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4月読んだもの観たもの

エミール・クストリッツァ『黒猫・白猫』
 映画。かなりよかった。読書会で話題に上がって『アンダーグラウンド』が気になっていたんだけど、それより前から『黒猫・白猫』をクリップしてたので、なんとなく観てみようよ〜と観てみたらかなり面白かった。ユーモアの感覚がものすごくいい。結末もかなりいいし、ヒロイン役の女の人もよかった。

エミール・クストリッツァ『世界で一番貧しい大統領』
 映画。ウルグアイの大統領の映画。すごく色々わかって超面白かったというわけではないのだけれど、南米は共産主義へ揺れ、そこにアメリカの手が介入し独裁政権が生まれ、みたいなことがすごくある国々なので、その影を見ながら、ウルグアイではなぜ社会民主主義が成立したんだろうか、という謎の感覚を持ってみていた。クストリッツァ本人が大統領から話を聞いているシーンで、クストリッツァって『黒猫・白猫』のダダンにそっくりすぎじゃない?!ってなったのだが、調べてみたら別にクストリッツァじゃなかったのでそっくりすぎてびっくりしてしまった。
 世界大戦後の東欧と南米は意外と共通点がたくさんありそうだな、ということも思った。冷戦の影響に翻弄された国々についてもっと色々読んだり観たりしたいなと思った。

ポール・トーマス・アンダーソン『ハード・エイト』
 映画。これが一番最初の作品っていうのはほんとやばくないか?という出来の良さだった。映画が始まった時の観客たちを話に惹きつけるスピードといったらなくて、訳がわからないまま話が進んでいくのだがどうにも気になる魅力が画の中にこもっていて目が離せない。最初の車のシーンとかも結構笑ってしまって、こういう抜けてる感じがマジでいいんだよなぁと思った。とにかくショットと編集の素晴らしさは当初からめちゃくちゃ備えていたのだなぁと思った。ちょっと後半から面白さが減っていって、さすがにその脚本は無理がありますわという感じにはなるんだけれど、それを踏まえても、処女作としては素晴らしくて、家人と感嘆しながら観た。

アッバス・キアロスタミ『そして映画は続く』
 書籍。面白かった! かなり無理を通して撮影をしていて、やはりちょっと尋常じゃない気持ちで映画撮ってるんだな〜と面白かった。
 フィルムで撮っている時代の苦労もうかがえた。映画のフィルムに傷を入れちゃうということがそんなに頻発するのかよ、ってくらい起きていた。

G・ガルシア=マルケス『ガルシア=マルケス「東欧」を行く』
 書籍。タイトルの通りで、実際にマルケスが「鉄のカーテン」という言葉があった頃に東欧諸国を訪れた際のルポのような話が書いてある。かなりどれも面白かった。東ドイツについては以下の感じ。
「東ドイツの公的秩序は、政治的迫害の時代のコロンビアにそっくりなのだ。人々は警察をひどく恐れている。」
「国民は重工業の成長発展を目にすることはないし、朝食に目玉焼きがついているかどうかを気にもしない。彼らの目には分断されたドイツと、機関銃で武装したロシア兵しか映っていない。西ドイツでも人々は全く同様のものを目にしている。すなわち分断された祖国と、最新モデルの車を乗り回しているアメリカ兵である。」
 結構、国によって差があって、チェコとポーランドの違いとかも面白かったし、ロシアの国民性についてのマルケスの感想もものすごく面白かった。いよいよプラトーノフが読みたくなったのでプラトーノフを開いた。

林田球『ドロヘドロ』1〜22巻
 漫画。家人が紙で買ったのに乗じて一気に読んじまった〜おもしろ〜。なんとなく記憶の中では大ダークもドロヘドロもおんなじ、くらいの感覚だったけど、ドロヘドロの方が間口広いな、と読みながら思った。普通にずっと展開が気になる…!!みたいな面白さがあるので、その面白さでドロヘドロ読んでいた人は、大ダークにピンと来ないのかも。
 わたしは、とにかくドロヘドロはあらゆるキャラなどの見た目と絵が好きだったので、大ダークも死ま田デスの見た目とかで大喜びしていて、かつ、キャラクターの好き度も大ダークのかなり不謹慎なキャラクターが好みなので、そちらも楽しく読んでいる。しかしドロヘドロもよくよく読むととても不謹慎なのでかなり楽しく読める。

入江亜季『北北西に曇と往け』6巻
 漫画。やっぱりこの人は特定の人が抱えるどうしようもない邪悪さみたいなものに、すごく興味があるのだなと思って、この巻を読んだ。ひさびさに『乱と灰色の世界』が読みたくなる。

浅野いにお『浅野いにお短編集』
 漫画。サクッと読めた。浅野いにおにどハマりしたりくらった〜となったことがあまりないので、なんとなくいつも通りの感覚で読んだ。

『近藤聡乃短編集』
 漫画。作品の時の絵柄と、エッセイ漫画やA子さんの時の絵は少し違くて、A子さんのデビュー作がかなり近藤聡乃の普通の作品のタッチに近い感じがするな、とか思いながら読む。
 近藤聡乃の作品は女性作家特有の嫌な感じというか耽美さみたいなことを割と思い出すことが多くて、倉橋由美子とかぼんやり思い出す。

『アウステルリッツ』
 映画。強制収容所の跡地をロングショットで撮り続ける、みたいな形のドキュメンタリー映画だった。かなり面白かった。
 入り口で記念撮影する人が居たり、ツアーガイドの説明中に頭にペットボトルを乗せてふざけている人が居たり、お昼ご飯休憩で延々ハエを追い払っている人が居たり、とさまざまで、さまざまなのだが、それをただみていると引き起こされる感覚があって、その絶妙なカットのチョイスでかなり面白くみた。

『リア王』
 ナショナルシアターライブ。
 雨の日に頭を覆っていないことが殊更に強調されるのが印象的だった。あとで原文に当たろう…、と思う。
 次女の演出と、最初の導入の演出と、戦争の演出だけ微妙だった。全体の話は群像劇みたいで複雑な絡み方をしており、場の繋ぎ方とか、各話の組み方すごくて、上演でこんなにスムーズに演出ができるんだ、と感服した。
 荒野でリア王がグロスター教といて、靴を脱がせてくれと頼んだシーンを見て、こうやってみるとウラディーミルとエストラゴンみたいだ、とおもったが(ポゾーは2巡目で目が見えなくなってるし)、ベケットの念頭にはあったのだろうか。最後の決闘のシーンで背後に1本木が立っていたのだけれどそれは正にゴドーみたいな演出で、演出家に意図を聞きたくなっちゃう面白さだった。
 リアの道化の描かれ方も面白くて、早くシェイクスピアをいろいろ読んで道化を堪能したくなった。
 赤子が生まれた時に泣いているのは…のセリフにはニンマリした。
 あと宗教がキリスト教じゃなくてギリシア神話だったのも気になった

『童夢』
 漫画。一通り読んで、前よりAKIRAの凄さがわかるようになってるかもな、と思った。なんとなく、複数作品を読んでみると、そもそもこういうことにこだわって書いているのだ、とかがよく分かりそうで、そこに一本手がかかった感じがした。
 (ストレンジャーシングスみてて、あーーでも超能力とか念能力のかっこよさってこれかー!これ新しかったんか!という気持ちになった

『葬送のフリーレン』最新刊×2
 漫画。女神の石碑のエピソードを二巻跨いで読む。面白かった。

ガルシアマルケス『ガルシア=マルケス「東欧」を行く』
 ルポ。かなり面白かった。そもそも対戦後の世界の雰囲気というのは、自分が生まれた時代的に西側にしろ東側にしろわからないことがたくさんあるのだけれど、まぁひとまず西側については一通り歴史や哲学思想などを学んでわかってきたことが多くあり、東側はメインストリームに躍り出ていないがために、ぼんやりとしかわからないこともたくさんある、という状態で読んでみて、わぁ〜〜こんな感じだったのか〜と思った。社会主義に傾倒していくマルケスが書いているのも(時期的には多分だけどまだ傾倒する前のはず)よくて、南欧のジャーナリストによる東欧は、割とフェアな気がする。
 ロシアのところはかなり面白かった。ロシアの国民性(人々は大きなことしかできなくて細かいことはできない)みたいなことはあまり考えたことがなかったけれど、最近ちょっとロシア文学のこととかを考えていたこともあって、面白く読んだ。地理の先生がソ連の頃なんか、キャベツひと玉で女が買えるくらいの経済状況だったんだから、と言っていたのとかをぼんやり頭の裏側に置きながら読んだ。

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