見出し画像

グロースターの仕たて屋

ピーターラビットで有名な ビアトリクス・ポターの「グロースターの仕たて屋」ご存知ですか?
ポター自身もとても気に入っていたといわれるこのおはなし。
これは、イギリス、ロンドンのグロースター(Gloucester)で、実際にあった話を、ポターがいとこに聞いて、それを基にして創作したそうです。

私もとても好きなおはなし。

~~~
昔、グロースターに大変貧しい仕立て屋がいた。
彼は、クリスマスの朝に行われる市長の婚礼の衣装の注文を受け、上着を作りはじめる。
クリスマスも近づいたある寒い日、次の日にすぐに仕事にとりかかれるように、きちんと布を裁っておいて家に帰る。
仕立て屋は、猫のシンプソンと一緒に住んでいて、シンプソンに食べ物や仕事に使う「あな糸」を買ってきてくれと頼む。
シンプソンが出かけた後、仕立て屋が疲れはて、座っていると、ティーカップの下から音がきこえてきたので、カップを持ちあげてみると、シンプソンが夕飯に食べようと思っていたねずみが出てくる。また音がして・・・
そうして彼は何匹ものねずみを逃がしてしまう。
猫のシンプソンは帰ってきて、それに気づき怒って「あな糸」をかくしてしまう。

仕立て屋はその夜から熱を出し、何日も寝込んでしまった。
しかし、その間に、ねずみたちが市長の衣装を「それまで誰も見たことのないような」すばらしい服に仕上げていたが、糸の足りない分のボタンホールがひとつだけかがられずに残っていた。
猫のシンプソンもねずみたちの働きぶりをみて反省し、隠していた「あな糸」を仕立て屋に渡す。
仕立て屋の体も快復し、めでたくクリスマスの朝の婚礼に間に合い、この時から、仕立て屋の運はひらけていった。・・
~~~

ポターが実際にヴィクトリア・アルバート美術館に行き、衣装をスケッチしたという絵が本当に美しいのです!

小さなメモに「あな糸が足りぬ」と書いてあった。
かがりめ目は細かくて細かくて、まるで小さなねずみが刺繍したように見えるのだった。

実際の話は、ねずみではなく、仕立て屋の弟子たちが内緒で縫ってくれたそうです。

今日はクリスマス・イブ、なんとなくご紹介したくなりました。
機会があったら、ぜひ手に取ってみてください。


ベアトリクス・ポター 作・絵 石井桃子訳 福音館書店

読んで下さったあなたも、仕立て屋と同じように運がひらけていきますように♡
ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?