ハウスエッジと金融庁の間柄。

皆さんはカジノに行ったことはありますか?

あの、大きな箱に人とお金をたくさん入れて、じゃぶじゃぶと芋洗いをするアレのことです。日本人には馴染みの薄いカジノですが、自分は幸運にも何度か行く機会にめぐまれました。

自分が見たカジノの印象は、パチンコ屋とゲームセンターをミキサーにかけて財閥系企業が再プロデュースした、中~上流階級向けの高級ホテル一体型アミューズメント施設といった感じでした。

そしてハウスエッジ。自分が考えるカジノの醍醐味は、そこでの人間観察もさることながら、自他のリアルなお金達がハウスエッジによって効率的に削られゆくさまを生で観察できるところにあります。

カジノではイレギュラーな確率の偏りを放置しなければ、すべてのお金は平等に短時間で摩耗していきます。そしてギャンブラー達は、その摩耗を凌駕する確率のイレギュラーを狙い、勝ち(抜け)をゴールとします。

胴元のハウスエッジ v.s. 博徒のエッジ千差万別

この構図はいろいろな場所で見られます。見られますが、しかしハウスエッジの厚みという点においては、決して360度一様ではありません。

例えば銀行などが行う融資。住宅ローンであれば通常年利1%未満、事業者向けであれば通常年利5%未満、そしてどのような場合であろうとも金利が20%を超えることがないように、法律で胴元側に上限金利の遵守が課せられています。(ちなみにこの融資に関しては、博徒側が年利20%を超えるエッジを手にした瞬間に、その博徒の勝ち、つまりゴールが確定します。)

一方でFX業者が行う相対取引。ハウスエッジは、取引手数料とレートのスプレッドです。取引手数料は無料であることが主流なので、ドル円レートのスプレッドが0.5銭、少し高めですがこれを今のハウスエッジ相場だとします。

何かおかしいと感じませんか?1ドル100円換算で、ハウスエッジがたったの0.005%。FX業者ってこんなにホワイトで良心的な企業でしたっけ?

トリックは掛け算による倍々プッシュ。この0.005%というハウスエッジにはレバレッジと取引回数という2つの掛け算が待っています。金融庁が投資家の保護を目的に検討していた規制強化版の10倍レバレッジで考えても、年に20回そのレバレッジで取引をするだけで、実質的なハウスエッジは住宅ローンの年利を超えます。

1% = 0.005% × レバレッジ10倍 × 取引20回

これがもし、レバレッジが100倍だったら、年間取引回数が100回だったら、、、取引回数については完全に個人の裁量なので、投資家の保護を目的にレバレッジの方を規制してきた金融庁の意図には納得ができると思います。

今度は逆に博徒側のエッジ。博徒側のエッジには重しがない分、そのエッジがハウスエッジを上回った場合には理論上爆発的な利を出すことができます。追い詰められる利益相反の胴元側はその脅威に対応したいはずですが、重しのせいでアレかアレくらいしか手段が残されていない状況なんだと想像します。

金融庁の重しがあるからこそ、ハウスエッジが暴利になることもなく、世の中の均衡が保たれているんだと、自分は日本という国とその国のルールに感謝しています。ハウスエッジが分厚くなると必然的に勝てなくなりますしね。

エッジとエッジのつばぜり合い、いついかなる時でも心は沸き立ち、飛び散る火花はどこから見ても美しい。自分にはそう感じられてやみません。

Let's きっちり納税。noteでの収益を励みに、皆さんへ有益な情報を届けます!