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5月読んだもの観たもの

チェーホフ『かもめ・ワーニャ伯父さん』
 戯曲。演劇観るので読み直し。かもめは幕間に重要なことが起きていて、観客の前で行われているのはただ会話だというのがやっぱりおもしろいなと思う。

オザケンのライブ
 スチャダラを生で観たい気持ち強かったので、スチャダラだ!!という喜びがあった。オザケンの顔は被り物で全く見えなかった。

ジブリパーク
 ジブリパーク、倉庫は割と楽しかった。三鷹の森みたいで。コスプレして写真撮るという需要がメインでそれは結構疲れた。なんとなくそういう人を観ていると自分自身がだんだんぐったりして疲れてしまうという自分の性質のせいだけど、ちょい疲れる。
 天気が良い日に行けたのは良かった。万博公園の歴史なども知ると、今の大阪万博の土地利用の仕方とか利権の絡み方とかに比べて万博たるものの理念に沿っていて偉いな、という気持ちになる。ジブリパークがここの場にあるのもわりと納得だった。
 ちなみにシベリアは我々が行った時にはもう売り切れており、わたしは牛乳のみを飲んだ。

『かもめ』
 演劇。シャウビューネのオスターマイヤーによる演出のかもめを観た。かもめは俳優の演技を見せてこそなので、客と俳優の距離は近く、という考えの下、ものすごく近い距離の客席になっていた。円形の座席で十字に通路があり、そこを俳優が行き来する。かなり人の出入りがあるので、出口が複数あるというのは、様々な出はけの表情が作れて効果的だった。
 みながら最初にすげーってなったのはマーシャが全然違うキャラクターで、戯曲を読みながらマーシャの魅力に全然気がつくことができなかった!!という部分だった。なんか野暮ったくて面白みのないキャラクターだと思っていてごめんね、と思った。
 セリフだけが固定されていても、こうも小道具や身振り手振り、演出によってセリフが違って聞こえるものだ、ということと、それ以上にストレートな演技のうまさでこんなに面白いんだというパンチがあり、み終わった後に、演出で何か面白いものを作るとかじゃないただひたすらに演技が面白いという面白さに気圧されたことの疲労が残った。みんなで喫煙所で、強すぎる……と放心しながら煙草を吸った。上演前のプレトークで、昨日の夜遅くまで稽古をしていて、演出家が何か一言言うだけで演技がものすごく良くなっていました、というのを聞きながら、演出の一言だけでそんなに良くなるってのは、すごいな……と思った。演技指導における演習の素晴らしさ、って意識したことがなかった。
 それ以外の印象的な演出やシーンは、まずマーシャとメドヴェージェンコの会話のシーン。サッカーしてるんかよ!という面白さ。メドヴェージェンコが冴えない色のビルケンを履いていて、お前はそんなんだからさ……という気持ちにまぁまぁなる。続いてそのままマーシャのシーンで行くと、マーシャとトリゴーリンが何か共犯関係的な仲の良さがあるということを、戯曲の時点ではあまりうまく飲み込んでいなかったが、この上演ではかなりよく理解できた。マーシャが、わたしこれできるのよ、と見せびらかすシーン、もっと女の人がちょっと背伸びした可愛らしさと情けらしさみたいなシーンを勝手に想像してしまっていたが、ピクルスの汁を口に含んで飛ばす、という滅茶苦茶な芸で、汚すぎるだろ!という心地と、スッゲー!っていう心地の絶妙なバランスの中にあったので、バカ面白かった。
 そのまま、トリゴーリンで面白かったことに移ると、釣り好きのブーメランパンツ、小さな魚二匹の情けなさは、最初に出てきた胡散臭スーツ(あのスカーフを首に巻くというのは滅茶苦茶に胡散臭い、南キャンの山ちゃん思い出す)と対応してトリゴーリンの人柄をはっきり示していて面白かった。メモを取るという行為がノートではなく付箋なのもかなりしっくりきた。トリゴーリンは想像より歳をとっていたけれど、トリゴーリンがニーナと恋に落ちていく過程の、席を詰める詰めないのあたり、ビールが吹き出て拭きまくりながら飲むらビールを飲むスピードが異様に早いとか、その辺りのあらゆることがかなり見応えがあって、中心のシーンだったと思う。トリゴーリンの悩みについて、の部分はものすごく大きく膨らんでいて、それがまた見応えであり面白さだった。ここがたっぷりだったので、その後のアルカージナvsトリゴーリンもかなり面白かった。めちゃくちゃ近い距離で絡みがあって、そのまま二人の体がぶつかってくるのかとドキドキした。
 二幕に戻るとかもめの死体を最初は隠す、というのも戯曲では全然考えてもみなかったことで、確かにその方がいきなりかもめの話をしないということの説明にもなる、とそれも発見としてかなり面白かった。

チェーホフ『桜の園・プロポーズ・熊』
 戯曲。短編のプロポーズと熊を読んだ。なんで熊やねん、と思うが、ロシア文化論的な授業で、ロシアにとって熊というのは特別な動物だと言っていたので、割とこういう時には熊!ってなるのかもと思った。両方とも結構面白い戯曲でよかった。

岩井克人『ヴェニスの商人の資本論』
 評論。表題作をひとまず読んだ。おもしろい評論文だけど、もう少しテキストにグッと踏み込んだ内容とか、他の情報もふんだんに入れ込んだ状態のたっぷりバージョンとかあったら嬉しいのに〜〜と思った。経済学の知識がほぼないので、飲み込めない用語がままあり、勉強の必要あり……と痛感した。

六内円栄『thisコミュニケーション』
 漫画。全巻読んだ!祝完結だ! まじで結末良かった。最後の最後までデルウハはデルウハのままだったということにいたく嬉しくなった。

シェイクスピア『ヴェニスの商人』
 戯曲。めちゃくちゃおもしろい!! あらすじは概ね知っているので、と思ってとりあえず「ヴェニスの商人の資本論」を読んだのだが、思ったよりちゃんと読んでないとわからないテキストだったので、あたり直した。恥ずかしながら今までちゃんとシェイクスピアを観たり読んだりしてきていなかったので、ハムレットとリア王とを読み始めたら、かなり話の筋ってものがないとか、割とラフな感じで荒々しいとか、そういう面白さを感じていて、『ヴェニスの商人』もまた話の展開や筋はめちゃくちゃで、でもおもしろいというのがすごかった。あと、評論とかを読んで外側の知識量を増やしていくことでまたかなり面白さが高まるな、というのがわかったのも良かった。いろんな演出の上演や映画をみるという楽しさもわかった。
 あと、これを読む少し前に松岡和子訳のシェイクスピア全集を買ったのだけれど、これがめちゃくちゃ良くて、訳註がすごく細かいのがありがたい。

『ハムレット』
 演劇。彩の国さいたま芸術劇場で観劇。演出はあんまりだったけど主演の人は割と良かった。一番面白かったのは先王ハムレットと、クローディアスが両方とも吉田鋼太郎だったため、ハムレットが母ガートルードにむかってあれこれ述べるシーンで、背後にデカデカと先王と現王の絵が飾ってあり、どちらも吉田鋼太郎の顔、というのがギャグ的に面白かった。
 墓掘り人夫のシーンは、床がラバーみたいなものに覆われていて、骨をぽいぽい投げるとバインバイン音がして、全然良くなかった。頭蓋骨もぽーいと投げられて、ばいんっと跳ねており、こんななら物を使わずマイムだけでやった方がいい……(というかそもそも花壇みたいな風になっててそこに人骨を埋めるというのも変な感じだった)という感じだった。床の音の問題は最後のシーンの花束を落とす演出でも、静寂の中で、カチッ、と音が鳴ると天井から花束がすとん、と落ちてきて、地面に当たってバンッと、またラバーの音をさせるという状況で、余韻もなにもなかった。
 あと、フォーティンブラスが全然かっこよくなくて、コントみたいになっちゃってたので、終わりぎわかなり微妙だった。あとはオフィーリアの狂気の演技とかも、これをみて悲しい気持ちにはならないというか……という感じだった。比べるのは酷打けれど過去の上演で満島ひかりがオフィーリアをやったものがあるということでそれを観てみたら、かなりよくて蜷川幸雄演出かつ、満島ひかりということで、全然違った。
 あとは全体的に衣装とか舞台装置とかもあんまりしっくりきておらず、オフィーリアのドレスは子供らしいお姫様すぎやしないか?みたいなことが気になった。
 ただ、上演でハムレットを観るのが初めてだったので、セリフを音で聞くと、言葉と嘘の話であり、演劇の話としてのハムレットに聞こえるところがたくさんあって面白かった。そう思って読み直すと面白そう。

町田康『くっすん大黒』
 小説。くっすんは人の名前かい、ってなった。良かった。

劇団スポーツ『略式ハワイ』
 演劇。やっぱり笑って楽しいの点で楽しかった。俳優のパワーがあるなと思う。自分自身があまりウェットな人間でないので、ウェットだな〜というところはちょっと気になりはする。

上野鈴本演芸場 5月19日
 寄席。春風亭一之輔を求めて寄席へ。『愛すべきバカ野郎たち』という特別興行で寝床を聴いた。良かった! 一朝も観れたし、春風亭一蔵の短命も観れた。あと、隅田川馬石の湯屋番、めちゃくちゃ笑った。隅田川馬石めちゃくちゃ好きな笑いだったので、また、観に行きたい(6月上席で三遊亭圓生の特別興行やっているらしく、めちゃくちゃ観たい。

岡室美奈子『テレビドラマは時代を映す』
 書籍。コロナの頃のテレビドラマとか思い出して、懐かしすぎる〜〜となった。最近あんまりドラマ観ていないので、最近のものはなるほど〜、と思った。

『私たちの体はテレビドラマでできている!』
 イベント。上記の本の刊行記念イベント。久々に岡室先生のトークが聞けて楽しかった。

天保水滸伝
 講談。YouTubeにあるやつ。リレーで読んでいく形式。平手造酒の登場やばすぎて、キャラクターとしてかなり面白かった。天保水滸伝ってこんなに話繋がってないの?!?!とびっくりしながら聞いたが、愛山先生めちゃ良かった。

石川雅之『もやしもん』全巻
 漫画。無料で読めますよ、の広告に誘われて読み始めたら、家人が実家から持ってきてくれたので、喜んで読んだ。かなり面白かった。まず菌たちが可愛いのと、さまざまな発酵についての話が面白いのと、夢中になって読んだ。

パレスチナのためにできること、纏められていたので貼っておきます。
https://docs.google.com/document/d/1IUVPD02DGo5GPPM6ZU2WB0FYES4eGAaXZio07hq07hc/mobilebasic

 なんか他にも読んだ気もするが記憶がない。今月は演劇博物館のイベントにも二回ほど行き、両方ともかなり面白かった。ひとつは「逍遙のシェイクスピア」という冬木先生による講義、もう一つは「チェルフィッチュ「映像演劇」をめぐって〜”演劇性”のアップデート」。両方ともかなり面白かった。
 逍遙と夏目漱石や森鴎外などのシェイクスピア像が異なっていた、ということや、逍遙によるヴェニスの商人の訳がかなり面白そう、というのが新たな発見だった。
 チェルフィッチュの方は、初めて岡田さんが話しているのを聞いて、すごく面白い人なんだなというのをしれたことと、映像演劇という営みが何を意図して遂行されているかということがよくわかり、前もって感じていた感覚と異なる見方をすることができた。

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