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5月観たもの読んだもの

『地獄の黙示録』
映画。確かにスッゲェ映画だ〜〜とは思ったけど、好きかを問われるとそうでもない映画だった。
ファイナルカット版を観たのでそれもあるかも。後半がテンポも悪いしあまり機能していなかったように感じていて前半の方が面白かった。
フランス人のくだり、必要なかったかもねという話をしていたけれど、封切りの際にはなかったらしいので、やはりね、という話を家人とした。

『パンチドランク・ラブ』
映画。最高だった。リコリスピザはそんなめちゃくちゃ好きな感じじゃなかったんだけどこれはめちゃくちゃ好きだった。何もかもが過剰で最高。言葉で説明することのできない衝撃が滲む映画で、ものすごく楽しかった。
リコリスピザは少し現実味がありすぎたけど、パンチドランクラブは、現実味がなさすぎるのがいいのか(でもギリギリある感じもする)。リコリスピザの時も、めちゃくちゃこええ人の家にウォーターベッドを設置した後がめちゃ良かったのでそれに近い感覚があった。
映画館で観れてよかったな〜

『マグノリア』
バランスがすごくいい。陳腐なハートウォーミングの方向に近い位置にあったり、終盤にぎゅーんと収束していくようなやり方が可能な枠組みの中で、面白みのないやり方になってしまわないのがすごいとおもった。何より脚本が素晴らしくて、それを実現する撮影技法もめちゃくちゃいい。
各組みのストーリーの中で例えば親子について、や、愛についてや、不倫について、隠している過去について、ありえそうかそうでなさそうか、ということが連続して起きたり、するのだがその恣意性をそこまで感じずに観られるというのがこの脚本の妙で、とても素晴らしかった。
トイレ行っていい?での場面転換良かったな。場面転換のされ方気持ちがいい。映像としても話の内容としても飽きや中弛みがなく、ずっと観ていて面白い。
(順番としては、マグノリアを撮ってからのパンチドランクラブで、複数テーマを超絶技術の結晶でコントロールした長編映画のあとに、バチンッとした、まさにパンチドランクしてしまうような切れ味の九十分映画が撮られていて、その両方ができるってすげー!と思った)

ホメロス『イリアス』
叙事詩。
神々の模様がよくわかる。アレスの嫌われ具合に笑った。あとは、ゼウスが神々の加勢を禁止した後のヘレとアテナがめちゃくちゃいい。アテナがアレスのことやっつけてもいいかな〜とゼウスに聞いているあたりで、ゼウス、お前ティティスの願いを聞いたんじゃなかったんかよ〜と思っていたが、きっちり二人を抑えティティスの願いを叶えようとしていて、どちらにせよみんなとっても身勝手なので笑った。

ゼウスがこう言うと、アテナイエとヘレは何やらぶつぶつとつぶやき、身を寄せ合って坐りながら、トロイエ勢を懲らしめる策をめぐらしていた。

松平千秋訳 『イリアス』

思った以上にアキレスがいない期間が長いことで、ダナオイ勢が苦戦するので、めっちゃ激しい戦闘が続く。『オデュッセイア』では、なかなかオデュッセウスが出てこないけれど、同じ構造で主役はなかなか現れない。
あと、神々がどちらがの軍勢に与する時神が何か具体的なことをしてあげるというよりは、敵を威嚇して萎縮させ、味方を元気づける、奮い立たせるという方法がほとんどなので(アテナだと矢を逸らしてあげるとかとかもある気がするが

町田康『猫にかまけて』
エッセイ。町田康というのは現在大変な犬猫屋敷に住んでいるのだが、その猫らと、昔からどのような交流が持たれているのかわかる。ゲンゾーがふてぶてしい。

町田康『実録・外道の条件』
小説。主人公は大体面倒な目に遭い、不快感を訴えている。なんか絶妙に当人が神経質なのが面白く、また、それ以外の人々がいやーこういう人ギリギリいるんだよなという不快な人たちで、そのやるせなさをギリギリで笑ったり、ギリギリで流石に不愉快すぎると思ったりしながら読んだ。

町田康『へらへらぼっちゃん』
エッセイ。むちゃくちゃ酒飲んでいたのは知ってたけど、こんな感じだったのかという酒呑みエピソードが多くて、これか〜〜〜と読む。解説の大槻ケンヂも酒癖についてちら、と書いていたので有名だったのだとゲラゲラ笑った。
作家デビューはしているが、芥川賞受賞前というタイミングの時期で、この頃のFAXの現役加減を強く感じる。スマホおよびPCの普及前ってマジで仕事大変だったろうな〜〜みたいなこと至る所にて思う。
これを読むと割と初期の作品と、連続しているところがある、

町田康『浄土』
小説。町内会費滞納菩薩、の文言を読みたくて読んだ。どぶさらえ。
しかしそれよりも他のやつの方が気に入った。ギャオスの話とか、本音街とか、一言主とか。

町田康『パンク侍斬られて候』
小説。今月はギリシア関連のものを中心に読んでいこうと思っていたら、なんか気づくと町田康ばかり読んでいる。パンク侍までは、どちらかと言えば作家として序盤のあたりのものばかりを読んでいたので、序盤からの変化を実感しながら読む。フィールドが広くなっているのを感じる。
後半に行くにつれてぐんぐん面白くなり、読んでいる最中かなりずっと楽しい。マジで面白い。
湯浅政明の『マインドゲーム』がかなり好きなのだがそれに近いかもしれない。でも町田康のまじでいいわ〜と思うところは、気持ち的にはずっとダウナーだし起きてることも全然嬉しくないんだけどそれで全然よくっててかそれがめっちゃおもれえということじゃ!とおもった。
こりゃ、『告白』読むのが楽しみだな!と思ったが、しかしここで、『告白』を読むのではなく、先にひとしきりそこまでの作品を読みたいという欲目が出てきたので、一通りそれ以外を読んでいくことにしようと思う。

虹む街の果て
演劇。会場前にセットを見られる時間があって、かなりその満足度が高い。ペニノの公演で舞台ツアーあったら次は行こう…!!!と思う。

町田康『私の文学史』
講義録。全部めっちゃ面白い。
本音の言語でなかった言葉から、なるべく本音の言語によっていきたいというエネルギー、言文一致を求める感覚にもちょっと近くて面白い。今の日本語はもはや型とかないくらいにまであらゆる言葉が文字として記されるようになっているという点で、町田康が読み始めた/書き始めた地点とは違っているが、ありのままだとか、みんなSNSとかで本音が書けるというふうに見せて、全然社会性を帯びた途端に建前みたいなものは必ず出てくるので、建前はたくさんあるよな〜、と思って読む。
翻訳でマジわからない時は気合いでわかるという杉田玄白のエピソードおもろかった。鼻が気合いでわかったという話。

筒井康隆『笑うな』
短編集。短編でたくさんSFを読む時の体感のリズム感が身体に残っていて(中学生くらいの時SFに親しんでいたので)、わはは、なつかしいな、急に思い出したぞ、と思って読んだ。図書館にいるみたいな気持ちになった。表題作が最高。

町田康『夫婦茶碗』
小説。おもろかった。最後のところに向かうまでのぎゃーんとした感じ、初期の作品っぽくて楽しかった。

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