香料会社におけるバニラとは

あなたが知っている香料は何か?

そう問われると一般の方が挙げられるのはムスクかバニラではないでしょうか。香粧品ではムスク以外にもローズなどもあるので多少ばらけるかもしれませんが、食品においてはバニラ一択かと思います。バニラエッセンスであれば家庭のキッチンにもありますし、アイスやプリンを作る時には欠かせない素材です。

そんなバニラですが、2016年ごろに全国ネットのテレビニュースに取り上げられるぐらい高騰して騒ぎになりました。街のケーキ屋さんでのインタビューや、某香料会社は調達部門長もインタビューされていました
香料原料がテレビに取り上げられるなんて滅多なことじゃないな話です。

そんなことで話題になったバニラですが、そもそもどのような植物で、どのように加工されているのか知られていない方は結構多いのではないでしょうか。今回の記事ではその一端をご紹介させて頂きます。

生産地・生産量

植物であるバニラの生産は亜熱帯から熱帯の温暖な気候で栽培されています。主要産地はアフリカのマダガスカルで、世界の半分以上が生産されていると言われています。
それ以外では、メキシコ、インドネシア、タヒチなどで作られており、最近では日本でも試験栽培的なことも行われています。
様々な産地の中でも、ユニオンバニラやタヒチバニラというものも聞かれた事あるかもしれません。これらは生産量が非常に少なく希少で特別な香りを持つバニラとして扱われています。 


栽培・加工


バニラは、ランの一種で花が咲いた後にできる緑色の鞘(サヤ)が原料として利用されます。見た目はサヤインゲンに近いです。

私の知ってるバニラは黒かったぞ!

そんな声も聞こえてきそうですが、この黒さ、実は加工したことで変化した後の色なんです。

鞘を収穫したのちには、キュアリングと呼ばれる熟成加工を行いますがここが最も大切な工程です。
熱をかけて発酵させて乾燥させること1〜3ヶ月。ここは農家によってやり方は違うので明確ではありませんが、これが香りを生み出す大事な作業になります。この作業をしないとバニラの芳醇な香りは生成されないないのです。

このキュアリングは産地で行われることが多く、6〜9ヶ月で黒いダイヤモンドとも呼ばれる黒いバニラビーンズが完成します。

余談ですが、先の高騰時には加工される前の緑色の状態や、品質の悪いものでキュアリングが不十分な状態のようなバニラですら、高額取引されて市場での不信感を招きました。現地の農家も高騰するバニラで、いち早く現金化する事に走ってしまったこともあります。
事実として産地では、契約を交わしていてもそれ以上の値段出されると、売ってしまうということが起きていたようです。時代錯誤ですが、現金持って買い付けに行くような感じです。


抽出


キュアリングを終えたあとが香料会社の出番です。バニラビーンズからの抽出される過程としては、大きく分けて2パターン。1つ目は食品メーカーとの取引が多いような香料会社(ジボダン、高砂香料など)が行うパターン。2つ目はエキス化をメインにする香料会社が請負うパターンです。いわゆる香料原料製造会社です。この原料製造会社から各国の香料会社がエキスを購入して、自社香料に使い込むという流れになります。
日本国内の香料メーカーでバニラビーンズからエキス化してるメーカーは上位と一部のメーカーに限定されると思います。

また仮に自社でエキス化していても、原料としてエキスを購入している会社がほとんどだと思います。
理由は様々で購入ルートの複数化、購入先との関係性、そして1番は多様なエキスの入手のためというところでしょうか。
「多様なエキス」と言うところがポイントですが、何を使ってどのようなエキスにするかということです。
オーソドックスなのはエタノールによるエキス化です。それ以外ではアセトン、オレオレジンを溶媒とする場合やCO2超臨界抽出など様々な手法があります。
抽出方法を変えることで回収する香気成分を選択することができるのです。絶対にこの抽出方法でなければならないというものはないのですが、費用対効果と汎用性、特殊性の兼ね合いで香料原料として使い分けます。

このようにして作られたバニラ原料は、家庭で使われるようなバニラエッセンスだけでなく、香料会社の核心部・心臓部として様々な香料に使われるのです。 

後半はやや駆け足(とび足)で書いてしましましたが、ぜひ専門の方から修正指摘いただければと思います。

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