🧠【実話】サクラクレパスの腕時計

池袋駅にてサクラクレパスのポップアップストアが開催されている。

サクラクレパスとは皆さんも学生時代に1度は手にしたことがあるだろう鳥やらヨットやらのイラストが描いてある黄色いパッケージのクレヨンのことだ。

そのポップアップストアではクレヨン同様にカラフルな腕時計が綺麗に並べられていた。
ワイはそれを見るにつけ毎回笑いを堪えずにはいられないのだ。

話は変わりワイにはCという高校からの友人がいる。今は既婚者のCだが婚活中にはそれはもう天下一品のラーメンの如くドロドロに濃い男を引き寄せていた。Cの婚活話はワイの大好物で暇さえあれば面白い話はねえかぁ～と催促していたものだ。

そんなCも今や既婚者、楽しみにしていた婚活話も打ち切りとなって久しい。

平々凡々な生活に飽き飽きしていたある日Cから突然「ちょっと聞いてよぉ～」というLINEが来た。これは香ばしい匂いがプンプンするぜぇ。

聞くとCは最近まで不倫をしていたらしい。ここで不倫の善し悪しを話すつもりはない。大体Cがそんなつまらん不倫話如きでワイの時間を消耗させるような女ではないことはよく知っているのだ。不倫が本質でないことをすぐに見抜いたワイは話を促す。

不倫相手(仮)とは幽遊白書のアプリゲーム内で知り合ったという。もうこの時点でおもろい。なんやねん幽遊白書のゲームて。
ゲーム内でパーティーを組んでいた中の1人がその不倫相手(仮)だそうだ。ちなみにそいつはチームリーダーらしいのでこれ以降不倫相手(仮)をリーダーと呼ばせてもらう。

そのパーティー内にCをよく思わないジジイが1人居た。そのジジイに執拗に絡まれたCはアプリを止めようか考えていたという。その時助けてくれたのがリーダーだったのだ。

その事件を皮切りに既婚者子供ありという同じ状況であった2人はお互い家庭の相談やら愚痴やらをアプリ内のチャットで話すようになっていった。その流れでなし崩しに不倫関係に発展したという。だがここで明言しておきたいのは2人の不倫はあくまでも精神的なものであり別れるまでの期間実際に会ったりはしていなかったという点だ。ここは重要ポイントなのでお忘れなく。

話を戻そう。
恋愛から遠ざかっていたアラフォー男女が不倫に熱中するのにさほど時間はかからなかった。今の平坦且つ安定している生活に不満はないがもう一旗上げたいといった所だろう。最初のうちは背徳的な恋愛にCも熱を上げていたが、段々とリーダーとの間に温度差を感じるようになっていった。

リーダーはひどく熱い男だった。
初めて恋愛するんかってくらいのとんでもない熱量でCに迫ってきたのだ。

そのLINEの内容は猟奇的で

「CからLINEが返って来なくてもオレは全然心配してないよ！だって心は繋がってるから！俺を想ってくれてることが伝わってくるから不思議と不安にならないんだよね♡」やら

「ほんとに好きすぎて一緒にいられなくて心が苦しくなりますわ♡本気になっちゃいけないのはこういう気持ちになるからなんだろうね(泣)もう手遅れだけど♡」やら

果てはリーダーには自分のテーマソングがあるらしく「この曲は俺とCにこれから起こる困難を乗り越えるためにある曲だと思うんだ。でもね神様は乗り越えられない試練は与えないっていうからさ。2人で乗り越えていこうね」など

もはや高熱でうなされているのかと思うようなポエムである。しかもそれだけに飽き足らず、板金屋で勤めていたリーダーは職場で密かに真鍮の指輪を手作りしたりとよもや奇行の域に達してると言えた。

ちなみに最後のテーマソングのLINEに対して魔法の解けたCは「私はコイツと何を乗り越えるんだろう」と頭を抱えていた。

とまぁ、そんな感じで迫ってこられたことでCの気持ちは急速に鎮火していったわけだ。そしてそれに反比例するようにリーダーの気持ちは一斗缶でガソリンを投下する如く更なる燃え上がりを見せるのだった。

もういよいよ気持ちが悪いと思ったCはリーダーに別れを告げる。
だがリーダーからの返事は予想の斜め上いやあさっての方向からやってきた。

「いやいやCは俺のこと大好きじゃん！たぶん大好き→好きになったんじゃないかな？俺のことめちゃくちゃ好きだけど今少しクールダウンしてるただそれだけの事だよ♡」

だそうだ。
紛うことなきポジティブシンキングである。

その後も何度か説得を試みようやくマジで振られた事に気づいたリーダーは音もなくCの元から去って行った。

っでここからが本題な訳だが、ラブラブだった頃リーダーはCと同じ腕時計を身につけたいという提案をしてきた。
そこに至るまでに知り得たリーダーの情報によると職場では管理職についてるらしくそれなりにお金もあるとの事だったのでブランドの時計を貰えるとCは期待したのだが、「これなんか可愛くない？」と送られてきた写真は件のサクラクレパス腕時計税込5060円であった。

もちろんCはその提案を断った。


追伸:Cの事を目の敵にしていたアプリ内のジジイはその後なぜかCに懐いてしまい、挙句の果てに「パリピになるにはどうすれば良いか」などといういっぺん死なねえと無理な相談を持ちかけてきたらしい。


めでたしめでたし。