゴキゲンな色遣いと陽気な音楽で、現地センステすぐ近くの座席でダブル・イフェクトとBlack Reverieと五ツ座流星群に脳を焼かれていた私でも「???」と思うくらいのポップさでした。五ツ座流星群は5人揃ったときにまたやってください、シャニマス全部で一番好きな曲なので。

これまでシャニマスのライブがやってきたこととは真逆でありながらも、6thを掲げている以上周年ライブでもあり、一体何が起こるんだと。


私は5thライブの亡霊

5th Day1のエッジの利いた演出

私は5th DAY1に関する絶賛の感想をいまだに持っています(下記参照)。去年ベストがこのライブ。いや揺らぎのワンマンみたいに行きたかったのに足を運べてないライブも結構あったので本当にベストだったかはわかりませんが……。もっと比較対象増やせるようにライブハウスとかも行きたいですけどね、東京はものが多すぎて選択するところからかなり疲れる。

早い話が、エンタメにおける興行の「鑑賞」を単純に「楽しい」という行為に収束させることはもったいない、といった内容を上の記事には書いています。傷つくことも「鑑賞」の帰結のひとつだし、あのライブでは説得力の刃が観測者である我々に向けられていて、5年間積み上げたものから出る必然の姿であったと私は思っています。会場を出てぼんやり歩きながら渋谷駅に戻ったあの感覚を私はもう一回味わいたいし、「Multicolored Sky」の演出を初見の姿でもう一回見たい。

とはいえ、5thに関しては他のユーザーのお気持ち表明を見に行かない私でも否定的な意見が舞い込んでくるようなライブではありました。それもまた一つ納得はできる。だってDAY1だけ当たった私みたいな人間も多くいただろうし、日々を必死に生きて、お金を払って楽しい気持ちになりに行ったらあの惨状と言ってもいいライブを見せられるわけじゃないですか。そんなの怒られても仕方がない。「ライブは時間と空間を使ったインタラクティブアートをリアルタイムに実現できるフォーマット」という理解がないと怒るほうが当然かもしれないとまで思います。

我儘なまま、よかったよね……

といった5thの数カ月後、別アプローチでシャニマスというブランドのライブにおける一つの局所解を出したのが「我儘なまま」。アイドルとしての特性を完全に捨てるわけではないが、別軸のストーリーがあるミュージカルを26人で作り上げるという構成。散々言っている単一宇宙に対しての解決方法の一つとしてその手があったかと膝を打ちました。

ちゃんとソロ楽曲を全部やるという企画コンセプトに沿いつつ、演劇をベースにするという方法を提示し、とはいえコンテンツライブとしての楽しみを明確に担保する。群像劇だった初日は特にストーリーの余白、行間が大きすぎるといった部分もありましたが、そんなのシャニマスのことだからユーザー側がちょっと引くくらい事細かにプロットを作っているんだろうし(嫌な信頼だな……)、そうであれば別に後でじっくり見返して勝手に解釈すればいいだけなので。

初日なんてやりたい放題が過ぎていて、相関図を円盤特典につけたほうがいいんじゃないかと思うくらいあらゆる人間関係が交差する群像劇を、雛菜と真乃の断面から切り取るという形になっています。ユニットを超えたソロライブだからこそのストーリー構成だし、それをソロ楽曲だけじゃなく全体曲を織り交ぜつつやるという作り込み。会場を借りる時間、人間の体力や集中力等のどうにもならない制約がなかったら何時間でもやりそうな勢いだったなと今でも思い返します。

音楽面で見ても小糸ソロだったりめぐるソロだったりの盛り上がる楽曲から、しっとりとした灯織ソロや美琴ソロ、いつ披露されるんだと思っていたVOY@GERやShiny Storiesまで、実現可能な範囲内ですべてを諦めないとこういう形になるんだと結構衝撃的でした。それに加えて最後はシームレスにと台本を捨てて芝居を始めるDAY2の終わりのように、演者たちの心意気を感じる場面もいつも以上に多かった気がするし、いい公演だったなと思います。

余談ですがこのライブは両日三峰(希水さん)がベストアクトだと思っていて、正直周年ライブ等で「アンティーカ楽曲全部新しく覚えただろうに、よくここまでのクオリティでついてこれてるな……」みたいにちょっと下駄を履かせて見ていた部分があった希水さんのパフォーマンスが、プラスチック・アンブレラの一曲に集中する形になった途端に強烈な説得力と表現力で目の前に現れて「シャニマスはとんでもない化け物を招き入れてしまったらしい……」と思わされました。初日は現地で見ていて圧倒され、2日目は配信で見て家のソファーで頭を抱えながら横転。映像で見てもすごいと思わされたのってクリパのルカ登場のところ以来だったのでとにかく驚きました。

音MADみたいな6thライブ

そんなこんなで5.5thを経由し本格的にコメティックが始動、283プロの一員になったこの6年目。ライブ共通のコンセプトである「賑やかなパレード」、ひいてはファミ通のインタビューにあった7年目のテーマ「Join Us」にはもしかしたらコメティックの歓迎も含まれているのかもしれないと、発表されてから考えていました。「Join Us」は高山さんがファミ通のインタビューで言っていますが、その前からこの6thツアーのロゴを見て感じていたことだったので、毎度のことながら1年間の所信表明が上手いな〜と思わされますね。

コメティックの歓迎は5.5thでやったのでは?という考えもあったんですが、あのライブはコメティックという観測者を置いてこれまで作ってきたアルバムのページを後ろからめくっていくものだったと思うので、言えば「PiCNiC BASKET!」の追加エピソードの延長線上にあると思います。

仕事の話はちゃんと聞いてくれるルカ、かわいいね

だぶるは、明るく楽しい2人組

鈴木とはるきのW.I.N.G.実装と初登場イベントの「ロード・トゥー・ハッピーホリデー!」はルカ実装時のあの暗すぎると言っていい空気感とは真逆で明るく、かつ2年目までのシャニマスっぽい空気を思い出せるような様子だったのは見てきた通りで、このポップで楽しい空気をずいぶん見ていなかったような気がすると正直思ったところです。

めっちゃドタバタして最後心温まる結末を迎えるの、「オペレーション・サンタ!」とか「サマー・ミーツ・ワンダーランド」とかの空気感でじんわり嬉しかったです。

コメティック加入後のだぶるはも、基本的には二人でわいわいしつつ、ルカを追いかけているといった様子で目を逸らしては行けない部分を見つめながらポジティブに前に進む様子を見せられているように感じます。

はるきの支えになる鈴木、こういうところだと思う

ルカ単体のまま7年目を迎えようとしていたらこの6thのライブコンセプトやテーマにはならなかっただろうし、コメティックのコミュも鈴木単体ではルカと話が平行線で、はるき単体だとにちかと美琴までは行かないにしても初期シーズみたいな空気感になっちゃってたと思うので2人で本当によかった。そういった新しい風を取り込む空気感として、ポップで明るいライブにするというのも自然に見えました。5thライブについては私は本当に大好きだけど、まあ暗かったしアンケートの評判悪かったんだろうな……という想像も込みで。

……とはいえ、やりすぎじゃない?

ただ、いざ始まってみると、「え、いやそこまでやるの(困惑)」みたいな戸惑いがありました。主にはユニット曲をシャッフルで歌うといったSETSUNA/MUGEN BEATでやったものを取り入れたり、手振りやクラップ、なんなら合唱をさせる部分を作ったりと、コロナで制限されたインタラクティブな要素を全部取り戻しにかかるような感じ。特にシャッフルにはかなり文脈が乗ったものもありましたが、それでも金のかかった音MADにどうしても見えてしまうような力ずく感があったと思います。

私は大阪Day1の「シャイニーエクササイズ」のハードスタイルのキックが入ってきた瞬間に「あ、今回私がシャニマスのライブに求めてるタイプの演出じゃない」と秒で悟って全てを諦めた結果、本編があまりに音MADすぎてライブ中は時の流れるまま爆笑をし続けていました。とはいえ終わった後にふと冷静になって、質感やユニット内の結束、アイドル各位の物語を大事にしてきた4th、5thの空気をそんなに急にひっくり返さなくてもと思う気持ちも捨てきれませんでした。アイマスの合同ライブの後に5thみたいなライブをやったのに今そこを取り戻しにかかるのか?という気持ちもあり。

そういうぐるぐるとした思考とともに打ち上げで飲酒して全然関係ないことを喋った後、丁寧に組み上げていったコンテンツの空気感を一回更地にしてテーマ通り「Join Us」の歓迎ムードを作るには、あれくらい破壊しなきゃいけなかったのかと帰路で考えていました。すなわちそれは重みのある6年間だったということを逆説的に意味するし、染みついたブランドイメージや屋号というのは武器でもあり足枷にもなりうるのかと。

でも、だぶるは加入の流れを見るにもっとやり方があったんじゃないかとも思うわけで。今回の6thライブは「多幸感」をシャッフルというサプライズや客とのやりとりを使って形式から生み出していたわけですが、楽曲の力とコンテンツのパワーから生み出すこともできたんじゃないのかなと。何せ6年丸々やってきたわけだから。

まあでも、面白いライブだったとは思っているし、シンプルに「この2年間結構緻密なライブ構成で好きな作り方だったのに、なんで突然方向転換したの?」というわがままな自分の気持ちに合わなかっただけで、そこを無視すればいいライブだったと思っています。それは本当のことだし、大規模なライブって結局こういった「楽しい」の要素に収束するんだなという納得があるのも本当。難しいね。

(一番嫌なのは5thの評判が悪くて6thの評判が良かったから、5thみたいなことはもうやらないと決まってしまうことなのですが、ライブ後会場で耳を傾けていると今回はかなり絶賛で、なんとなくそういう風になりそうな予感もありちょっと不安です。ユーザーの声って最終的には集約されて1本に代表されるものだと思うので。ちゃんと5thが最高って思ってた人もいますよと主張したくてこの記事を書き始めた部分もあります)

あとは個人的な感想未満の何かを

いや本来こういうものが感想か?ちょっとわからないんですが、ライブに触れて思ったり考えたことをただ書くだけです。

「輝きにかわる」の解像度が上がった

横浜DAY2のキャストコメンタリーの中で「輝きにかわる」はポジティブな面じゃなくネガティブな面からも描いているのが良いという話を河野ひよりさんがしていて、自分の担当曲じゃないのにこの解像度で感想が出力されてくるのかと嬉しくなりました。普段から日常に対する解像度の高い河野さんではありますが、私はこの曲を「今時のGarage/2step引用的なポップスだな〜」程度で聞いていたのでかなりハッとさせられました。

このフォーカスの仕方はすごく女性的というか、人生の中でメイクが当たり前のように隣にあり、かつ見られる仕事でもある女性の河野さんだからこそ出て来るなと思うし、男性の私にとっては納得や理解はできても100%まで実感できないというちょっと悔しい部分でもあり、ピザの耳始まったくらいから河野さんのことを見ているので、画面越しに実感する部分でもあり。

(河野さんが性別・育ちによるフォーカスの仕方の違いを語っている回。今回は立場が逆なんだなと。破茶滅茶なトークの中に不意に突き刺すような真理を言うので毎週限定パートまで見逃せない番組。)

こういった気付きの部分って遅かれ早かれ訪れるものではあるんですが、自分でたどり着くべきものと、他者から言われて初めて輪郭を得るものの2種類があって、今回は確定で後者なのでこのリリースすぐのタイミングで気付けてよかったです。ありがとう、河野ひよりさん。

DJパートって"DJ"じゃなきゃいけないんだっけ

シャニマスに限らずですが、ライブにおいて単に曲が連続するだけだったメドレーというフォーマットが、DJという形式を取ることによってそれっぽく正当化される流れっていつどこから発生したんだろうと考えていました。それってメドレーじゃダメなの?っていうのと、シンプルにいつからだったっけという2つ。

ただtofubeatsもインタビューで言っていた通りで、DJって結局は「選択」の行為なので、その選択の中にあるパーソナリティーや考えていることを覗くという意味では単なるメドレーよりも含蓄に富んでいると言えるのかもしれないです。私はブースに向かって踊るといったDJブース(あるいはプレイヤー)を神格化するような状況は好きじゃないけど、クラブカルチャーに確かに存在する「誰がブースに立つか」という要素を切り取れば4人がそれぞれ質感の違う選曲をしたのにも納得がいくし、それを楽しむというのであればDJのフォーマットは必然だったのかもしれないですね。

それを前提に選曲面で言えば横浜は両日ともよかった気がします。小糸の緻密なようでかなり大胆な組み上げ方と、愛依のクールなイメージを守りながらも奥にある本人の優しさが見える静かめの選曲。意外性もありつつ、いやでもありえるなと思わせる塩梅がよかったです。

おなじみ「海へ出るつもりじゃなかったし」の小糸の発言。腹を括るとこれくらいは平気で出て来る豪胆さもあるので、ルカにちゃんとお願いしたんだろうなとか思っちゃいますよね。

とはいえ間にジャンル横断のインタールードが挟まって全然関係ないリズムに入るのって逆によくわからなくなっちゃうので、いっそ従来のメドレーの方が何も考えずに楽しめる気がしなくもなくて……これは「趣味: クラブ遊び」の弊害かもしれないので私がたぶん悪い。ああいう演出におけるインタールードは発表前のドラムロールみたいなものだと思えばいいんでしょうけど、稀にでもDJやったりする手前どうしても気になってしまいますね。機材操作の動きは言わずもがなですが、まあ酒もタバコもない状態の1本WAVにおけるブースでの振る舞いってDJをやったことあってもめちゃくちゃ難しいと思う(私は絶対できない)し、それをアイドルとしてのパフォーマンスに落とせということ自体かなり酷かもしれない。

そういう意味ではDJ 福丸小糸のステージ上の表現がすごかったです。下でパフォーマンスしているダンスの振りをかなりの割合でコピーしていたのに私は驚いたし、でも小糸って覚えるのにめちゃくちゃ時間がかかったとしてもこれをやるよなあと。しっかりブースに立っている存在としての仕事をやってました。

あとこれはキャスト側の話になるけど、大阪Day2の紫月さんと田嶌さんのサシになっていたオーコメでDJパートどうだった?みたいなのを結構しっかり聞き込んでいた印象で、今思えばあれは1個布石というか自分が立つときの参考にする部分でもあったのかなって。しっかり旗まで持ち込んで流石でした。もちろんそれぞれキャストはアイドルのことを考えているだろうし研究もしてきているだろうけど、自担じゃないアイドルに対して「この人が小糸をやってくれて良かった」と思わせるのってすごいと思いましたね……。人間性の芯にあるホスピタリティのシンクロ度合いが年々上がってて絶対目で追っちゃう。

面白アレンジの全体曲、爆笑せずには……

特殊アレンジとしてSpread the wingsとLet's get a chanceがなんか絶妙なアレンジになっていましたね。めちゃくちゃホイッスル鳴らしてて楽しいとか以前に爆笑の仕上がりでしたが、やるならやるで裏打ちだったり連符のフィルだったり深めのリバーブだったりを過剰に入れてあの辺の音楽に行ききってほしかった気持ちもちょっとあり……。というか太陽キッスとかいうソカっぽい名曲があるんだから、同じようなアレンジで作れるんじゃないの、頑張ってよとは思いました。何回聴いても爆笑のアレンジでファイナルにしてやっと笑わずに見られました。

とはいえ、私は夏葉の「Damascus Cocktail」がめちゃくちゃ好きで、あれのことを「嘘ラテン」だとか「偽ラテンポップス」みたいに適当に呼んでるくらいポップスに世界の音楽をそれっぽく引用してくるのも好きなので、まあこれはこれで。とはいえホイッスルは鳴らしすぎだと思います、象徴的だけどバカになりすぎて面白くなっちゃうからやめてね。

(Samba De Janeiroの冒頭くらいホイッスルが鳴ってて流石に面白かった)


以上、今年はこういうライブがメインなのかな〜と思いつつ、観測し続けられたらいいですね。

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