[共通テスト問題流出]大学入試センターの管理体制についての責任も無視できないのでは?

共通テスト実施中に世界史Bの問題が外部に流出。

 今月の15日,16日に実施された共通テストにおいて、試験実施中に世界史Bの問題が外部に流出する事件が発生しました。

 共通テストを受験した女子学生が、正答を教えてもらう目的で、試験実施中にスマートフォンで隠し撮りした試験問題を家庭教師登録サイトに登録している大学生宛に送信。試験問題を受信した大学生は、送られてきた世界史Bの問題を解いて返送していたものの、途中で怪しいと感じて大学入試センターに通報したことで、今回の試験問題流出事件が発覚。

 後日、事件を引き起こした女子学生(仮面浪人らしい)が警察に出頭したことにより、一段落となります。

 この共通テストの問題が実施中に外部に流出した事件について、「ずさんな管理体制によって、内部不正による情報漏えいを招いてしまった」事例の1つでないかと思ってしまいました。

試験中に問題漏えいか 共通テスト、警視庁捜査(時事ドットコム)

 この記事中には、「共通テストの試験会場では、スマートフォンなどの持ち込みは禁止されていないが、試験時間中の使用は不正行為となり、発覚すれば受験した科目の成績は無効となる。」とあります。

 不正行為に繋がる機器であるスマートフォンについて、使用を禁止しているものの、試験会場に持ち込ませている時点で情報漏洩その他不正防止のための管理がずさんに思えてしまう。情報セキュリティのケーススタディで頻繁に出てくるくらいの、定番ともいえるくらいのインシデント発生フラグに見えてしまった。

共通テスト不正事件で明らかになった試験監督のずさんな体制「携帯の遮断措置必要」

 一般の企業団体では、個人情報や機密情報といった重要情報の漏えいを発生させた場合、実行犯だけでなく、当該企業団体についても管理責任も問われるはず。試験実施中の試験問題は重要情報に該当するはずなので、このような重要情報の流出を発生させた大学入試センターの管理責任が不問で放置されていいはずが無い。

試験実施中の問題流出などの不正防止のための管理策。

 再発防止のためには、大学入試センターとしては、少なくとも以下の管理策を実施することが必要になるのではなかろうか?

・受験生に、スマートフォンなどの電子機器を試験を実施する部屋に持ち込ませない。鍵のかかるロッカーで預かってから入室させるようにする。余裕があれば、他に持っていないか確認するために、簡単な身体検査を行うようにする。

・特殊な機能を持つ筆記用具による不正を防止するため、筆記用具は大学入試センター側で用意したものを使用してもらうようにする。

・共通テスト実施中は、大学入試センターで用意したポータブルの監視カメラを設置して試験実施中の会場内を撮影するようにする。大学入試センターの予算からすれば、全国の会場に設置するためのポータブルの監視カメラを用意する費用負担はそれほど大きくないはず?
 会場に監視カメラを設置するにあたり、試験監督が受験生に対して監視カメラを回していることを説明することで、受験生に不正が困難であることを認識させ、不正を起こさせる気を無くさせるようにする。特殊な訓練を積んできたプロでも何でもない一般の受験生相手であれば、これはかなり有効ではなかろうか?

・会場内の室温を適切に保つことが可能であれば、受験生には室内では上着を脱いで軽装で受験してもらうようにする。受験生の服装が軽装であれば、不正をするための道具を隠すのを困難にする効果が見込めると思う。

 不正防止を目的として、共通テストの実施中に妨害電波を発生させてスマートフォンなどを使えなくするような意見もありますが、これは良い方法とは言えないのでは?

 妨害電波を発生させると、近隣の一般の通信を妨害することで近所迷惑になったり、大学内で研究活動に使用している機器の誤作動を引き起こすといった別のトラブルを引き起こしかねない。

管理策をスムーズに実行したり、管理策の不備を洗い出すために、定期的に対応訓練を行う。

 情報流出その他の不正を防止するための管理策を文書化しても、現場のスタッフその管理策に従ってスムーズに動けなければ、管理策を定めた意味が無くなります。また、管理策そのものに不備が無いか洗い出し、不備があった場合に管理策を見直すことも必要になるはずです。

 これらの目的のために、大学入試センターには、定期的な対応訓練を行うことが求められます。

 例えば、情報セキュリティのプロなどに方に問題流出その他不正行為をする受験生役を担当してもらい、試験監督などの会場スタッフが定められた管理策に従って全力で阻止する、みたいな感じです実施します。

 ここで、受験生役による問題流出その他の不正行為を阻止できていれば、共通テスト本番もこの管理策通りに行えばOKと見込める。もし問題流出その他の不正行為を許してしまった場合は、なぜそうなったのか原因を洗い出し、現場スタッフの立ち回りや管理策そのものについての見直しを行います。

 Twitterなどのネットを見てみると、実行犯の女子学生を叩く書き込みが溢れている一方で、試験問題の流出を招いてしまった大学入試センターの管理責任を問う声がほとんど無いようです。実行犯ばかり叩いたところで、大学入試センターの管理体制がそのままでは、今後も同様な事件が繰り返されても不思議ではない。

 今回の試験中の問題流出のような事件を再発させないためにも、共通テストを実施する大学入試センターには本腰入れて試験問題その他の重要情報の管理を徹底してもらいたいところです。

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