見出し画像

エシカルな商品を普及させるには

 近年、生産方法を見直した商品に注目が集まっている。特に食品産業においては家畜の飼育方法や環境に対する負荷、更には従業員の労働環境などを見直した商品が販売され始めた。各企業は社会の価値観の変化への対応が急がれる。しかし一般にこれらの商品は従来品と比べて価格が高く、市場競争において負けてしまう傾向がある。この記事ではそういった商品を普及させていくには何が必要かを考えていく。

卵の場合

 2022年1月、ドイツにおいて卵から孵った雄ひよこの殺処分を禁止する法律が制定された。雄ひよこは卵を産まず、また食用にもならないため殺処分されることが慣行になっており、その数は年間約4500万羽にものぼっていた。
 その結果卵の値段が上昇したが、法律に適応しきれていない企業との価格差が生まれてしまい、消費者が安い卵に流れてしまうという現象が生じている。「ひよこの殺処分なし」というロゴのパッケージで商品の差をアピールするが、その訴えは消費者の消費行動を変化させることができるのか。

目立つデメリット

 こういった飼育過程を重視した食品は、人道的な生産方法という本質的かつ重要なメリットがあるものの、現時点ではデメリットの方が目立っている。
 消費者にとっては価格が高く、自分たちにとって従来品との差を埋められるほどの価値は見出しにくい。それは「エシカルな」生産過程が見えにくく、さらに従来品とどの程度品質の差があるのか感じることが難しいからである。
 そもそも普段口にしている食品が劣悪な環境で生産されていることに気づいている消費者がどの程度いるだろうか。そういった報道がされ始めたのは近年であり、まだまだ問題意識を持っている消費者は多くはない。彼らにとってはパッケージの短いフレーズだけでその商品が持っている価値を判断することが難しい。
 そして生産者への大きな負担もデメリットである。いくら「良い」商品であったとしても消費者に選ばれない商品では、よほど強い信条がある生産者でないと作り続けられないのが現実である。


普及のカギは「意識の高い消費者」?

 ここで、普及のカギとなるのは消費者の意識である。
 日頃から消費に関する問題に関心を持ち、自らの意見を持って「選ぶ」消費者こそがエシカルな商品を普及させていくだろう。まずは経済的余裕があり、感度の高い消費者からその行動様式を変容させていく。それによって商品が普及すれば価格も一定の割合で低下していくだろう。
 それと同時に食に関する教育や報道で一般消費者に問題提起をしていく。価格重視だった商品選択から、より広い視野で商品を選択できるように消費者を教育していく。
 そういった土壌が整えられれば、生産者良い循環の中で生産を続けることができるだろう。さらに自らの商品のエシカルさをブランド化することができるようになれば、より多くの消費者を取り込むことができるだろう。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?