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航空留学の準備と飛行訓練前の注意点

場所と季節選び

以前投稿した内容で、フライトスクールの選び方によって今後のキャリアがそこまで左右されるかどうかという点について話しました。結論としては、フライトスクールというよりも、大事なのはインストラクターと機材とそのメンテナンスの体制という事を書いたと思います。フライトスクールと言っても、飛行機の運航管理の会社だと思ってください。訓練の管理については、会社で方針を決めている会社もありますが、最終的には、インストラクターの質と教え方、性格の相性と言った事も前回説明したと思います。

今回は、フライトスクールの場所によって、訓練し易い気候の時期が異なってくる事に注目してみましょう。短期滞在で免許取得を考えられている方、もしくは数回に分けて留学を考えられている方、参考にして頂きたいと思います。私の場合、訓練を受けたのはアメリカでしたので、アメリカ国内のいくつかの場所と、季節による天候のパターンの例を挙げてみたいと思います。また、計器飛行証明を目標に訓練計画を立てられる方も、有視界飛行での訓練が適切な項目があります。また、軽飛行機には着氷防止装置が付いている機材はあまり無い(もしくは、訓練費用が高い)と思いますので、天候の良い訓練場所に越した事は無いと思います。

カリフォルニア州
全体的に言えば、冬の雨季(最近は、雨季が来ない年が続いていましたが、今年は雨季が来ました)と、真夏の午後はオススメできません。海岸沿いに都市、また訓練施設が多いこの州では、朝に発生し、午後には消える、霧に配慮する事になると思います。

ネバダ州
夏は一日中暑く、季節の変わり目は風が強い…冬も乾燥した天候の為、視界は良く、雲も無い晴天だが、風が強い…何時訓練できるんだ?

アリゾナ州
一年を通して天気が良いアリゾナ州ですが、全体的に言えば、真夏はオススメできません。夏以外の天気が訓練に最高だと思います。訓練施設が多くある都市、Phoenix周辺は、ほぼ平野で、山岳地帯は都市の北側から東側にかけて位置する為、離着陸の練習をする空港への山から吹きつける風の影響が、他の場所に比べて少ないと感じます。冬から春にかけての訓練が最適だと思います。

テキサス州
冬の雨季、また季節の変わり目(竜巻発生)がオススメできません。夏は、午後の雷雨を避けての訓練ですので、朝の天気が最適なのではないでしょうか。冬の天気は、雨季を避けれれば最高だと思います。

フロリダ州
難点は夏の雷雨と雨季の2点、また、冬季の霧が問題になると考えます。全体的に言えば、夏はオススメできません。天気が良い日が続く、秋(雨季が終わる11月頃〜)と真冬の2月〜春の4月初旬がオススメです。

コロラド州
全体的に言えば、季節の変わり目(山から吹きつける風によって起きるウィンドシア)と真冬(外気温、風、また大量の雪の除雪作業)はオススメできません。毎年、春一番の後から秋一番の前にかけて、また秋一番が過ぎた早期の冬が最適です。もし、冬に訓練をされるのであれば、飛行機に積った雪の除雪が効率良くできるハンガー施設が整ったフライトスクールが望ましいですね。夏は午後の雷雨を避ける形での訓練となりますが、夏の朝の天気は最高です。

いくつかの州の全体的な天候の例を挙げてみましたが、他の州にも沢山質の良い訓練施設はあります。

住居の確保

インターネットで調べた結果、通いたいフライトスクールはリストにできた・選べたが、フライトスクールを通して住居のアレンジをしてもらえない。住居が思うように確保できない為に、通いたいフライトスクールに行き辛い。というような問題は、都心に近い町から離れれば離れる程有りがちな問題ではないでしょうか。また、この問題を避ける為に、住居の選択や契約まで、フライトスクールに任せる事ができる選択肢を選んでしまう方もいらっしゃるかと思います。

アメリカの場合、日本から通いやすい場所にある、サンフランシスコ、ロサンゼルスなどの都心から離れるにつれ、物価が安くなりますので、設定された飛行機のレンタル料金も低く設定されてあるのも事実です。料金だけを見れば、一番お得なフライトトレーニングは、大都市やカリフォルニアなどの州税や物価が高い場所から離れた場所にあるフライトスクールなのだと感じます。

住居の契約状況に振り回されて、自分が通いたいフライトスクールを選べないという問題は、よく耳にする物です。1年程前に聞いた話ですが、住居込みのトレーニングを前払い後、フライトスクールに着いたら、一軒家に十数人の他の訓練生と共に押し込まれ、快適な環境とは言えない住み方を強要された上、全部込みの料金でフライトスクールを信用しきって前払いしていた為、お金が戻って来ない、というようなシナリオがありました。

家主さんと、フライトスクールの持ち主が同じ人で、conflict of interestが生じる事もあり、フライトスクールに住居のアレンジを頼んだからと言い、必ずしも安心できるとは限りません。ただ一つ理解して頂きたいのは、アメリカは全体的に住居費用、医療費、弁護士費用の3つが高額な為、自分が払った金額が相場に合っているかという事を総体的に見る事が大事です。例としては、カリフォルニア州のシリコンバレーにある町で月に10万円払っても、庭のテントにしか住めないでしょう。一方、少し内陸のラスベガスでは、築5年程のまだ新し目の1ベッドルームアパート(日本の2LDK程のサイズ)が同じ値段で借りれます。一生懸命働いて稼いだ数百万円を使って留学される事は承知の上ですので、滞在中は自分が思ったような住み方で、快適に勉強出来る環境を選ぶべきです。払った分だけ来る事を納得されて下さい。

1ヶ月未満の短期留学を繰り返しされる方は、フライトスクールに近い・通い易いホテル(とは言っても、空港の近所の住居地はあまり良くない場所が多いですのでご注意を)に長期滞在のレート(extended stay rate, weekly rate, monthly rate)がある場所を探すと良いでしょう。

1ヶ月以上滞在の方は、www.airbnb.comなどから、家具付きの部屋に泊まれる場所を探す事ができますが、こちらは当たりハズレがあります。自分の気に入った場所を見つけた後に、長期滞在の契約をインターネット上ですると良いでしょう。1ヶ月以上の滞在ですと、契約書にサインというようなやり方になってしまうと思います。数ヶ月の場合ですと、アパートの契約も可能ですが、一年未満の契約ですと、殆どのアパートは料金割増の上、家具が付いていないケースが殆どです。

1年以上の滞在をされる方は、アパートの契約がお得ですが、家具付きのアパートは少ない為、家具のレンタルをアレンジする事になるでしょう。また、アパートの契約書をサインする前に、クレジットヒストリーをチェックされますが、アメリカにクレジットヒストリーが有る方を除き、自分で契約できる場所が限られて来るという事もあるだろうと思います。多くのアパートは、不動産管理会社が経営の為、会社のポリシーに当てはまらない人が借りる事は難しくなっています。多くは賃貸保険と保証金(問題無ければ、後で帰ってきます)もしくは、問題が有った場合に保証金の支払いを保証してくれる保険に加入しなければなりません。

アメリカでクレジットヒストリーを確立させるのには、社会保障番号と、クレジットカードやローンの返済歴が必要ですので、ある程度の時間がかかります。航空留学で長期滞在の場合、1番無難なのは、ホームステイが出来るホストファミリーを探す、もしくは自分の知り合いの人の家に滞在出来るようなアレンジをする。このような場合、周囲の事を良く理解した人と住む環境ですので、何かフライトスクールと問題が有れば、相談に乗ってくれる為、問題が起きた時の交渉がスムーズでしょう。

www.hotpads.com、もしくは www.padmapper.comなどに出ている、個人で所有しているコンドミニアムの賃貸契約をする場合、家主さんと直接会って契約をする事になります。不動産管理会社がマネージしているアパートとは違い、契約の最初の月と最後の月の家賃を(もしくは更に+の金額を)保証金として預けないといけないケースが有り、自分で交渉できない場合は、保証金が帰って来ない場合がある事もご理解下さい。

旅行保険と航空機操縦特約

短期の航空留学を計画されている方に、考えて頂きたいのが、海外旅行・留学保険です。特に、航空機免許取得が目的で渡航される方の場合、日本で一般的に購入できる海外旅行・留学保険ですと、特別危険担保特約の一部、航空機操縦特約を付けてもらう方もいらっしゃるでしょう。現在はこの特約保険製品を取り扱っている保険が大変高額な上、海外へ向け出発後に保険に入りたい場合、保険に入る事が不可能という場合があります。

日本の保険会社の保険内容と価格もご自分で調べられて比較して頂いた上、参考にして頂きたいおススメの海外旅行保険会社があります。世界中に保険契約書の支店があり、多くの医療施設と現地の保険契約内容で直接交渉をしてくれますので、加入すると、現地の医療施設へ行っても、直接取り扱ってもらえる保険書類が貰えます。もちろん私も個人的に利用する事が何度かありました。世界最大の旅行ガイド社、Lonely Planetも推薦する、World Nomads (https://www.worldnomads.com/row/travel-insurance)という保険会社です。日本出国後でも加入できる。また、航空機操縦やスカイダイビングも、Explorer Planに特約無しに保険内容に含まれているという保険契約です。

通常、日本で購入できる旅行保険内容と違う点としては、死亡保険金が殆ど無い(200万円程まで)という事ですが、その他、病院(歯科保健は別に加入が可能)、旅行先でのトラブル、航空便の遅延や荷物のダメージ、また盗難はカバーされています。64歳が加入できる最高年齢です。

65歳以上の方や、別の保険会社のオプションとしては、以下のような、アメリカ合衆国を旅行目的地とする保険があります。こちらは歯科保健も含まれた保険ですが、航空機操縦には、特別危険担保特約 (Optional Riders) を追加する必要があります。https://www.globalunderwriters.com/products/diplomat-america/ 上記のWorld Nomadsよりも、少し値段も高めですが、含まれる保険内容が違う点にお気付きかと思います。

日本で加入できる海外旅行/留学保険の値段と似たような価格+航空機操縦の特約料金を考えると、上記のような海外保険会社の旅行保険会社を購入するのも良いかと思います。上記の保険は、旅行中の健康と損害賠償保険(損害については、飛行機や車を除く)ですので、上記の保険プラス現地で飛行機のレンタル保険(飛行機の損害賠償保険)に加入をする事で、飛行機の免許を取得する際の海外生活において、すき間無く、保証されるかと思います。参考までに…

飛行訓練の前に・航空機レンタル保険

渡米後、レンタル飛行機で訓練をされる方、レンタル先のフライトスクール・クラブの保険や、飛行機自体の保険内容で、事件・事故の際、レンタル者であるパイロットのミスが保険で保証されると思われている方、以下の内容を理解されてから、Aircraft Renter's Insuranceへの加入をお考えになると良いと思います。

飛行機を借りる側にとって、飛行機持ち主が誰かなんて、借りれれば関係無い、と思いがちですが、実は、フライトスクール・クラブでレンタルできる飛行機は、フライトスクール・クラブが他人・他社から長期リースした飛行機が殆どです。飛行機のオーナーは、自分で飛行する時間 (年間100時間程でしょう) だけでは、飛行機の年間予算である1時間毎のコストが高くなる為、飛行機レンタルを宣伝してくれる他社に貸して、時間毎のコストを減らす為にフライトスクール・クラブへのリースを考える訳です。レンタル者は、この時間毎のコスト+利益を買い取っているという事になります。この際、飛行機の持ち主は、飛行機を登録している会社・個人を保険に加入して守る事を最優先に考える訳です。飛行機によっては、フライトスクール・クラブのフリート保険に入る場合があり (フリート保険での費用節約の為)、この場合、飛行機のレンタルを代表する会社(フライトスクール・クラブ)が第一被保険者となる訳です。上記の場合、第二被保険者が飛行機の持ち主となる会社・個人。レンタルをするパイロットは、場合によっては、第三被保険者になる訳(第三の被保険者が無い保険も有り)で、パイロットが被保険者に含まれているとしても、条件付きである場合もあり、飛行機のレンタルをする個人に全て責任が降りかかるという事です、この際、第三被保険者に関するwaiver of subrogationという保険内容が無い場合、ミスをしたレンタル者パイロットが、保険会社から請求され、訴えられる可能性有りです。上記にも書きました通り、保険会社の役割は、保険料金を払っているお客様を守るのが仕事です。直接保険料金の支払いが無い、第三被保険者を守る事は、飛行機を貸す側にとって利益も得も何も無い訳です。もちろん、フライトスクール・クラブのカウンターで飛行機レンタル前に、保険内容を詳しく調べる人は少ない上、フライトスクール・クラブの保険内容に同意しない場合は、レンタルができません。

以上のような理由から、飛行機のレンタルをする場合、Aircraft Renter's Insurance (正式名はNon-Owned Aircraft Insurance) に加入する事をお勧めします。身近な物としては、米AOPAと組みAircraft Renter's Insruanceを提供しているAssuredPartners社 (https://www.ap-aerospace.com/aircraft-renters-insurance) から、月々$81から加入が可能です。他には、保険ブローカーであるSouthwest Aviation Insurance Group社 (http://southwestaviation.com/)が、多数の保険会社からの見積もりを出してくれます。第一被保険者は、加入する本人ですので、他人の保険が何を決めようとも、自分の保険が自分を守ってくれるという訳です。

飛行訓練の前に・野外飛行先FBOでの賠償責任免除特約

フライトトレーニングの一環として、野外飛行をする方がいらっしゃると思います。野外飛行の目的地では、飛行機を貸してくれたフライトスクールが契約した駐機場や格納庫ではなく、到着地にあるFix Based Operator(FBOと呼ぶ)に駐機し、飛行機の駐機をお願いする事になります。飛行機を駐機後、タイヤ止め、カバーをかけ、タイダウン、ドアをロックした後、フロントデスクで飛行機を登録しますが、その際、サインをお願いされる事があるのをお気づきでしょうか。これは、実はFBOとの契約の一部なのです。殆どの方が、内容を読まずに、フロントデスクの方から依頼があった後にサインしてしまいがちですが、内容を確認したい物です。

特に重要な点は、Hold Harmless Agreement(日本語で言います賠償責任免除特約)という節が存在するかどうかです。これは、例えば、万が一FBOのスタッフが飛行機を移動する事になった時、何らかの弾みで、飛行機にダメージを与えてしまった場合、格納庫にFBOスタッフが入れる際に、他の飛行機と接触してしまった場合、そういった時に、Hold Harmless Agreementをサインした状態ですと、FBOに対する責任を除去し、各自、自己責任(飛行機の保険さえも無効にしてしまう事もある)になってしまいます。飛行機を運航する会社で働くと、このような注意点は社内にe-mailで配布されますが、レンタルや、個人運航の方は、このような注意点が配布される事が無いと思いますので、保険会社と個人のトラブルが無いように(Hold Harmless Agreementをサインした場合、保険が効かない場合があります)、注意点として、こちらに記載しておきます。

因みに、こちらにサインする義務は全く有りませんが、FBO側からは、「サインされなくても、FBOサービスの利用によって、同意した事になります。」との返答がある事が殆どだと思います。しかし、レンタル飛行機には持ち主がいる訳ですから、ここで個人的に、個人責任で、持ち主に代わってサインする事は避けるべきだ、という事です。

※FAA各種、飛行機操縦士免許取得に向け、自分でできる勉強ノートは勉強室@FL510.aeroにて公開しています。また、FAA 自家用操縦士資格を始め、FAA 飛行教官免許取得や、FAA ATP取得などの米国の飛行機操縦士免許取得に関する相談・雑談などは、雑談室@FL510.aeroまで。

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