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借金の本質とはタイムマシンである

ほとんどの人は「借金怖い!絶対しない!」と考えています。ところが、どうもお金持ちや経営者の多くは「借金!最高!ガンガン借りたい!」と思うようです。

どうも経営者の人々は、借金にたいする感覚が違うみたいなんですね。スタートアップをお手伝いしていると、メンバー間でこの感覚のズレが問題になるケースがあります。

そんなわけで、借金とは何で、どういう効果があるのか。わかりやすく説明しておきたいなと。


借金はタイムマシン

現象としての借金は、「返済をともなう金銭の移動」です。実は、借金の本当のポイントは「未来に持っているはずのお金を、現在に投入できること」です。

つまり借金とは、タイムマシン。

手元にないお金を、未来の自分から受け取り、今使えるようにするツール。

この視点で考えた場合、借金をつかいこなすポイントは、「この瞬間にお金をつかうことが、あなたの人生にとても重要な意味をもつか?」になります。

よい借金
・これから長期で価値を産むものを今買う。
・この瞬間のゲームオーバーを回避する

悪い借金

・未来のお金を、いま浪費しちゃう
・未来のお金を、いま使う必要のないことに投入する


よい借金1:  スキルを序盤で買う

では実際に、「よい借金」の具体例を見てみましょう。一番わかりやすい「よい借金」の例は、教育やスキル習得のための借金です。

たとえば英語のような能力。英語を80歳で取得しても、10年ほどしか役立ちません。その用途もほとんど趣味でしょう。一方で英語を20歳でマスターしていたらどうでしょう。おそらく60年近く、人生の選択肢や収入に大きな影響をもたらします。

このように、「序盤で獲得することで、その後の長きにわたって影響を及ぼす資産」は、借金をして入手する合理性を持ちます。


よい借金2: 強い武器防具を序盤で買う

同様に、人生で必要な耐用起源の長い機材の購入も、よい借金の使い道です。

たとえばフードトラック。レンタルしながら10年貯金をしてフードトラックを買うよりも、さきにフードトラックを手に入れてから、10年返済を行うほうがよいでしょう。

正直に貯金をして買うと、大幅な時間のロスが生まれます。貯金がたまるまで事業が始められなかったり、レンタルで代替物を借りるコストがかさみます。その遅延は、そのまま利益の減少を意味します。


よい借金3: お金を産む機械を序盤で買う

もしもこの世に自動でお金を産んでくれる機械があったら… それを30歳で取得するか、70歳で取得するか。これは、人生に大きな影響を産みそうな差です。

こういった例は、賃貸用マンションなどの不動産が該当します。本来なら「35年貯金してからマンションを買う」であったものが、借金によって「マンションを買ってから35年払う」に変化します。

マンションの取得と家賃が、35年手前で取得できるようになります。モノの利用期間や価値を、前倒しで入手できるわけです。この効果は、複利で富をうる仕組では、さらに圧倒的な価値を出します。


よい借金4: 「この瞬間のチャンス / リスク回避」を買う

特定の瞬間に激増したコストをやりすごすための借金も、よい借金です。今週シリコンバレーにいることに意味があるなど、この瞬間にしか買えないチャンスを買うムーブです。

防御的には、「今週500万持ってないと、会社が不渡りしちゃう」などの使い道も、同じです。人生の転換点に瞬間的にお金が必要ならば、それは借金をしてもOKシナリオです。


一方で、借金をするまえに注意しなければならないシナリオは、

・特に価値のあるスキルでなかった
・特に賞味期限が長くなかった
・特にお金を産まないものだった
・特に人生の転機でもなかった

となります。この判断を間違って、借金をすると人生に結構大きいダメージを負います。


サービス設計やスタートアップで応用する場合

スタートアップの施策やグロースでも、同様のことが考えられます。利用が確定しており、固定費が少なめ・基盤よりの機能、機材は借金をしてでも序盤で入手することで、コストパフォーマンスを最大化できます。アプリでいうならPUSH通知や、効果測定、継続率アップの仕組みなどは、最初から持っておくべきでしょう。

あるいは、ネットワーク効果が発生するビジネス。ペイメントのようなビジネスでは「今この瞬間に覇権をとること」が最重要であり、勝利を前提とするならば無限の借金が正当化されます。

具体的にはペイメント争奪戦争のようなゲームでは、選択できるプレイングは3種類しかありません。

・無限に借金をして、圧倒的シェアNo1を速攻でとる
・No 2以下でニッチポジションをとる
・そのペイメントには手をださない

先行者の絶対優位な市場では、段階的にリソースを投入する。予算に一定上限を儲けるというアプローチは基本的に下策です。段階投入や上限のあるアプローチでは、損害が最大化したタイミングの撤退することが、ほぼ確定しているためです。

このような市場では、結局のところ全資金投入以外の選択肢が、ほぼ存在しません。結果、ハイリスク・ハイリターンになりがちです。


まとめ

世間一般には借金は悪と思われがちですが、一定の条件がそろえば借金はむしろ推奨されるもの、強力な武器になります。

そして借金のポイントは、「未来の価値やチャンス、行動権を現在に前倒しできること」、時間の前借りです。

未来に手に入るはずの便益を今獲得すること。それにより、本来ふつうに獲得するまでの期間の差分で、お金を稼げること。これがツールとして借金の強みです。

サービス開発で、経営層が急いているとき、社員がのんびりしすぎている時など、時間の観点から状況を俯瞰してみるとよいかもしれません。お金や工数よりも、「時間」のほうが重要なポイントなのかもしれません。

なお借金のご利用は計画的に!

・借金は、未来のお金と武器を今に持ってこれること
・時間差をつかって、利益を生み出せるところに使う
・瞬間的なリスクの回避などに使うのもあり
・単なる消費に使うのは非推奨

いただいたサポートは、コロナでオフィスいけてないので、コロナあけにnoteチームにピザおごったり、サービス設計の参考書籍代にします。