香料業界分析4 曽田香料株式会社

業界4位の曽田香料です。

最近のトピックスと言えば上場廃止でしょうね。
元々株主として三井物産も入っており、かつ三井系の東レが大株主だったので、違和感はないですが、閉鎖的な業界の中でこの変化は珍しいです。

財務諸表を見ていきますが、上場廃止で非公開となったため、最新・最終の決算短信17年3月(平成29年3月)を見ていきます。

2017年3月期
連結売上152億、単体117億
連結純利益2.4億、単体2.4億
連結純利益率1.6%、単体2.1%
連結営業利益5.2億、単体1.4億
連結営業利益率3.4%、単体1.2%

2016年3月期
連結売上160億、単体127億
連結純利益2.0億、単体0.1億
連結純利益率1.2%、単体0.1%
連結営業利益6.3億、単体0.8億
連結営業利益率3.9%、単体0.6%

本業の利益である営業利益を見ると、連結3.4%(前年比83%)、単体1.2%(前年比175%)とありますが、ちょっと厳しい数字。
特に16年3月期の単体営業利益0.8億(0.6%)が非常に厳しい。15年以前の数字も追ってみないと正確には判断しかねますが、製造業平均4%、食品系3%に対しても苦しい。
業界的にはバニラとグレープフルーツが高騰した頃合いと符合はする頃ではありますが、元々悪かったと思わざる得ない数字です。

東レ・三井物産は曽田香料のグループとしての立ち位置を考えていたと思いますが、 16年3月の数字の悪さが決断を踏み切らせたのではないかと考えてしまいます。

次にセグメント、地域別に見ていきます。
セグメントは調合香料事業、合成香料・ケミカル事業、海外事業、国内子会社の4セグメント。
70億:調合香料(利益△0.1億)
32億:合成香料・ケミカル(利益2.8億)
36億:海外(利益3.6億)
13億:国内子会社(利益0.2億)
曽田香料はフレーバー・フレグランスの分け方ではなく、調合と合成という分け方が特徴です。
これは曽田香料のもつビジネスのうち合成香料・ケミカルの影響かと思われます。これらは工業用や香料用素材として販売しており、売上の2割以上を占めます。工業用とは代表例で都市ガス向けです。
最近はオール電化の家もあり、知らない方もいるかもしれませんが、ガスの匂いです。ガスは本来匂いのないものですが、危険性を知らせるためにわざと不快な臭いがつけられているのです。
前置き長くなりましたが、調合香料の利益低さが大きい。業界として本来は高い利益性を誇るはずの香料において、この影響は大きすぎる。16年3月期の同事業に至っては△0.8億という状況。

続いて地域は日本、アジア、欧州、その他。

101億:日本
46億:アジア
2億:欧州
1億:その他 

日本はソダアクト、岡山化学工業の国内子会社。
海外拠点としては中国2、台湾1、タイ1、シンガポール1。タイは16年8月、シンガポールは17年1月と精力的に拠点を増やしていましたが、これは先の調合香料事業での不振を取り返すための活動だったのだと考えられます。

ドキュメントにも書いてありましたが、調合香料事業での競争激化、中国メーカー進出による合成香料・ケミカルでの販売価格ダウンなどが難しい状況に陥ってたのだと思われます。

まとめ
・調合香料事業での統廃合で収益性の改善が期待
・海外事業と合成香料・ケミカル事業の収益性を軸とした事業展開
・三井グループになりシナジー効果をどう生み出せるか

合成香料のような得意分野を持っている企業であり、調合香料で100億販売実績があるわけですから、今後の発展・成長があるのではないでしょうか。


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