見出し画像

それは音もなく忍び寄ってきた

久しぶりにnoteを更新しようと思った。
特に理由もトピックもないのだが闇雲に書き始めてみる。走り始めがいつだって苦しいのだから。

どのくらい久しぶりかというと伝説の90日チャレンジ以降なのでかれこれ2ヶ月以上。
さすがに放置しすぎじゃないか、そもそも件のチャレンジを終えた際、これからは投稿頻度が週1、2回に減りますとかなんとか宣言してなかったか。

とまぁ、やらなかったことを今更咎めても仕様があるまい。それより書こうと思った今の自分を褒めたいと思います。
こんな感じに自分に対して滅法甘いワイは他人に許しを得るため、つまりそれも全ては自分の為に他人にも激甘に接している。

話は変わり、最近の若者は。なんて言うと自分が年老いた気がするのでそんな書き出しにはしないが、最近出会った若者(小学生)との会話で時代が刻一刻と変容している様をまざまざと見せつけられるシーンがあったので備忘録として綴っておくことにする。

知ってる人もいるかもしれないがワイは小児歯科で歯科衛生士として働いている。
そういう背景から一般的な会社で働いている人達よりキッズと関わる機会が多い。

ある日の夕方、小学生男子がやってきた。院長は子供が好きなのか嫌いなのか分からないくらい子供の患者をすぐこっちに投げてくる。
そのお陰か、せいか、元々そんなに子供が好きでは無いワイであったがそれなりに子供の心を掴む会話術というのを習得した。

小4にしては小柄な少年は気だるげに診察室に入ってきた。とりあえずユニットと呼ばれる椅子に腰掛けてもらい、痛いとこはないか?などマニュアル通りのやり取りをして後椅子を倒す。

こちらの投げかけに素っ気なく簡素に受け答えをするその子は見た目よりずっと大人っぽく思えた。

歯の本数を数え、染め出し液の準備をする間多少の軽口を叩く時間が出来る。
ここが腕の見せどころ。子供の心をガチっと鷲掴みにする言葉のマジックでこのクールな仮面をバリバリ剥がし年相応の無邪気な顔を見せておくんなましという具合に歯とまったく関係の無い話をする。

今日学校どうだった?から始まり家に帰ったら何すんの?というプライベートなことまで大抵の子供たちはワイの質問1に対し10以上答えてくれる。
そう、ワイにはこうした成功体験があるのだ。だからこの子もすぐワイの手のひらで踊らせてみせる。

もはや歯科衛生士とは思えない方向のやる気を見せるワイを横目にクール男児は聞こえるか聞こえないかくらいに小さなため息をついた。

おぉっとお客様が退屈されているぞ。さぁいつものように軽快なトークで場を和ませるのだ。
そうワイのゴーストが囁いた。

まずはセオリー通り学校のことから。ワイの膨大なプロファイルから抜き出したトピックはクラブ活動だ。大体の小学校では小4からクラブ活動が始まる。しめしめ幸先の良いことよ。ワイはほくそ笑んだ。

「小4だとクラブ活動が始まるでしょ?何希望したの?」
まるで友達かのような距離感と声色でワイは男児に問いかけた。
しばらく考え込む様子を見せた男児は一言「教えない」と言った。

この答えはだいぶレアなケースである。しかしなかった訳では無い、こういう場合はトピックを変えるのが吉。
すぐに切り替え家庭での過ごし方にトピックを移す。
聞いてみると家ではゲームをして過ごすらしい。ぬるりと来たぜ。ワイ自体はゲームは全然やらないのだが今の小学生男子に流行っているゲームはほとんど頭の中に入っている。どこからでも来いや、という気持ちでなんのゲームか聞く。

「教えない」

え、そんな馬鹿な。
お前の好きなゲームの話をしてやってるんやぞ。こちとらゲームなんてがんばれゴエモンくらいしかやったことがないと言うのに。
これはもう一押し。「えー、教えてよー結構お姉さんゲーム詳しいよー」媚びて再度聞くが答えは変わらなかった。

「なんだい、このケチんぼ」
つい本音が漏れたその時だ。
「俺の個性はケチなこと」といやらしい笑顔で男児はそう告げた。

もうこれには参ってしまった。ケチなことを個性と言ってのける小学生、今までそんな子にはエンカウントしてこなかった。そもそもケチというのはネガティブでありマイナス要素なのだからそれを個性と言って胡座をかく、そんな子供の姿にワイは時代の切り替わりを目の当たりにしたような気がしたのだ。

国民総鬱期間を経て得た自衛策として自己肯定感やら多様性やらが囁かれる昨今、行き着く所までいった針は逆の終着点へゆるやかに、でも確実に歩を進めているのかもしれない。


ネコ美

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?