君は友だちと化粧品の話をするか

 みなさんは、身近な人と……そうですね、たとえばシャンプーとかの話をしますか?

 あなたが、女性の場合はするかもしれない。
 周囲にいた女の人たちを、30年以上にわたって観察した結果、彼女らはわりと化粧品全般についてオープンかつ具体的に話すイメージがあります。
「それ、いーね! 何使ってるの?」とかってやってるイメージ(イメージ)。

 しかし、これが男性になると……私は男性ですが、うーーん……。

 あのですね、僕らの十代のころのヒット商品は、あぶらとりシートと、からだを拭くシートと、制汗スプレーと、ワックスでしたよね。あぶらとり紙というのはもともと女性のものだったようですが、これを男性向けに製品化したことで、テカリの気になる十代にめっちゃ売れました。からだを拭くシートはなんか売れましたね。そして、制汗スプレーはずーっと売れてますね。
 これらについては会話があったし、みんなの目の前で堂々と使っていた。
 あぶらとりシートやって、「うわー、すっげー取れた!」とかやってるやつが沢山いました。
 中高の体育のあと「これすっげー冷てーーー」とか騒いでいる友だちから、その場で制汗スプレーを借りて「ひゅーーー」とかやってた、俺も。
 これを会話というなら会話はあった。でもそれだけだった。

 それから長い時間がたち、ここ3年くらいで、BBクリームやファンデーションみたいな色のつく、本格的に化粧と呼べそうなことをする人が増えてきましたね。

 けど、それだけで男性同士が化粧品の話をする時代も近い……と思えます?
 そこには何か別の壁がある気がする。

 なぜなら、私は友だちとシャンプーの話すらしたことないから。目の前にあれば多少は話をするけど、ないものの会話はまずない。

 私自身は実はシャンプーやコンディショナーにこだわりがある。
 効果があるのか知らないが、安い化粧水とキュレルの美白乳液、色つきの日焼け止めは塗る。さらに、滅多に出さないが、証明写真などを撮るとき用に、しっかり色のつくリップも持っている。
 とはいえシャンプーはしょせんシャンプーだからいいが、乳液とか色のつくリップについては、やっぱりみんなに正々堂々話せるかというと、ちょっと躊躇があるんだよな。ドラッグストアでの並んでいる場所もちょっと違う。
 そう、ひとつ目の壁はそういう単純なジェンダーの差の問題として片付けられると思う。
 ドラッグストアには明らかに男女それぞれのコーナーがある。
 特に男性の私が、あっち側(SK-IIとか書いてあるあたり)に入ったらぎょっとされるだろうという感覚があって、とても入れない。そういう壁。

 語ることを躊躇をさせる壁はもうひとつある。
 ドラッグストアの壁とはまた別である。が、男性性みたいなものが内包している性質なんだと思う。
 さっきも書いたけど、かみそりやパンツのような、明らかに男性向けの製品でも、目の前にないと話題にならない。
 こちらの躊躇の原因は、上手く言語化できないのだが、おおまかに2つあると思う。

  • ひとつは、そもそも興味がない。なぜなら買ってくる妻や母親の領分だから。

  • もうひとつは、手品の種をくどくどと説明するのはダサい、という感じだろうか。これは本当に説明が難しい。

 ただ、一方で、情報交換ができないことは不便なのも事実なので、なんとか解禁していきたいものだ。(私のマニアックなシャンプーの話につきあってくれる人がどれだけいるのかは正直心配だけど。)

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