嗜好性を高めるレトロネーザルアロマに着目した香料

今日は香料の基本的機能である3つの機能のうち、嗜好性にこだわった一本を書きたいと思います。

基本的機能は以下の3つです。

1.嗜好性を高める(おいしく感じさせる)

2.食品の異味異臭を抑える

3.新しい味を創作する

2は、例えば機能性素材(たとえばコラーゲン)の独特な風味を抑えるための香料を使う。体に良い成分というのはえてして独特な風味がするので、食べやすくするために香料を使います。

3は、もっとも有名なのはコーラです。コーラって何味か考えたことありますでしょうか。

コーラはコーラ味。

というのが大多数かと思いますが、分解すると、レモンを主とした柑橘とバニラ、シナモンなどのスパイスにカフェインの苦みを合わせたものがコーラです。

では今回取り上げる1の嗜好性を高めるというのはどういうことか。

たとえば果汁100%オレンジジュースは無香料でもある程度美味しいですが、果汁10%オレンジジュースが無香料だとどうでしょう。おそらく飲めたもんじゃないと思います。果汁100%オレンジジュースを薄めたと考えてもらえれば味のイメージがわくのではないでしょうか。

こういったときに香料を使用して、飲みやすく美味しくしているのです。

この嗜好性(美味しさ)を高めることを科学するのが香料会社の役割ですが、そもそも個人差のある美味しさという点をいかにして納得感を出すのかということです。

ではここで問題です。この3つの書き方をしてどれが美味しそうでしょうか。

・トップフレーバーリストが美味しいと感じた香料です。
・オレンジジュースの購入者である20代のフレーバーリスト10人が集まって美味しいと感じた香料です。
・果汁100%オレンジジュースを飲んだ時に感じる香味を分析し表現した香料です。


正解は、、、

どれでもありません。

なぜならどれも必ずしも間違った手法ではないからです。長年の経験を生かして作る。最終商品を見据えて作る。風味の感じ方を分析して作る。正直こういう作り方はどれもやっていると思います。

そんな中で学術的においしいを紐解こうとチャレンジしているのが、レトロネーザルアロマに着目した分析手法です。

レトロネーザルアロマ:食べている時に鼻から抜けてくる香り。
オルソネーザルアロマ:匂いを直接鼻から感じる香り。

実はこのレトロネーザルアロマというのは比較的前から知られていたのですが、ここ10年で新たな分析手法の開発研究が非常に活発です。これは食品業界のおかれる環境がさせているのだとは思いますが、手法としては非常に納得感が得られやすいのではないでしょうか。

〇〇を食べている時の香りを分析して表現する香料です。なんて非常にわかりやすい。前述の例でいうと果汁10%しか入ってないけど、100%入っている時のような香味を表現するといわれたら魅力的ではないでしょうか。

参考までに各社のリンクと名称も貼っておきます。ひたすら書けそうなお話なので導入としてここまでにします。

高砂香料:名称不明 *学会発表はあるため着手していることは確認
長谷川香料:まるかじりフレーバー
小川香料:バックアロマフレーバー
曽田:DAS(Drinking Aroma Simulator)
高田香料:のど越しフレーバー 
三栄源エフエフアイ:RAS(Retronasal Aroma Simulator)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?