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Adobe Summit 2018の新技術まとめ

招待枠でAdobe Summitに参加してきました。基本的には中立だが、そのあたりを差しい引いてお読みください

ラスベガスからこんにちは。Adobeのマーケティングイベント、Adobe Summit2018に参加してきました。

イベントの2日目には、恒例で新技術をチラ見せするスニークプレビューというセッションがある。ここで発表されるのは完成度60%ぐらいの実験技術。

このためスニークピークは、未来を占うヒントになる。

そんなわけで、今年のサミットで発表されたエモキモい最新テクノロジーを、ざっくりご紹介。Adobe Senseiによるクリエイティブとマーケティングの融合は、ちょっと異様なレベルまで達している。

目次
・コンテンツの最適化を行うContent Insight
・最適のカスタマージャーニーを提案するPerfect Path
・広告ボットを摘発するCatching Bot Fraud
・動画の打率予測や最適化プランを作るVideo Ad AI
・一瞬でAnalyticsのタグ設定を行うLaunch It
・広告キャンペーンの最適プランを提案するMaster Plan


コンテンツの最適化を行うContent Insight

Content Insightは、サイト内のコンテンツを横断的に分析し、もっともパフォーマンスを出す要素を特定するもの。


この図だけだと、たんなるアナリティクスに見えるが…


Adobe Senseiによるコンテンツ分析。「このサイトでは、ビデオとトピックとテンプレートの品質が、KPIに大きく影響する」という分析をしてくれた。逆に画像や本文は、このサイトではKPIに影響を与えないらしい。


さらに、「このビデオは長すぎるので、短くするとコンバージョンが上昇する」とか。


「この動画を、手動再生から自動再生にするとコンバージョンがあがる」とか


「ナレーションを男性にするか女性にするか、あるいはナレーション無しの場合での想定コンバージョンの違い」…といったことまで提案してくる。


もはや、コンテンツに対する赤ペン先生といってもいいかもしれない。ユーザーはContent Insightの指示に従うだけで、あるていどの確度をもってコンテンツのパフォーマンスをチューニングできる。


最適のカスタマージャーニーを提案するPerfect Path

Perfect Pathは、ユーザー属性ごとに、もっとも効果の高いカスタマージャーニーを生成してピンポイントにぶつける仕組み。

例えばティーン女子のユーザーAには、ポップアップのあとにチュートリアルを出し、そのあとにクーポンをあげて、リマインダーをぶつける。高齢者のBには、速やかに登録を促したうえで、サポートから電話をかける…といった具体だ。

ユーザー履歴からセグメント分けを行い、それぞれに適したキャンペーンシナリオを提案・適用してくれる。


さらにAdobe Senseiが適用され、予想されるユーザージャーニーのパターンが、想定エンゲージメントや想定コンバージョンとともに提案される。


ユーザーの属性の分岐は、このようなツリー構造(エクスペリエンス・グラフ)で管理され、


もし、このユーザーの「都会在住」という属性を、他の「地方在住」に変えたらどうなるか…といった、ifをシミュレートすることもできる。


WEB or アプリといった、体験の分岐も一元管理が可能。

このようにマルチプラットフォーム、マルチ属性のキャンペーンを一元管理して、イベント発射できるようになる。


広告ボットを摘発するCatching Bot Fraud

ボットによる広告のフェイクのクリックは、昨年だけで6.5億ドルもの被害を生み出してる。Catching Bot Fraudは、いままでに蓄積された「信頼できるユーザー」のデータセットを用いることで、高い精度でボット判定を行うプロジェクト。これにより広告ボットによる被害の撲滅が期待できる。


動画の打率予測や最適化プランを作るVideo Ad AI

Video Ad AIは動画広告を分析し、パフォーマンスを最大化するプロジェクト。


まずAdobe Senseiが動画広告を分析し、内容をタグづけしてくれる。


次に過去の動画広告事例のデータから、この動画がどれくらい見られるか」や「FacebobokとInstagramどっちに向くか」などの確率を、事前予測してくれる。

さらにその広告に対して、「もっと短くしたほうが見られるよ」とか、「こういう展開がいいんじゃない?」など、パフォーマンスをあげる提案も。

また動画のなかから、サムネールとして最適な部分を抽出したり、見所を切り出したアニメgifなども自動生成

さらには、動画の一部だけを抽出して、まとめ動画なども生成してくれる。


最終的に、プレミアの仮編集ファイルが出力されて、そのまま調整できる模様。このデータ解析から製作工程までのワンストップ具合が、Adobeの最大の武器だろう。


一瞬でAnalyticsのタグ設定を行うLaunch It

サイト全体のトラッキングタグを設計して、ページに埋め込む作業は非常に大変。この設計精度しだいで分析結果は大きく変わるし、時間もコストもメチャクチャかかる。

Launch Itは、トラッキングタグの設計や埋め込みを、自動化して一瞬で終わらせるプロジェクト。


サイトURLを入力するだけで、Adobe Senseiがサイトの構造を分析。各ページに意味解析を行う。


サイト内の全てのエレメントを分析し、簡単な質問に答えるだけで「ここはカートページ」とか「ここは決済ボタン」などを判断し、サイト全体のトラッキングタグのルールを一瞬で自動生成する!


さらにはAdobe Analyticsのデータと連携して、「カートの下に、リコメンデーションを表示」なども、一瞬で行える。サイトとコンテンツの構造をSenseiが理解しているので、どこに何を追加するのもワンタッチなのだ。

アナリティクス導入が数分で終わる…というのは、「短期的なコンサルフィーに価値をおかず、より根源的なアナリティクス導入の推進が優先」という大局的な意志を感じる。

全体的に、AdobeのAI戦略は「やんなきゃならない大事な作業だけど、しんどいしクリエイティブじゃないよね」というものを自動化するベクトルがある。



広告キャンペーンの最適プランを提案するMaster Plan

Master Planは、顧客の初動体験からロイヤル化まで、あらゆるキャンペーンの叩き台を、自動提案してくれるプロジェクト。

キャンペーンに対する要件をテキストで書き、目的や商品などを指定するだけで、人工知能が解析をし、様々なアシストをしてくれる。


例えばユーザーカテゴリの追加提案、使うべき写真の候補(あるいはそのバリエーション)であったり…


さらに求めるKPIを指定するだけで、過去のキャンペーン事例をベースに、「どのようなチャンネルでどれくらいのキャンペーンを行うべきか」すら提案してくれる。


というわけで、Adobe脅威のテクノロジー。AI活用を実務的な提案にもっていく点にかけては、Adobeは一日の長があるように思える。

今回発表されたテクノロジーがどこまで実現可能か…というのは、まだまだ断定はできない。だがAdobeによれば進捗度はやく60%程度だという。いつもの発表パターンであれば、数年後には搭載されていると思われる。

ざっくり最新技術の紹介はここまで。後半記事では、Adobeの戦略パートについて考えていければなぁと思う。

いただいたサポートは、コロナでオフィスいけてないので、コロナあけにnoteチームにピザおごったり、サービス設計の参考書籍代にします。