見出し画像

五輪開会式不参加の意味とは

2022年 北京オリンピック開催


 2022年2月4日、北京で冬のオリンピックが開催される。世界で初めて一都市で夏季と冬季両方のオリンピックが開催されるということもあり、日本でも注目度が高い。
 そんな中、米国や英国を中心とする国々が政府代表を派遣しない外交的ボイコットを決定している。これらは新疆ウイグル自治区や香港における人権問題などが背景に存在している。さらに台湾やインドなど、各国がそれぞれの立ち位置を表明し開会式に参加するか否かで参加国が二分される状況にある。

「不参加」は何を意味するのか

 開会式への不参加を表明した国は、その行動によって何を表現し、結果として何を意味するのか。ここでは四つの視点から分析していく。

 一つ目は不参加を表明した国自身だ。これらの国々は中国の政治的姿勢に対する抵抗・拒否感を表明するために開会式への不参加を決めた。オリンピックと政治は全くの別物だとしても、政治的な隔壁の厚い中国が主催するオリンピックに諸手を挙げて参加することへの疑問をぬぐいきれなかったのだろう。

 二つ目は参加を表明した国だ。開会式に参加することはある意味「正常」なことなのだが、意味を持って不参加を表明した国が現れたことにより参加することにも意味づけが必要になった。「参加=中国の政治に対する完全な賛成の立場」を意味する訳ではないが、参加することと自国の立場とが食い違わないような一定の説明・理論が求められる状況になった。

 三つ目はホストである中国からの視点だ。中国としては各国が参加しないことにより、国際的な求心力がない国というレッテルを貼られることになる。さらに自国の政策が否定され、それに対する反発をすることも想像される。

 そして最後に観客である世界中の視聴者という視点で分析する。国際社会の反オリンピックムードが一般視聴者にも影響することが予想できる。これによってオリンピックの盛り上がりが今ひとつになった場合、期待されていたほどの経済効果が生じないことも考えられる。また、今回の騒動によって中国周辺の政治問題に関心を持つ人が増えることも考えられる。

不参加は許されるのか

 平和の祭典であるオリンピックに政治問題を持ち出すことに対して疑問を呈する人もいるだろう。この「政治的不参加」は許されないことなのか。

 私はこの不参加は許されるものだと考える。なぜなら不参加を表明した国々は、平和の祭典における政府関係者の不参加という最低限の方法で「平和でない情勢」に対する抵抗を示しているからだ。反対の意見を表明するためにはもっと積極的な方法も考えられる。しかし、最低限かつ消極的方法を選択して意見を表明することで対外的な体裁を整えつつも、大きなメッセージを全世界に発信することができているのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?