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これを読んでも、別に株の取引で利益は出せるようにはならないけれど、意味不明で無駄な株の取引は削減することが出来るようになるnote 第十四夜【利益確定について】

ある夜、某所にて、青年と老人が話している・・・


青年:
聞いて下さい。この前買ったトヨタ株で含み益が出ているんです。そろそろ利益確定をして、また下がったところで買い戻そうと思っています。

老人:
なるほど。ちなみに一つ聞きたいのだけど、なぜ下がったところで買い戻そうと思うんだい?

青年:
愚問ですね。下がったところで買い戻すのは、もう一度値上がり益を取るために決まっているじゃないですか。

老人:
なるほど。では、下がったところで買い戻すとまた値上がりするという根拠は何なんだい?

青年:
それは僕は長年トヨタ株の値動きを追ってきているので、トヨタ株の値動きに慣れているからですよ。それで言えば、おそらく直近のトヨタ株は現在の株価水準で揉み合ったあとに下落し、その後にまた上がるだろうと推測しています。

老人:
ふむ。そういうことであれば、君が今やるべきことは、トヨタ株を利益確定で売却することではなく、トヨタ株をドテンで空売りすることになるね。

青年:
どういうことですか?

老人:
どういうことも何も、君自身が「トヨタ株は現在の株価水準で揉み合ったあとに下落する」と言っているじゃない?
仮に君の推測が正しかった場合には、何もあとあと下がったところで買い戻すのをのんびりと待つよりも、今すぐ空売りすることでその下がっていく過程すら利益に出来るというワケだよ。一石二鳥とは正にこのことだね。

青年:
待って下さい。あなたの言っていることもわからなくはないですが、「トヨタ株は現在の株価水準で揉み合ったあとに下落する」というのはあくまで推測の域を出ません。もしかしたら今後もっと上がる可能性もあるため、今トヨタ株をドテンで空売りすることはリスクが大きいと思います。

老人:
では、今後トヨタ株はもっと上昇すると考えているのかい?

青年:
その可能性もあると考えています。あくまで推測ですが。

老人:
では、なぜ今トヨタ株を利益確定しようと思うんだい?

青年:
それは今後下がる可能性もあると考えているからですよ。

老人:
なるほど。ひとまずここまでの話を聞く限りでは、君は今後のトヨタ株の動向について確固たる見解を持っていないようだけど、どうだい?

青年:
それについては甘んじて受け入れましょう。しかし僕も言わせてもらいま。一体あなたは僕に対して何が言いたいのですか?

老人:
いや、私はこの件に関しては君に対して何も言いたいことは特にないよ。強いて言えばトヨタ株の今後に対する君の見解が知りたかっただけだね。
そしてわかったことは、今後上がるか下がるかについて確固たる見解を持っていないトヨタ株を、なぜか君は売却しようとしているということだけだね。

青年:
なるほど。つまり、あなたが言いたいことは「今後に対する確固たる見解がないうちは、株式を売りも買いもしない方が良い」ということですか?

老人:
いや、別にそうでもないよ。日頃の感謝の証として証券会社に手数料を払いたいのであれば、今後に対する見解があろうがなかろうが株式を売買しても全く問題ないと思うね。
しかしもしそうではない場合、つまりは株式の売買によって収益を挙げることを期するのであれば、仮に失敗しても振り返りが出来るという点で、その株を売買する前にその株の今後に対する確固たる見解を持っておいた方が良いだろうね。

青年:
そうは言うものの、もし今利益確定をせずにそのあと僕が言った通り株価が下がってしまったら、含み益がなくなってしまいます。これは問題ではないのですか?

老人:
何も問題ではないよ。なぜならば、例え今回の取引で利益を挙げることが出来ずとも、今後いくらでも利益を挙げる機会はあるからね。すなわち、君が志向すべきは今回のトヨタ株の取引で利益を挙げることではなく、今後長期に渡って何回も取引を続けていって利益を挙げていくことなんだ。
そしてそもそもなのだが、株を手仕舞いする時にいちいちそれに「利益確定」「損切り」などと名前をつけるから厄介なことになるんだよねえ。

青年:
どういうことですか?

老人:
つまりは「利益確定のためにor損切りのために株を手仕舞いしよう」と考えることにより、かえってそれが合理的な手仕舞いの判断を見誤らせることになるということだね。
具体的に言えば「利益確定のために株を手仕舞いする」という場合には「目先の利益を確保したがる」という心理的傾向により、その後大きく利益を挙げる可能性を放棄することになり、「損切りのために株を手仕舞いする」という場合には「損失を確定することを先送りにしたがる」という心理的傾向により、その後ズルズルとその株を持ち続けてしまい、手がつけられなくなるまで塩漬けにしてしまう可能性が高いんだよ。
つまり、「株を手仕舞いすること」を「利益確定・損切り」と捉えているうちは「利小損大」から逃れられる可能性は極めて低いと言わざるをえないね。
あくまで「利益確定・損切り」というのは「株を手仕舞いした結果」であり、「株を手仕舞いした結果、利益確定になっていたor損切りになっていた」というならば良いのだけれど、「利益確定のためにor損切りのために株を手仕舞いをする」というのは本末転倒なんだよ。

青年:
なるほど、つまりは投資の目的はあくまで利益を挙げることではありますが、「現状で利益が挙がっているかor現状で損失が出ているか」を基準にして手仕舞いを判断することは、心理的なバイアスが絡んでくるために、判断としては質が悪いものになるということですか?

老人:
その通りだね。利益とはあくまで正しい判断や間違っていない判断を下し続けた結果に過ぎないからね。
そして確かに今保有しているトヨタ株を手仕舞いすれば利益は挙がるのだけど、それは果たして正しい判断や間違っていない判断なのかどうかは怪しいね。
だからこそ今後もそういった判断を下し続けていった結果、君が投資で利益が挙げることができるかどうかは正直言って怪しいと思うね。

【まとめ】
・利益確定のために一旦売却してそのあとどうせ買い直すのなら、ドテンで空売りすべき。
・ドテンで空売りするのが恐いのなら、そもそも利益確定のためと言って一旦売却するのをやめるべき。
・含み益など失ってしまっても何も問題ない。重要なのは今回の取引で利益を出すことではなく、今後の継続的な取引で最終的に利益を出すこと。
・「株を手仕舞いした結果、利益確定になっていたor損切りになっていた」というならば良いが、「利益確定のためにor損切りのために株を手仕舞いをする」というのは本末転倒。
・「現状で含み益が出ているかor含み損が出ているか」を基準にして手仕舞いを判断することは、心理的なバイアスが絡んでくるために、判断としては質が悪いものになる。

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