TCGにおける人的環境

高校のころに遊戯王にハマり、現役として6年ほどプレイヤーを続けながらも、次第に環境の移り変わりについていくことができなくなり引退したものの、年末に知人が主催している非公式大会には運営としてほぼ毎年参加している、というのが現時点における私のTCG環境である。

現役当時の仲間内ではよく「TCGは麻薬のようなものだから、完全に足を洗うのは難しい」などと言ったもので、距離は離れても何らかのタイミングで「久しぶりに触りたいな」と思ってしまうのは事実であり、当時の知り合いにもまだプレイヤーを続けている人は多いので相手をしてくれるから非常に恵まれた環境ともいえる。

とは言え遊戯王は他のTCGから見て、お世辞にも治安が良かったかと言われるとそうではない。
私が現役だったころは大会形式を問わずにどこかで問題が起きたり、プレイヤーのやらかしなどが毎月のように発生していた記憶がある。
実際、仲良くしてもらっていたプレイヤーやコミュニティを取りまとめていたプレイヤーが問題を起こして消えたというのも経験した。

それにプレイ環境が健全だったかと言われると素直に首を縦に振ることも難しい時代だったと思う。

というのもジャッジキルでセット、マッチ勝利というケースが増えはじめ、「ジャッジキルにはジャッジキルで返す」という表現に近いスタンスのプレイヤーが増え、それに影響されて大会は殺伐とした雰囲気であることが多かった。

もちろんジャッジの判断によるロスは悪質なプレイに対する抑止力として存在するものであり、プレイ環境の健全化のために必要不可欠なものである。
基本的なルール、マナーを守ってさえいれば本来は起こりえないものだったが、勝ちに貪欲になるにつれ、ルールを武器に戦う人が増えたことに疲れを感じたのも事実である。

ただこれ自体を悪いとは思っていない。
勝つための戦術は千差万別であり、どこまでを自分の武器として扱うかの違いでしかないと考えているし、実際に自分もルールに反しない範囲でいやらしい言葉遊びをしていた時期もあった。

それに、当時の遊戯王のプレイヤーは勝ちに貪欲であったが、それ以上に他のプレイヤーとの交流を大事にしていたのも印象的だった。
対戦前後では他愛のない会話をし、近くに知人がいればその対戦相手を含めて交流を深め、相手を一方的に貶めるような言動をすれば、その人を正そうとする動きもあった。

そんな人的環境だからこそ、私は今でも遊戯王に関わっている。


じゃ他のTCGは触らなかったのか?と言われると、一度MTGに手を出したことがある。

MTGをメインでプレイしている会社の同僚に誘われ、興味を持った6人程度のメンバーによるスイスドロー大会をする程度にはプレイをしていた。
ただ元々遊戯王で環境を追いかけ続けた気質から、MTGでももっと上手くなりたいと思うようになり、誘ってくれた同僚と一緒に公認のスタン大会に出ることになった。

そして、私はそれ以降MTGの大会に出ることはなかった。

理由はあまりにも単純。
「初戦のプレイヤーとその取り巻きの態度に嫌気がさした」
ただそれだけだった。

対戦前に初めて大会に出ること、まだ環境が分かっていないからカード確認が多くなること、など先に自分がMTGに不慣れであることを伝えていたにも関わらず、私のプレイングに対して「なんで〇〇しなかったのかわかんねw」「動き弱すぎw」などの発言とあざ笑う態度でプレイする対戦相手と、それに同調する取り巻き。
不快感を抑えながら何がダメだったのかを問うても、「初心者にはわからないから答えるだけ無駄w」と一蹴する。

正直かなり落胆した。
後日同僚に話したらそういうプレイヤーは店舗側に相談すれば対処してくれたと答えてくれたが、問題の本質はそこではなく、プロ制度があるほど競技性の高いゲームであるMTGは、民度の高さは遊戯王とは段違いである、というのを散々耳にしていたのに、遊戯王でも中々見ない民度の低いプレイヤーがいることに衝撃を受けた。

それと同時に私は遊戯王において、かなり恵まれた人的環境に置かれていたことを自覚した。

私の遊戯王のいろはを教えてくれた師匠は、初心者の私のプレイを笑うこともなく、デッキの構築の仕方やメタの読み方など懇切丁寧に教えてくれた。
初めてでた大会で、対戦相手の人は初心者が組んだ弱いデッキが相手であっても全力で相手をして、対戦後はデッキコンセプトを考慮して強化案を考えてくれた。

だから私は遊戯王を続けることが出来たのだ。

対戦形式ゲームであるTCGは、根本的なゲームとしての面白さやバランスなどのゲーム環境が重要視されているが、個人的にはプレイヤーのモラルなど人的環境も重要ではないかと思っている。

もちろん私が体験したことは一店舗の一部のプレイヤーの行動に過ぎず、たまたま極端に悪い例を引いてしまったのだろうということは脳では理解している。

ただ、感情では既にMTGに対して既に悪い印象を抱いてしまった。

人的環境が与える影響は、ゲーム環境の手前にある。
プレイヤーとなるはずだった人が離れる、それはタイトルに対する大きな喪失である。

初期に離脱する人をその程度でと考えるようであれば、その人が原因でタイトルの品位を貶めていることを自覚すべきだと思う。
相手がいるからこそ成立するゲームで相手がいなくなる可能性を考えていないことも。

TCGが好きだからこそ、相手を思いやることを様々なプレイヤーに意識してほしい。

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