就活用の作品ポートフォリオの作り方
仕事で面接をしたり、学生の作品ポートフォリオのレビューをする機会が、最近は多くなってきました。ところが生徒のポートフォリオを見ていると、見せ方で損をしている人が多い印象。能力はすごいのに、伝え方がもったいないイメージです。
毎回、同じことを指摘するのも大変なので、ポートフォリオの作り方を備忘録としてまとめてみました。今期の就活生さんの参考になればと。
目的を決めよう
まず、これから作るポートフォリオの目的を決めます。大事なポイントは3つです。「誰」に向けて「何」を伝え、「どう」行動してもらうためのものかです。この3つのポイントを明確にしましょう。
たとえば就職活動のポートフォリオの目的は、「採用企業があなたのスキルと適性を理解すること」となります。
GOOD
・採用企業があなたのスキルと適性を理解するツール
BAD
・自分が見せたいものを並べた
・今まで作ったものを並べた
企業が知りたいことを理解しよう
あらゆるデザインはリサーチから始まります。まずは先生や先輩、OB訪問などに話を聞いてみましょう。インタビューを通じて、企業が採用時にチェックするポイントを理解します。ポイントは採用者や会社によって異なるので、可能であれば複数人からにインタビューし、「普遍化された求められるポートフォリオ」を見つけましょう。
ポイントの例
・造形力はどれくらいか?
・色彩感覚はあるか?
・観察力はあるか?
・リサーチ能力は?
・論理的に分析ができるか?
・物事の本質をつけるか?
・ツールや手わざのスキルはあるか?
・即実戦投入できるか?
・根性はあるか?
・マメか
見せるポイントの優先順位を決めよう
行きたい会社にとって、優先順位の高いスキルや能力を調べましょう。基本的には、実戦投入しやすい能力は高い評価を受けます。それ以外の観察力や分析力など、サブセットとなる能力は、会社の方針によって優先順位が異なってきます。自分なりに重要度のランキングを作りましょう。
すべてをアピールすると、メリハリがなくってしまいます。とくに力を入れてアピールしたい項目と、軽く流す項目とに分けるのがポイントです。
Photoshopのスキルなどは、「ある」とわからせるだけで十分なことも。一方で「リサーチ能力」や「分析能力」などは、丁寧に説明をする必要があります。
各ポイントが見せられる作品を選択 / 作成しよう
それぞれの訴求ポイントを見せるために、目的ベースで作品のラインナップを決めます。
目的別に有効な作品
・基礎的な総合力を見せるための鉛筆デッサン
・色彩やバランス感覚を見せるためのポスター
・タイポグラフィの精度を見せるための組版
・リサーチ力を見せるためのインタビュー、産学協同プロジェクト
・自主性を見せるための、課題外のプロジェクト
・Photoshop / Sketch力を見せるための、有名サイトの模写
といった感じです。分量で勝負するわけではないので、目的に沿わない作品は、基本的に外します。
目的のポイントを見せる作品が足りなければ、新作を作ります。
作品から「何を」を見せたいのか明確にする
各作品を通じて「アピールしたいコト」が意図通りに確実に伝わるように、レイアウトや写真、キャプションを設計します。
単に最終作品を載せることは、有効ではありません。その手法で見せられるのは、ディテール力の精度だけです。見せたいポイント次第では、最終成果物よりもプロセスやバリエーションを多く扱うことが大事な場合もあります。
基本的には、「アウトプット」だけでなく、「なぜそのようなアウトプットに至ったか」、「そこに到るまでに、どのようなスタディや研究をしたか」などを含むと高評価です。
ページを1枚追加するごとに、そのページで何をどう伝えようとしているかを、常にチェックしましょう。
ベータテストで確認しよう
作ったポートフォリオをいきなり実戦投入してはいけません。友人や先生に見せて、フィードバックをもらい、少しづつバージョンアップしていきましょう。
この時「このポートフォリオどう思う」というざっくりとした質問は発散しがちです。「このページ / 全体から、私の何がわかりますか」という質問を多くしましょう。
・各ページから自分の何が伝わるか?
・全ページを見終わった後に、私がどういう人間だと思われそうか?
・雇用主が知りたがる内容は全て含まれているか?
メッセージパートが問題なければ、
・長すぎないか?
・ざっと見で伝わるか、詳細に読む必要があるか?
など、「流し見て伝わる」部分と「じっくり説明が必要な部分」を精査しましょう。説明が必要な部分は追加資料とともに、実際の面接でアピールしていくことになります。
サブ資料も用意しよう
ポートフォリオが散漫になりそうなディテールの情報は、サブ資料として分けて持参しましょう。
・スケッチブックの束
・iPadのアルバム / 動画フォルダ
これらは、最初から展開するのではなく、質疑応答に応じて取り出せるようにしておきます。ポートフォリオ本体はシンプルにとどめ、細かい質問が出てきたときはサブ資料の出番です。
これらは、頑張る力や、普段からの分量、デザインに対する態度などを可視化するツールとして非常に有効です。
まとめ
ポートフォリオの作り方をまとめてみました。こんな感じで設計すると、就職活動の打率がグッと高くなるのではないかと思います。
一番大事なことは、ポートフォリオは目的のためのツールであると意識することです。全てのページは「誰か」に対して「何か」のメッセージを発するためのもの、そして「何かしらのアクション」を起こしてもらうものであることを、忘れないようにしましょう。
そんなわけで、みなさん就職活動、潰れない程度に頑張ってください。
まったりと応援しています。